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第1章

No.71

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治療が終わった後は、特に問題は無かった。

リディアさん達にも、これからは気を付けるように注意されたくらいだ。その後、ぐっすりと眠り翌日には元気良く図書館んに向かった。


***


ーー問題は、帰りに起こった。


「ねぇ、聞きまして?」
「勿論、聞きましたわ」
「まさか、あの方がねぇ」

図書館の帰り、喉が渇いた私はルイザさんと共にカフェで一休みしていた。すると、私達の後ろの方の席に座る3人の女性の会話が聞こえて来た。
3人は、見るからにいい所のご令嬢という感じの女性達だった。

「でも、それって本当ですの?」
「そうよね。また、あの方を妬む誰かの嘘ではなくて?」

2人の女性が、何かの話を疑っていると3人目の女性が興奮気味に話し出す。

「今回は、本当よ?だって、私聞きましたもの!」
「まぁ!!本当ですの?」
「詳しく教えて下さいませ!」
「えぇ!私、昨日は親族の屋敷にお邪魔していたんですがーー」

女性の話はこうだ。

昨日、サザーランド公爵邸の近くにある親族の屋敷にいた女性。夜、街に行くために馬車に乗りサザーランド公爵邸の前を通った時だった。


「いっ…………………たあぁぁぁぁぁぁーーっ!!」


サザーランド公爵邸から、年若い女性の絶叫が辺りに響き渡った。


***

「やっぱり、噂は本当なのかしら!」
「でも、それ以外あり得ませんわ!」
「そうよね!まさかーー」

「「「サザーランド公爵様が、夜な夜な女性を屋敷に招いて抱いているなんて!!」」」

(ブッ!!)

思わず、飲んでいます紅茶を吐き出す所だった。

「昨日のお相手は、きっと処女の方でしたのね」
「そうね。あんなに辺りに響く程に声を出すなんて…」
「サザーランド公爵様は、ちゃんと前戯をしなかったのかしら?」

そう言って、アレコレと話をする3人の女性達の声を聞きながら私は冷や汗をかいていた。

(昨日の夜に、叫び声……)

どうしよう………、思いっきり身に覚えがある。
というか、身に覚えしかない。

(はっ!!そうだ!ここには、ルイザさんも居る………!)

私は、バッと目の前に座るルイザさんを見る。
すると、目があったルイザさんは気まずげに視線を逸らす。

「えぇ…と。………今日は、お疲れ…ですよね?すみません、気が付かなくて」
「ち、違います!!」

慌てて否定するが、ルイザさんと目が合わない。

(どうしようっ!)

まさか、昨日の私の絶叫の所為でこんな噂が立っているとは思わなかった。

その所為で私は、ルイザさんに『昨日、辺りに響き渡る絶叫を上げながら上司に抱かれた護衛対象』と、思われてしまった。

(それで朝、庭師のお爺さんや他のメイドさん達に微笑ましいような目で見られたのか…!!)

昨日の事情を知らないメイドさん達や庭師の人に、私がアルフォンスさんに抱かれたと思われてるなんてっ…!!

その後、慌てて屋敷に戻ると私は部屋に引き篭もり恥ずかしさで悶絶したのだった。






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