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No.43

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丁度、昼の鐘が鳴り響く頃。
アベルシュタイン家の前に、王家の紋章の入った馬車がやって来た。

(うわぁ~。流石は、王家の馬車ね。豪華さの規模が、うちのと全然違うわ…)

あの太陽の光を反射して金色に輝く取手の部分は、本物の金だろうか?

そう思っていると、中から人が出てきた。
一人は、金の髪に紫の瞳をしたアランと同じ歳頃の美少年。恐らく…いや、まず間違い無く彼がクリス殿下だろう。何処と無く、ガダルに似た顔をしている。

「これはこれは、クリス殿下。本日は、当家へお越しくださり有難う御座います」

アベルシュタイン家当主であるダリルが、そう言ってクリスに頭を下げる。それに倣って、ミランダとアラン、サーシャ達も頭を下げる。

「頭を上げてください。今日は、私の他にもう一人いるんです」

そう言って、クリスは今しがた自身が降りて来た馬車を見る。サーシャ達もつられて馬車を見ると、丁度一人の美しい人が降りて来る所だった。

(うわぁ~、凄い美人…)

長い銀の髪は一つに纏め、緩く背中に流していた。瞳は、コバルトブルーの様に澄んだ美しい青だった。

一瞬、物凄い美人だと思った。

しかし、よく見れば中性的な青年だと気が付いた。

(この世界の顔面偏差値高すぎでしょ)

きっと、この世界を創造した神は、まず間違い無く極度の面食いだろう。そうで無ければ、この顔面偏差値の高さは有り得ない。

そう思っていると、青年がダリルに挨拶をする。

「お初にお目にかかります。私は、ルイス・フォトガデルと申します」
「君が、あの……。フォトガデル侯爵には、優秀な一人息子が居ると聞いてはいます。それに、アランからもよく君の話を聞くよ」
「変な話では無いといいのですが」
「息子からは、噂に違わぬ優秀な青年だと聞いているよ」
「それは光栄です」

そう言って、ダリルとルイスは和かに握手をする。そんな二人を見ていると、サーシャは不意に視線を感じた。視線を辿って顔を向けると、バッチリとクリス殿下と視線が合った。
視線が合うと、クリス殿下はニコッとこちらに笑みを向ける。それに対して、サーシャも笑みを返す。

その瞬間、サーシャは思った。

ーーこの王子は、自分と同類だ…と。

それは、クリス殿下も同じだったのだろう。
先程とはまた違った、少し歪な黒い笑みを浮かべて音も無く口を動かしたのだった。


『は じ め ま し て』

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