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11 精霊王、力の加減を間違える
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ソニアと呼ばれた白いローブを着た女性は、仲間達の困惑の視線をものともせずひたすら強い眼差しでテオドラを見つめる。
「お願いします。どうか、ルークさんを…仲間を助けて下さい」
必死に懇願し頭を下げるソニアを見て、狼獣人のアランも理由は分からないが同じ様に頭を下げる。
「君が何者か分からないが、ルークを救えるのならどうか助けてくれ」
アランの言葉に、ガルドとミアも真剣な表情で頭を下げる。
「わかった」
テオドラは頷くと、血を流し横たわるルークの側に立つ。
「ふむ…」
右肩から左脇腹辺りまで走る傷跡。
その傷跡から黒い霧の様な物が立ち上り、血が流れ続けている。
(中々の強さの呪いだな)
普通なら既に死んでいただろう。
だが、治癒師の腕前がかなりのものだったから今も何とか持ち堪えている現状だった。
テオドラは、ルークに手を翳して一言呟いた。
「"癒せ"」
その瞬間、ルークの身体どころかテオドアを中心に十メートル程の光が辺りを包み込む。
そうして光が収まった時、辺りは一変していた。
「な、何だこりゃ!?」
ガルドが辺りを見て驚きの声を上げる。
しかし、それも無理も無い。
何故なら、戦闘のせいで抉れて土の剥き出しになっていた地面が、植物が芽吹き美しい花畑に変わっていたからだ。
「私達の怪我も治ってる…」
自身の身体の何処にも傷一つ無いどころか、前よりも綺麗な肌を見て呆然とするミア。アランは辺りを見回してソニアに尋ねる。
「ルークは?」
「大丈夫です。傷も治って顔色も良くなってます」
ソニアの言葉に、アランは小さく息を吐く。
そうして、テオドアと視線を合わせる様に膝をつき頭を下げる。
「本当に助かった。この礼は『銀狼』のリーダーとして必ずする」
他のメンバーも同じ様に膝をついてテオドラに頭を下げる。
「俺の名前はアラン。冒険者『銀狼』のリーダーをしている。大柄なのはガルド、赤い髪はミア。白いローブを着ているのがソニアで、君が治癒してくれたのがルークだ」
「私はテオドラという」
「そうか。テオドラは何故此処に?」
アランの言葉に、テオドラは胸を張る。
「旅をしてるのだ!」
「………一人で?」
「うむ!」
「街からかなり離れたこんな奥深くの森の中を?」
「う…うむ…」
アランの質問に、声が段々と小さくなる。
「迷子か」
「迷子ね」
「迷子ですね」
「ち、違う!たまたま散歩してただけだ!」
他の人達の言葉を慌てて否定する。
「何日だ?」
「……………三日」
「迷子だな」
アランに断言される。
子供の身体になったせいか、精神も幼くなっているテオドラ。一人でいた時は何でも無かったが、人に出会った事で感情が今までに無いくらい動き出す。
「ち、違う…」
そう言いながらも、目に涙が浮かぶのだった。
「お願いします。どうか、ルークさんを…仲間を助けて下さい」
必死に懇願し頭を下げるソニアを見て、狼獣人のアランも理由は分からないが同じ様に頭を下げる。
「君が何者か分からないが、ルークを救えるのならどうか助けてくれ」
アランの言葉に、ガルドとミアも真剣な表情で頭を下げる。
「わかった」
テオドラは頷くと、血を流し横たわるルークの側に立つ。
「ふむ…」
右肩から左脇腹辺りまで走る傷跡。
その傷跡から黒い霧の様な物が立ち上り、血が流れ続けている。
(中々の強さの呪いだな)
普通なら既に死んでいただろう。
だが、治癒師の腕前がかなりのものだったから今も何とか持ち堪えている現状だった。
テオドラは、ルークに手を翳して一言呟いた。
「"癒せ"」
その瞬間、ルークの身体どころかテオドアを中心に十メートル程の光が辺りを包み込む。
そうして光が収まった時、辺りは一変していた。
「な、何だこりゃ!?」
ガルドが辺りを見て驚きの声を上げる。
しかし、それも無理も無い。
何故なら、戦闘のせいで抉れて土の剥き出しになっていた地面が、植物が芽吹き美しい花畑に変わっていたからだ。
「私達の怪我も治ってる…」
自身の身体の何処にも傷一つ無いどころか、前よりも綺麗な肌を見て呆然とするミア。アランは辺りを見回してソニアに尋ねる。
「ルークは?」
「大丈夫です。傷も治って顔色も良くなってます」
ソニアの言葉に、アランは小さく息を吐く。
そうして、テオドアと視線を合わせる様に膝をつき頭を下げる。
「本当に助かった。この礼は『銀狼』のリーダーとして必ずする」
他のメンバーも同じ様に膝をついてテオドラに頭を下げる。
「俺の名前はアラン。冒険者『銀狼』のリーダーをしている。大柄なのはガルド、赤い髪はミア。白いローブを着ているのがソニアで、君が治癒してくれたのがルークだ」
「私はテオドラという」
「そうか。テオドラは何故此処に?」
アランの言葉に、テオドラは胸を張る。
「旅をしてるのだ!」
「………一人で?」
「うむ!」
「街からかなり離れたこんな奥深くの森の中を?」
「う…うむ…」
アランの質問に、声が段々と小さくなる。
「迷子か」
「迷子ね」
「迷子ですね」
「ち、違う!たまたま散歩してただけだ!」
他の人達の言葉を慌てて否定する。
「何日だ?」
「……………三日」
「迷子だな」
アランに断言される。
子供の身体になったせいか、精神も幼くなっているテオドラ。一人でいた時は何でも無かったが、人に出会った事で感情が今までに無いくらい動き出す。
「ち、違う…」
そう言いながらも、目に涙が浮かぶのだった。
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