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24 アランside

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アランは、目の前にいる美貌の少年を冷たい目で見ながら、内心面倒に思っていた。

「何のつもりだなんて、酷いなぁ~。さっきもアベルシュタイン夫人にも言ったけど、ただアランに会いたくなって来たんだよ」
「嘘つけ」

クリスの言葉に対して、即座にアランはそう言った。目の前の人物が、そんな理由でわざわざ自身に会いに来るなど事を、アランは知っていた。

「お前が、そんな子供みたいな事を言う筈がないだろうが。建前はいい、さっさと本当の事を言え」

側近として選ばれたとは言え、将来使える主人に対してこの態度はない。本来であれば、不敬罪で即刻処分対象である。


ーーだが、クリスは笑っていた。


その笑みは誰もが見惚れる程にとても美しいが、アランには子供が浮かべるには余りにも歪んだ笑みに見えた。

「はははっ!………本当に、アランは最高だなぁ。父上の反対を押し切って、無理を言ってまで側近にした甲斐があったよ」
「俺は本気で迷惑だ」
「だろうね」

(本当に、こいつは性格が悪いな)

他人アランが本気で嫌がっているのを知りながらも、王命を使ってまで自身の側近にしたクリス。それなのに、悪びれもせずにこうして厚かましくも堂々と当然の様に家にやって来たのだ。

これを性格が悪いと言わずに何と言うのだ。

(こいつほど性格の悪い子供を見た事がないな)

アラン自身も、普通の子供と比べても合理的で性格が良いとはお世辞でも言えないが、目の前の少年ほどではないと断言出来る。
子供の今でさえ、既に手を付けられない程に最悪な性格なのだ。これが大人になった事を想像するだけで、アランはキリキリと胃が痛む様な気がした。

「用件だったよね?実は、ちょっと王宮である噂を聞いてね」
「噂?」
「そう。何処かの誰かが、ガダルの事を『出来損ない』って言ってるらしいんだ」

その言葉を聞いた瞬間、アランはクリスが言いたい事が分かった。クリスは、弟であるガダルを大切にしていた。クリスは、性格は最悪だが自身の懐に入れた者は大切にする。純粋に、兄として自身を慕うガダルをクリスは大切にしていた。そんなガダルを「出来損ない」などと陰で罵るなんて、クリスに「私を消してくれ」と言っている様なものだ。

「だから、アベルシュタインの力で相手を特定してくれないかな?」
「………それで、お前は相手が分かったらどうするんだ?」
「勿論、二度とそんな事を言わない様にお願いするよ」

その言葉を、アランは鼻で笑った。

(何が「お願いする」だ。どうせ、当分の間社交界に出られない様に脅すつもりの癖に…)

前も似た様な事があった。
その時も、アランに相手の特定をお願いし、相手が分かるとクリスはアランに「お願いをしてくる」と言った。

それなのに、その「お願い」をしに行った筈の相手は、その直後に突然自身の領地に引き籠もってしまった。貴族として大切な社交界の場にも顔を出さず、貴族達の間では「貴族として失格」と今でも言われている。

「………分かった。相手は調べてやる」

ここで断ると、後々面倒な事になるのが分かっている。それなら、クリスの怒りを買った顔も知らぬ間抜けな貴族を探し出し売り渡す方がマシだ。

「ありがとう。やっぱり、アランは頼りになるなぁ」

そう言って美しく笑うクリスに、アランは溜息を吐いたのだった。







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