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第1章

No.83

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薄暗いジメジメとした空気が漂う地下室。
そこに、両手が後ろで縛られた女が1人。冷たい石畳の床に倒れていた。

その女は、真琴だ。

黒いローブの男に、あの小屋からこの地下室のある屋敷に連れてこられた後、無理矢理この地下室に入れられたのだ。

『しばらく、ここで待ってろ』

そう言って、黒いローブの男は地下室を後にした。

明かり1つない地下室は、ひんやりとした空気が漂っていて真琴の身体はどんどん冷たくなる。

(寒い…)

吐き出す息は白く、身体はカタカタと震える。
口を塞いでいた布は取られたが、寒さで声が出ない。

自分は、これから一体どうなってしまうのだろう?

(アルフォンスさん…)

こんな時に、頭に浮かぶのはアルフォンスだった。

(大丈夫、絶対にアルフォンスさんは私を見つけてくれる)

何の根拠もないのに、強くそう思った。
此処が何処なのか分からないのに、確信があった。

彼なら見つけてくれると。

(私が今すべき事は、希望を捨てずに逃げ出す機会を待つ事。そして、より多くの情報を集める事よ)

しっかりしろ。
音、匂い、感触、何でもいい。全神経を尖らせて情報をかき集めろ。小さなチャンスを見逃すな。
泣くのは後だ。今、出来る全ての事に集中しろ!!

そうして、地下室に入れられてどのくらい経ったのだろう。

ーーコツコツ

小さな足音が遠くから聞こえてきた。
暫くして、足音は地下室の前で止まる。

ーーガチャ。キィィィーー……

鍵を開け、開く扉。
開いた扉の向こうには、2人の人物が立っていた。
1人は、自身を此処に連れてきた背の高い黒いローブの男。もう1人は、清楚で可憐な容姿なのに露出の高いドレスを着た真琴と同じくらいの歳の1人の女性。

「ふんっ!ちゃんと連れて来たようね!」

その女性は、まるで汚い物を見るような目で真琴を見下ろす。

「えぇ。貴女のお望みの女です」

黒いローブの男が答える。
どうやら、この女性が私を誘拐するように頼んだ黒幕らしい。

(この人、何処かで…?)

「本当に、何でこんな地味で何の魅力もない女がアルフォンス様の側にいるのよっ…!」

忌々しいと言わんばかりに、キッと睨み付けられる。

(あっ!思い出した!私とルイザさんを轢きそうになった馬車の…!)

確か、名前はマリー・ダンブレアだった筈。

「身の程知らずにも、私のアルフォンス様を誑かすなんてっ!私のアルフォンス様を誑かした罰をその身で償いなさいっ!」

(私のアルフォンス様?)

アルフォンスには、恋人も婚約者も居ない。
それに、異性の幼馴染や親戚も聞いたことが無い。
つまり、この女性が勝手にそう思っているだけだ。

(私が、アルフォンスさんの近くに居るから誘拐したのか…)

ーーそんな自分勝手の為に、ルイザを傷付けて私を誘拐したのか。

そう思った瞬間、目の前の女性に激しい怒りを抱いた。
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