極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.55

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クリス達が、アベルシュタイン家を訪れてから二日後。サーシャは、ドレスと同じ色の青い帽子をしっかりと被りながらミランダに向き直る。

「それじゃあ、お母様。行ってきます」
「行ってらっしゃい。ちゃんと、アランの言う事をよく聞くのよ?アランも、サーシャの事をよろしくね」
「わかってるよ、任せて。行こう、サーシャ」
「うん。行ってきます!」
「気を付けてね」

母ミランダに見送られて、サーシャとアランは馬車に乗る。そして、馬車は目的地に向かって動き出す。サーシャは、ソワソワしながら窓の外を見る。そんな彼女を、愛おしそうにアランは見つめる。

「サーシャ、そんなに楽しみ?」

その言葉に、サーシャは満面の笑みで答える。

「うんっ!」

(だって、今世で初めて魔法を見るんだよ?楽しみすぎて興奮する!)

そう、今日は昨日から王都にやって来ている旅芸人一座を観に行くのだ。その一座は、魔法を使った芸が人気の今一番人気の一座なのだ。

チケットは即完売が当たり前。
そんな一座のチケットを、アランが二枚手に入れたのだ。

***

『サーシャ、今王都に来ている一座を知ってるかな?「幻想の箱庭」って言う一座何だけど』
『聞いた事あります。その名の通り、幻想の様に素敵な魔法芸をする一座だと聞いてきます』
『そう。その一座のチケットを、丁度二枚手に入れたんだ。明日、一緒に見に行かないか?』
『兄様、本当ですか!?私、一度でいいから見てみたいと思ってたんです!』
『サーシャに喜んでもらえて嬉しいよ。頑張って、チケットを手に入れた甲斐があったよ』

***

そう言う訳で、サーシャ達は一座の魔法芸を見に向かっているのだ。

「それにしても、本当によくチケットが手に入りましたね。噂では、貴族でも気軽に手に入れる事が出来ないと聞いてたのに…」
「そこは、ほら。俺の人徳のお陰かな」

そう言って、アランは美しく微笑んだ。

(………あぁ。その目が眩む様な美貌を存分に利用したんですね)

どんなに入手困難なチケットでも、美しいアランにこの様に微笑まれチケットを欲しがられたら、我先にと差し出してしまうだろう。

「そうだ。一座がいる場所は、人が多いから俺から離れないでね?サーシャは、世界一可愛いから直ぐ犯罪者や変質者達に目を付けられて誘拐されちゃうから。でも、大丈夫だからね。俺の可愛いサーシャに手を出そうとする輩は、一人残らず俺が始末してあげるからね」

不穏な事を言うアランに対して、サーシャは笑顔で聞き流すのだった。そうしているうちに、サーシャ達を乗せた馬車は、「幻想の箱庭」一座がいる王都中央区に着くのだった。


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