19 / 51
第1章
もう、お菓子に釣られません
しおりを挟む
「ダフネス様」
「おや、マリオンじゃ無いですか」
子供達と共に教会にやって来ると、教会前を掃除しているダフネスが居た。マリオンが声をかけると、ダフネスは顔を上げ嬉しそうに笑う。茶髪の髪に同色の瞳の優しい顔の彼は、昔から全然変わらない。昔馴染みで同い年のガスとダフネスは、とても仲が良い。だが、目つきの鋭いガスと優しい顔つきのダフネスが一緒に居ると、絡み絡まれている構図に見える。実際に、二人の事をよく知らない人が一緒に居る二人を見て街の警備兵を呼んだ事が何度もある。
「ダフネス様、来たぜ!」
「オレ達、今日は遅れなかったぜ!」
「ダフネス様!お菓子ちょうだい!」
「こら、アンタ達!ちゃんと挨拶しなさいよ!…すみません、ダフネス様」
テイル、トック、サラの言葉に怒りながらミミが頭を下げる。しかし、ダフネスは怒る事もなく朗らかに笑う。
「大丈夫ですよ、ミミ。皆んな元気でよろしい。元気な子には、ご褒美にお菓子をあげよう」
そう言って、ダフネスは白い神父服からクッキーの入った袋を取り出す。これは、ダフネスの手作りのお菓子だ。彼は、昔から自分で作ったお菓子を服の中に入れているのだ。
(勉強終わりに貰えるクッキーが、1番の楽しみだったなぁ~)
中身が成人していても、子供の頃は身体に感情が引っ張られてしまう事が多かった。上手く出来ないと悔しくて、よく泣いたものだ。その時、ダフネスがくれるお菓子はマリオンの涙を瞬時に引っ込める優れたアイテムだった。
(まぁ、この歳になったらお菓子に釣られないけどね)
「ほら、マリオンも。代わりに、井戸から水を汲んできてくれないかい?最近、身体が痛くってね」
「………頂きます」
別に、断じて…そう、断じてお菓子に釣られた訳ではない。困っている人がいたら助けるのは人として当たり前の事だ。
「ダフネス様!これ、皆んなで育てたの!」
サラがダフネスにハーブを渡す。
そのハーブがルルドだと分かったダフネスは、サラの頭を撫でる。
「ありがとうございます。最近、肩凝りが酷くてね。大事に使わせて貰いますね」
その言葉に、サラは嬉しそうに笑う。それを見て、クッキーを食べていたテイルとトックが声を上げる。
「それ、オレも育てたんだぜ!」
「オレもオレも!水やりはオレがやったんだ!」
「そうなんですね。二人共、ハーブを育てるのがとても上手ですね」
ダフネスに褒められ、二人は照れ臭そうにクッキーを齧る。
「皆んな、そろそろ勉強会が始まりますよ」
「ヤベッ!」
「テイル待ってくれよ!」
「ミミも早く!遅れちゃうよ!」
「サラ、慌てて走ると転ぶよ?」
ワイワイと騒ぎながら、子供達は教会に入っていく。
「じゃあ、ダフネス様。オレは、水を組んできますね」
「ありがとうございます。………それより、マリオンはまだ自分の事を「オレ」と呼んでいるんですね」
「中々癖が抜けなくて…」
「ガス様に注意されないんですか?」
「よく注意されます」
「だと思いました」
苦笑いのマリオンを見て、ダフネスは笑う。
「それじゃあ、水汲んで来ます」
「お願いします」
教会の裏にある井戸にマリオンは向かう。
「………いつか、貴女をあの出来事から解放してくれる人が現れます様に」
そんなマリオンの背中に、ダフネスが祈りを捧げた事をマリオンは知らない。
「おや、マリオンじゃ無いですか」
子供達と共に教会にやって来ると、教会前を掃除しているダフネスが居た。マリオンが声をかけると、ダフネスは顔を上げ嬉しそうに笑う。茶髪の髪に同色の瞳の優しい顔の彼は、昔から全然変わらない。昔馴染みで同い年のガスとダフネスは、とても仲が良い。だが、目つきの鋭いガスと優しい顔つきのダフネスが一緒に居ると、絡み絡まれている構図に見える。実際に、二人の事をよく知らない人が一緒に居る二人を見て街の警備兵を呼んだ事が何度もある。
「ダフネス様、来たぜ!」
「オレ達、今日は遅れなかったぜ!」
「ダフネス様!お菓子ちょうだい!」
「こら、アンタ達!ちゃんと挨拶しなさいよ!…すみません、ダフネス様」
テイル、トック、サラの言葉に怒りながらミミが頭を下げる。しかし、ダフネスは怒る事もなく朗らかに笑う。
「大丈夫ですよ、ミミ。皆んな元気でよろしい。元気な子には、ご褒美にお菓子をあげよう」
そう言って、ダフネスは白い神父服からクッキーの入った袋を取り出す。これは、ダフネスの手作りのお菓子だ。彼は、昔から自分で作ったお菓子を服の中に入れているのだ。
(勉強終わりに貰えるクッキーが、1番の楽しみだったなぁ~)
中身が成人していても、子供の頃は身体に感情が引っ張られてしまう事が多かった。上手く出来ないと悔しくて、よく泣いたものだ。その時、ダフネスがくれるお菓子はマリオンの涙を瞬時に引っ込める優れたアイテムだった。
(まぁ、この歳になったらお菓子に釣られないけどね)
「ほら、マリオンも。代わりに、井戸から水を汲んできてくれないかい?最近、身体が痛くってね」
「………頂きます」
別に、断じて…そう、断じてお菓子に釣られた訳ではない。困っている人がいたら助けるのは人として当たり前の事だ。
「ダフネス様!これ、皆んなで育てたの!」
サラがダフネスにハーブを渡す。
そのハーブがルルドだと分かったダフネスは、サラの頭を撫でる。
「ありがとうございます。最近、肩凝りが酷くてね。大事に使わせて貰いますね」
その言葉に、サラは嬉しそうに笑う。それを見て、クッキーを食べていたテイルとトックが声を上げる。
「それ、オレも育てたんだぜ!」
「オレもオレも!水やりはオレがやったんだ!」
「そうなんですね。二人共、ハーブを育てるのがとても上手ですね」
ダフネスに褒められ、二人は照れ臭そうにクッキーを齧る。
「皆んな、そろそろ勉強会が始まりますよ」
「ヤベッ!」
「テイル待ってくれよ!」
「ミミも早く!遅れちゃうよ!」
「サラ、慌てて走ると転ぶよ?」
ワイワイと騒ぎながら、子供達は教会に入っていく。
「じゃあ、ダフネス様。オレは、水を組んできますね」
「ありがとうございます。………それより、マリオンはまだ自分の事を「オレ」と呼んでいるんですね」
「中々癖が抜けなくて…」
「ガス様に注意されないんですか?」
「よく注意されます」
「だと思いました」
苦笑いのマリオンを見て、ダフネスは笑う。
「それじゃあ、水汲んで来ます」
「お願いします」
教会の裏にある井戸にマリオンは向かう。
「………いつか、貴女をあの出来事から解放してくれる人が現れます様に」
そんなマリオンの背中に、ダフネスが祈りを捧げた事をマリオンは知らない。
0
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)
夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。
ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。
って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!
せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。
新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。
なんだかお兄様の様子がおかしい……?
※小説になろうさまでも掲載しています
※以前連載していたやつの長編版です
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる