6 / 51
第1章
そうして現在に至る
しおりを挟む
『おいおい、今からでも遅く無いぞ?』
『そうよ。考え直して?』
『今やっと、あの野菜が上手く育ったんだよ』
『此処を出て、何処に行くつもりなんだ?』
協会を出て行く日。
目の前には、教会の皆んなが見送りに来てくれた。
だが、それよりも更に大勢の『彼等』がマリオンの周りを取り囲む。
「マリオン、身体には気を付けてね」
『大丈夫だって。この子、腹出して寝ても風邪引かないしな』
マリオンの隣の部屋の女性がそう言うと、赤髪の男前インキュバスが答える。
「いいかい、マリオン。復習は、毎日欠かさず行うんだよ」
『そうだぞ?美味しい野菜を育てるのも日々の怠る事ない努力の積み重ねが大事なんじゃ』
勉強を教えてくれている歳をとった神官の老人がそう言うと、膝丈ほどのとんがり帽子を被った初老の小人が同意する。
「寂しくなったら、何時でも戻って来るのよ?」
『そうだぞ。お前が居なくなったら、教会に住めなくなる。………クソッ!もう少しで、この女に俺のテクニックをお披露目する筈だったのにっ!』
姉の様に慕う女性ーーミレニアが心配そうに言うと、黒髪カールの色気ムンムン先輩インキュバスが悔しそうに言う。
皆んなの別れの挨拶を聞き終えると、ダフネスがタイミングを見てマリオンに声をかける。
「マリオン、そろそろ行きますよ」
「はい。ーー皆んな、元気で」
ーーと言っても、週に一回は教会に勉強しに来るが。
『いやぁ~ん、行かないで~!貴女が居ないと私、此処に住めないの!そうしたら、あの人と離れ離れになっちゃう~』
キンキラキンのオジ様とイチャイチャしていた茶髪の色気ムンムンサキュバスが、マリオンに抱き付く。しかし、『彼等』に触られても感触は無い。マリオンは、何事も無い様にダフネスと共に教会を後にする。
(これで、一先ずは教会の皆んなに迷惑はかけない筈…)
マリオンがこれから行く孤児院は、アルミス孤児院。ダフネスの古い知り合いが院長をしている孤児院だ。
「院長のガス様は、とても優しい人です。孤児院の子供達もとても元気な子達です。きっと、マリオンにとって過ごしやすい場所になりますよ」
「はやく馴染める様に頑張ります」
そう言ってダフネスに手を引かれてやって来た孤児院は、一言で言うとマリオンにとって最高の場所だった。
見える事は変わらない。
だが、何故だかその孤児院には『彼等』は入って来れなかったのだ。
マリオンは、歓喜した。
一定の場所には住めず、各孤児院を転々とする事を覚悟していた。だが、この孤児院にならずっと住める。その事実は、マリオンを大いに喜ばせた。
(此処なら、『彼等』も入れない。誰にも迷惑をかける事が無い……!)
それからは、とても充実した11年間だった。
週一で教会に通いながら、孤児院の皆んなと過ごして来た。時には孤児院の皆んなと喧嘩し、時には街で皆んなと悪戯して院長に怒られたり。
そんな日々を過ごして来たマリオンは、先日16歳になった。
孤児院の子供は、16歳の成人を迎えると孤児院を出て行かねばならない。
「………ねぇ、マリオン。マリオンも、そろそろ孤児院出てくんだろ?」
背中に乗せたテイルが小さな声で話しかけて来る。その声は、何処と無く寂しそうだ。弟分のそんな声に、マリオンは小さく笑いながら話す。
「そうだよ。でも手のかかる弟分が居るから、ちょくちょく様子見に戻らないとな~」
「別にオレは一人でも大丈夫だし!………でも、マリオンがどうしてもって言うなら様子見に戻ってこいよ!」
(素直じゃ無いな~)
素直に寂しいと言わない弟分に、心の中で笑いながら皆んなと孤児院に戻ったのだった。
『そうよ。考え直して?』
『今やっと、あの野菜が上手く育ったんだよ』
『此処を出て、何処に行くつもりなんだ?』
協会を出て行く日。
目の前には、教会の皆んなが見送りに来てくれた。
だが、それよりも更に大勢の『彼等』がマリオンの周りを取り囲む。
「マリオン、身体には気を付けてね」
『大丈夫だって。この子、腹出して寝ても風邪引かないしな』
マリオンの隣の部屋の女性がそう言うと、赤髪の男前インキュバスが答える。
「いいかい、マリオン。復習は、毎日欠かさず行うんだよ」
『そうだぞ?美味しい野菜を育てるのも日々の怠る事ない努力の積み重ねが大事なんじゃ』
勉強を教えてくれている歳をとった神官の老人がそう言うと、膝丈ほどのとんがり帽子を被った初老の小人が同意する。
「寂しくなったら、何時でも戻って来るのよ?」
『そうだぞ。お前が居なくなったら、教会に住めなくなる。………クソッ!もう少しで、この女に俺のテクニックをお披露目する筈だったのにっ!』
姉の様に慕う女性ーーミレニアが心配そうに言うと、黒髪カールの色気ムンムン先輩インキュバスが悔しそうに言う。
皆んなの別れの挨拶を聞き終えると、ダフネスがタイミングを見てマリオンに声をかける。
「マリオン、そろそろ行きますよ」
「はい。ーー皆んな、元気で」
ーーと言っても、週に一回は教会に勉強しに来るが。
『いやぁ~ん、行かないで~!貴女が居ないと私、此処に住めないの!そうしたら、あの人と離れ離れになっちゃう~』
キンキラキンのオジ様とイチャイチャしていた茶髪の色気ムンムンサキュバスが、マリオンに抱き付く。しかし、『彼等』に触られても感触は無い。マリオンは、何事も無い様にダフネスと共に教会を後にする。
(これで、一先ずは教会の皆んなに迷惑はかけない筈…)
マリオンがこれから行く孤児院は、アルミス孤児院。ダフネスの古い知り合いが院長をしている孤児院だ。
「院長のガス様は、とても優しい人です。孤児院の子供達もとても元気な子達です。きっと、マリオンにとって過ごしやすい場所になりますよ」
「はやく馴染める様に頑張ります」
そう言ってダフネスに手を引かれてやって来た孤児院は、一言で言うとマリオンにとって最高の場所だった。
見える事は変わらない。
だが、何故だかその孤児院には『彼等』は入って来れなかったのだ。
マリオンは、歓喜した。
一定の場所には住めず、各孤児院を転々とする事を覚悟していた。だが、この孤児院にならずっと住める。その事実は、マリオンを大いに喜ばせた。
(此処なら、『彼等』も入れない。誰にも迷惑をかける事が無い……!)
それからは、とても充実した11年間だった。
週一で教会に通いながら、孤児院の皆んなと過ごして来た。時には孤児院の皆んなと喧嘩し、時には街で皆んなと悪戯して院長に怒られたり。
そんな日々を過ごして来たマリオンは、先日16歳になった。
孤児院の子供は、16歳の成人を迎えると孤児院を出て行かねばならない。
「………ねぇ、マリオン。マリオンも、そろそろ孤児院出てくんだろ?」
背中に乗せたテイルが小さな声で話しかけて来る。その声は、何処と無く寂しそうだ。弟分のそんな声に、マリオンは小さく笑いながら話す。
「そうだよ。でも手のかかる弟分が居るから、ちょくちょく様子見に戻らないとな~」
「別にオレは一人でも大丈夫だし!………でも、マリオンがどうしてもって言うなら様子見に戻ってこいよ!」
(素直じゃ無いな~)
素直に寂しいと言わない弟分に、心の中で笑いながら皆んなと孤児院に戻ったのだった。
0
お気に入りに追加
608
あなたにおすすめの小説
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話
もち
ファンタジー
なんと、なんと、世にも珍しい事に、トラックにはねられて死んでしまった男子高校生『閃(セン)』。気付いたら、びっくり仰天、驚くべき事に、異世界なるものへと転生していて、
だから、冒険者になって、ゴブリンを倒して、オーガを倒して、ドラゴンを倒して、なんやかんやでレベル300くらいの時、寿命を迎えて死んだ。
で、目を覚ましたら、記憶と能力を継いだまま、魔物に転生していた。サクっと魔王になって世界を統治して、なんやかんやしていたら、レベル700くらいの時、寿命を迎えて死んだ。
で、目を覚ましたら……というのを100回くりかえした主人公の話。
「もういい! 異世界転生、もう飽きた! 何なんだよ、この、死んでも死んでも転生し続ける、精神的にも肉体的にもハンパなくキツい拷問! えっぐい地獄なんですけど!」
これは、なんやかんやでレベル(存在値)が十兆を超えて、神よりも遥かに強くなった摩訶不思議アドベンチャーな主人公が、
「もういい! もう終わりたい! 終わってくれ! 俺、すでにカンストしてんだよ! 俺、本気出したら、最強神より強いんだぞ! これ以上、やる事ねぇんだよ! もう、マジで、飽きてんの! だから、終わってくれ!」
などと喚きながら、その百回目に転生した、
『それまでの99回とは、ちょいと様子が違う異世界』で、
『神様として、日本人を召喚してチートを与えて』みたり、
『さらに輪をかけて強くなって』しまったり――などと、色々、楽しそうな事をはじめる物語です。
『世界が進化(アップデート)しました』
「え? できる事が増えるの? まさかの上限解放? ちょっと、それなら話が違うんですけど」
――みたいな事もあるお話です。
しょうせつかになろうで、毎日2話のペースで投稿をしています。
2019年1月時点で、120日以上、毎日2話投稿していますw
投稿ペースだけなら、自信があります!
ちなみに、全1000話以上をめざしています!
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる