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間話
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とある日の昼下がり。
城の奥にある、美しく咲き誇る青薔薇の聖地『永遠の花園』。その幻想的な美しさの薔薇園にて、その場の美しさに負けない二人の美しい女性達が優雅に紅茶を飲んでいた。
一人は、この国の王妃ミレーヌ。
もう一人は、妖艶な美女ミランダだ。
「…ねぇ、ミランダ」
ふと、ミレーヌが持っていた紅茶を置いて目の前の友人に声をかける。今は昼間なのに、まるでそこだけ夜の様な雰囲気を醸し出す妖艶な己の友人は、同棲でもドキッとするほどの色気の漂う流し目で此方を見る。
「どうしたの?」
「先日、クリスが貴女の家に陛下の使者として訪ねたでしょ?」
その言葉に、ミランダは数日前の出来事を思い出す。「可愛い我が家の天使サーシャが腹黒第一王子に目を付けられた!」と騒ぎ立てる我が家の男達を宥めるのに苦労した記憶が蘇る。
「えぇ、来たわ。それがどうかしたの?」
「実は、帰ってきて以降クリスの様子が少し変なの」
「そうなの?具体的には?」
「………そうね。何時も微笑んでいるんだけど、ここ最近は本当に楽しそうに笑うの。それに、気付けば王都にあるアベルシュタイン家がある方角を見ているのよ」
「気のせいではないの?」
「偶々そう見えるだけで何時もと変わらないのでは?」と思いミランダは尋ねるが、ミレーヌは首を横に振る。
「いいえ、間違い無いわ。………それに」
何処となくミレーヌが言いにくそうに口籠りながら、視線を彷徨わせる。それは、ミランダに対して何か良く無いことを隠している時の仕草だ。
「それに?」
「いえ、何でも無いわ」
「……ミレーヌ、私と貴女の中じゃない。二人の間に隠し事は無しよ?」
そう言って、ミランダは続きを促す。
何処となく圧のある笑みに、ミレーヌはとうとう白状する。
「怒らない?」
「えぇ、怒らないわ」
その言葉を信じて、ミレーヌは告げる。
「………実は、クリスが人を使ってサーシャちゃんの事を調べてるみたいなの」
その瞬間、ミランダの握っていたカップからピシッ!と不穏な音が聞こえてくる。
「………その話、詳しく聞かせて貰えるかしら」
今日一番の美しい笑みを浮かべて尋ねる友人を前に、この国で一番権力のある女性であるはずのミレーヌは逆らえなかった。
(ごめんなさい、クリス)
心の中で愛しい息子に謝りながら、ミランダによって全て白状させられたミレーヌ。
余さず全てを聞き終えたミランダは、屋敷に戻りサーシャが寝静まった深夜、ダリルとアランに昼間の事を報告する。
当然、すぐさまクリスを暗殺しに行きそうな程に怒り狂った男達であったのだった。
城の奥にある、美しく咲き誇る青薔薇の聖地『永遠の花園』。その幻想的な美しさの薔薇園にて、その場の美しさに負けない二人の美しい女性達が優雅に紅茶を飲んでいた。
一人は、この国の王妃ミレーヌ。
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「…ねぇ、ミランダ」
ふと、ミレーヌが持っていた紅茶を置いて目の前の友人に声をかける。今は昼間なのに、まるでそこだけ夜の様な雰囲気を醸し出す妖艶な己の友人は、同棲でもドキッとするほどの色気の漂う流し目で此方を見る。
「どうしたの?」
「先日、クリスが貴女の家に陛下の使者として訪ねたでしょ?」
その言葉に、ミランダは数日前の出来事を思い出す。「可愛い我が家の天使サーシャが腹黒第一王子に目を付けられた!」と騒ぎ立てる我が家の男達を宥めるのに苦労した記憶が蘇る。
「えぇ、来たわ。それがどうかしたの?」
「実は、帰ってきて以降クリスの様子が少し変なの」
「そうなの?具体的には?」
「………そうね。何時も微笑んでいるんだけど、ここ最近は本当に楽しそうに笑うの。それに、気付けば王都にあるアベルシュタイン家がある方角を見ているのよ」
「気のせいではないの?」
「偶々そう見えるだけで何時もと変わらないのでは?」と思いミランダは尋ねるが、ミレーヌは首を横に振る。
「いいえ、間違い無いわ。………それに」
何処となくミレーヌが言いにくそうに口籠りながら、視線を彷徨わせる。それは、ミランダに対して何か良く無いことを隠している時の仕草だ。
「それに?」
「いえ、何でも無いわ」
「……ミレーヌ、私と貴女の中じゃない。二人の間に隠し事は無しよ?」
そう言って、ミランダは続きを促す。
何処となく圧のある笑みに、ミレーヌはとうとう白状する。
「怒らない?」
「えぇ、怒らないわ」
その言葉を信じて、ミレーヌは告げる。
「………実は、クリスが人を使ってサーシャちゃんの事を調べてるみたいなの」
その瞬間、ミランダの握っていたカップからピシッ!と不穏な音が聞こえてくる。
「………その話、詳しく聞かせて貰えるかしら」
今日一番の美しい笑みを浮かべて尋ねる友人を前に、この国で一番権力のある女性であるはずのミレーヌは逆らえなかった。
(ごめんなさい、クリス)
心の中で愛しい息子に謝りながら、ミランダによって全て白状させられたミレーヌ。
余さず全てを聞き終えたミランダは、屋敷に戻りサーシャが寝静まった深夜、ダリルとアランに昼間の事を報告する。
当然、すぐさまクリスを暗殺しに行きそうな程に怒り狂った男達であったのだった。
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読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
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