極妻、乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生しちゃいました!

ハルン

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No.31 ???side

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「ふぅ…。疲れたな…」

ガタガタと揺れる馬車の中、1人の青年が溜息と共に呟いた。歳の頃は15歳位のその青年は、自身しか乗っていない馬車の中、誰の目も無い事をいい事にだらりと姿勢を崩す。

「………ったく。あのババァ、話が長過ぎるんだよ。何が『うちの娘は、私に似て美人でしょう?』だ。確かに、ババァそっくりの厚化粧の化物だったよ」

その時、上着から香る甘ったるい香水の匂いに気が付き、青年は顔を顰める。

「くそっ…!この上着、かなり気に入ってたのに。あの怪物親子のせいで台無しじゃ無いか」

そう言って、上着を脱ぎ前の座席に放り投げる。

「あー、疲れた。マジで疲れた…」

しばらくの無言の後、青年はポツリと呟いた。

「………甘い物が食べたい」

身体全体が、甘い物を欲していた。
青年は、窓を開けて御者に命じる。

「おい、今すぐ『白兎』に行ってくれ」
「『白兎』ですか?」
「あぁ。今すぐに、何時もの甘い物が食べたい」
「承知しました」

御者は、直ぐに方向転換して白兎に向かう。
そうして、暫くしたのち白兎に着く。

「御坊ちゃま、白兎に到着しました」
「ご苦労。………ん?何だか、店内が騒がしく無いか?」

馬車から降りた瞬間から、店内の騒めきが聞こえて来る。普段も賑わっているが、それとは少し違う騒めきだ。

「そうですね。……少し見て参ります。御坊ちゃまは、馬車でお待ち下さい」

そう言って、店内に入って行った御者。
暫くしたのち、頬を赤く染めた御者が青年がいつも注文するケーキの箱を持って出てくる。

「どうした?顔が赤いぞ?」
「事実は、店内でケーキ食べ放題チャレンジを行っていまして…」

御者の言葉に、青年は驚く。
何しろ、この時代の甘味はとても甘い。それに、制限時間内に現チャンピオン達の記録を超えなければ、食べた分のケーキ代を払わなくてはならない。その為、滅多に食べ放題チャレンジに挑戦する者は居ないのだ。

「あのチャレンジを?どんな強者達だ?」
「そ、それが…、5歳くらいの美少女達です」
「………何?」

聞き間違いか?
5歳くらいの美少女達と聞こえたが…。

「それは、挑戦者達の子供か観客では無いのか?」
「いえ、違います。挑戦者は、その美少女達です。物凄いスピードで、ケーキを食べているのをこの目で見ました」

その言葉に、青年は驚く。

(まさか、本当に小さな子供がチャレンジに挑戦してるのか…?)

5歳くらいなどの子供が食べるには、この時代のケーキは甘過ぎる。一瞬、「虐待か?」と思うも…。

「とても美味しそうに食べていて、まるで天使の様に愛らしい子供達でした…」

御者のその言葉に、その考えは否定される。

(あの甘いケーキを美味しそうに食べる美少女達…)

「何だそれ?面白過ぎるだろう…」
「御坊ちゃま?」
「俺も、その子供達を見る」
「ですが、次の予定の時間が迫っていますが?」
「………そうだったな。次は、あの人との食事だったな」

他の予定は後回しに出来るが、あの人は後回しに出来ない。

「……仕方ないな。目的のケーキは買えたしな。面倒をかけたな。次の場所に向かってくれ」
「かしこまりました」

(本当に、残念だ。その美少女達を見たかったんだがな…)

遠ざかる白兎を見ながら、青年は心底残念に思うのだった。



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