67 / 243
第1章
No.66
しおりを挟む
「あれ?」
執務室に入ったハロルドは、そこに居るべき人がいない事に気付く。中には、青いローブを着た書記官の男性1人しか居なかった。
「すまない、団長は?」
「アルフォンス団長なら先程、手紙を出しに行かれました」
かけていた眼鏡を直しながら書記官は答える。
「参ったなぁ、入れ違いか」
「何か用事があるんですか?」
「まぁな。財務部に出す書類を貰おうと思ってたんだが…」
困った様に、ハロルドは自身の短い緑の髪を撫でる。
「あぁ!それでしたら、既にお渡しできますよ」
そう言って、机の上から数枚の書類をハロルドに渡す。
「助かった。これで、財務部の連中にドヤされなくてすむ」
毎回、書類の提出が遅れ財務部の者達に嫌味を言われて来た。騎士団の者は、アルフォンスやハロルドも含めて書類仕事が苦手だ。
騎士団の者を脳筋と言う物も居るが…。
(全く、その通りだと思う)
身体を動かす事に人生を捧げた様な騎士に頭を動かす細々とした書類仕事なんて酷だ。
(本当に、書記官を派遣して貰えて良かった…)
アルフォンスと2人で必死に頼み込んで、やっと彼を派遣して貰ったのだ。
「さて、俺はこの書類を出しに行くか。もし、団長が戻ったらこの書類に目を通す様に言ってくれ」
そう言って、部屋に来た時から持っていた1枚の書類を渡す。
「これは?」
「今度ある隣国との合同訓練の詳細だ。先程、詳しい内容が届いたんだ」
そう言って、ハロルドは「後はよろしく」と言って部屋を出た。
***
「アーール!!」
手紙を屋敷に届けて執務室に戻る途中。
背後から、やけに明るい声が聞こえて来た。
(見つかったか…)
出そうになる溜息をギリギリで耐え、声の方を振り返る。そこには、栗色の髪を片方だけ伸ばし三つ編みにしている背の高い男性がいた。
「………カイル」
「会いたかったぜ!」
そう言って、髪と同じ栗色の瞳をニヤッと細めるカイル。
本名、カイルディン。
隣国バルフィア帝国の騎士団長だ。
「何でここに居るんだ?」
「ちょ~とばかし、バンラート陛下に用があってね。…それより聞いたぜ?アル…お前、女を囲ってるんだって?」
(誰だ、コイツに教えたのは…)
面倒な奴に知られてしまった。
いつまでも隠せる事では無いと分かってはいたが、予想より早かった。
「………あぁ」
「おいおいっ!何で1番に俺に知らせなかったんだよ~!どっかの宿貸し切ってお祝いしたのによ!」
そうなる事が分かっていたから、教えなかったの
だ。
「………すまない。色々と忙しくってな。それより、用事は済んだのか?」
「いや?これからだ。それより先に、アルを見つけたからな!」
「っ!!さっさと行け!」
(隣国の使者がこんな所で油を売ってるなっ!)
昔から変わらないカイルを、怒ったアルフォンスは蹴り上げた。
執務室に入ったハロルドは、そこに居るべき人がいない事に気付く。中には、青いローブを着た書記官の男性1人しか居なかった。
「すまない、団長は?」
「アルフォンス団長なら先程、手紙を出しに行かれました」
かけていた眼鏡を直しながら書記官は答える。
「参ったなぁ、入れ違いか」
「何か用事があるんですか?」
「まぁな。財務部に出す書類を貰おうと思ってたんだが…」
困った様に、ハロルドは自身の短い緑の髪を撫でる。
「あぁ!それでしたら、既にお渡しできますよ」
そう言って、机の上から数枚の書類をハロルドに渡す。
「助かった。これで、財務部の連中にドヤされなくてすむ」
毎回、書類の提出が遅れ財務部の者達に嫌味を言われて来た。騎士団の者は、アルフォンスやハロルドも含めて書類仕事が苦手だ。
騎士団の者を脳筋と言う物も居るが…。
(全く、その通りだと思う)
身体を動かす事に人生を捧げた様な騎士に頭を動かす細々とした書類仕事なんて酷だ。
(本当に、書記官を派遣して貰えて良かった…)
アルフォンスと2人で必死に頼み込んで、やっと彼を派遣して貰ったのだ。
「さて、俺はこの書類を出しに行くか。もし、団長が戻ったらこの書類に目を通す様に言ってくれ」
そう言って、部屋に来た時から持っていた1枚の書類を渡す。
「これは?」
「今度ある隣国との合同訓練の詳細だ。先程、詳しい内容が届いたんだ」
そう言って、ハロルドは「後はよろしく」と言って部屋を出た。
***
「アーール!!」
手紙を屋敷に届けて執務室に戻る途中。
背後から、やけに明るい声が聞こえて来た。
(見つかったか…)
出そうになる溜息をギリギリで耐え、声の方を振り返る。そこには、栗色の髪を片方だけ伸ばし三つ編みにしている背の高い男性がいた。
「………カイル」
「会いたかったぜ!」
そう言って、髪と同じ栗色の瞳をニヤッと細めるカイル。
本名、カイルディン。
隣国バルフィア帝国の騎士団長だ。
「何でここに居るんだ?」
「ちょ~とばかし、バンラート陛下に用があってね。…それより聞いたぜ?アル…お前、女を囲ってるんだって?」
(誰だ、コイツに教えたのは…)
面倒な奴に知られてしまった。
いつまでも隠せる事では無いと分かってはいたが、予想より早かった。
「………あぁ」
「おいおいっ!何で1番に俺に知らせなかったんだよ~!どっかの宿貸し切ってお祝いしたのによ!」
そうなる事が分かっていたから、教えなかったの
だ。
「………すまない。色々と忙しくってな。それより、用事は済んだのか?」
「いや?これからだ。それより先に、アルを見つけたからな!」
「っ!!さっさと行け!」
(隣国の使者がこんな所で油を売ってるなっ!)
昔から変わらないカイルを、怒ったアルフォンスは蹴り上げた。
11
お気に入りに追加
6,597
あなたにおすすめの小説
秘密の多い令嬢は幸せになりたい
完菜
恋愛
前髪で瞳を隠して暮らす少女は、子爵家の長女でキャスティナ・クラーク・エジャートンと言う。少女の実の母は、7歳の時に亡くなり、父親が再婚すると生活が一変する。義母に存在を否定され貴族令嬢としての生活をさせてもらえない。そんなある日、ある夜会で素敵な出逢いを果たす。そこで出会った侯爵家の子息に、新しい生活を与えられる。新しい生活で出会った人々に導かれながら、努力と前向きな性格で、自分の居場所を作り上げて行く。そして、少女には秘密がある。幻の魔法と呼ばれる、癒し系魔法が使えるのだ。その魔法を使ってしまう事で、国を揺るがす事件に巻き込まれて行く。
完結が確定しています。全105話。
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
贄の令嬢はループする
みん
恋愛
エヴェリーナ=ハウンゼントには、第二王子の婚約者が居たが、その第二王子と隣国の第一王女が恋仲になり、婚約破棄されてしまう。その上、黒色の竜の贄にされてしまい、命尽きた──と思ったら、第二王子と婚約を結ぶ前の時に戻っていた。
『正しい路に────』と言う言葉と共に、贄とならないように人生をやり直そうとするが───。
「そろそろ……キレて良いかなぁ?」
ループする人生に、プチッとキレたエヴェリーナは、ループから抜け出せるのか?
❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。
❋独自の設定があります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
❋他視点のお話もあります。
❋更新時間は決めていませんが、基本は1日1話更新です。
❋なろう様にも投稿しています。
蕾令嬢は運命の相手に早く会いたくて待ち遠しくて、やや不貞腐れていました
しろねこ。
恋愛
ヴィオラは花も恥じらう16歳の乙女なのだが、外見は10歳で止まっている。
成長するきっかけは愛する人と共に、花の女神像の前に立ち、愛を誓う事。
妹のパメラはもう最愛の者を見つけて誓い合い、無事に成長して可憐な花の乙女になった。
一方ヴィオラはまだ相手の目処すら立っていない。
いや、昔告白を受け、その子と女神様の前で誓いを立てようとしたのだけれど……結果は残念な事に。
そうして少女の姿のまま大きくなり、ついたあだ名は『蕾令嬢』
このまま蕾のままの人生なのか、花が咲くのはいつの日になるのか。
早く大きくなりたいのだけど、王子様はまだですか?
ハッピーエンドとご都合主義と両想い溺愛が大好きです(n*´ω`*n)
カクヨムさんでも投稿中!
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい
鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。
家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。
そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。
いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。
そんなふうに優しくしたってダメですよ?
ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて――
……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか?
※タイトル変更しました。
旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」
極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!
ハルン
恋愛
自然豊かで大陸でも1、2を争う大国であるグラシェール王国。
その国の侯爵家、アベルシュタイン。
表向きは、歴史ある由緒正しい侯爵家。
ーーだが裏の顔は、代々王家に害を成すモノを全て消し去る『王家の番犬』。
そんなアベルシュタインに、この度娘が生まれた。アベルシュタイン家代々に伝わる黒髪に青い瞳。生まれた時から美しいその娘は、サーシャと名付けられた。
ーーしかし、この娘には前世の記憶があった。
前世では、何万もの人間を従える組の組長の妻ーー所謂<極妻>であったと言う記憶が。
しかも、彼女は知らない。
此処が、前世で最も人気のあった乙女ゲーム『恋する聖女』、略して『恋セイ』の世界だと言う事を。
成長するにつれ、どんどんサーシャの周りに集まる攻略対象達。
「女に群がる暇があるなら、さっさと仕事をしろ!」
これは、乙女ゲームなどしたことの無い元極妻の波乱万丈な物語である。
※毎週火曜日に更新予定。
忘れられた薔薇が咲くとき
ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。
だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。
これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。ざまあ要素たっぷりの胸がすくような展開と、新たな一歩を踏み出す彼女の成長を描きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる