28 / 34
No.27 本当は優しい人
しおりを挟む
※此処から、24話に戻ります。
******
(あの後、ダグラスさんとティナさんも一緒に働く事になったんだけど…)
初対面で莉緒にかなりの敵意を持っていたティナが、次に会った時には全然態度が違っていたのだ。
『………ちょっと、貴女』
『ティ、ティ、ティナさん…』
『昨日は言い過ぎたわ。ずっと探していたアルス様が、貴女の為に戻らないなんていうから…ついムキになったの。ごめんなさい』
『そ、そうだったんですね』
『だけど…!』
『ひっ!?』
『貴女のそのビクビクした態度、凄く気に入らないわ!あの素晴らしいアルス様に望まれているのに、貴女はビクビクしてばっかり。もっと自信を持ちなさいよ!そんなんだから、貴女自身が私が言ったみたいに馬鹿にされるのよ。今からでも少しでも自信を持たないと、これからも何かと馬鹿にされるわよ!』
『ひゃ、ひゃい!』
声はキツかったが、言っている内容は莉緒を気遣う様なものだった。それ以来、ティナは言葉こそキツいが莉緒をさり気無く助けてくれる様になった。
(ティナさんって、言葉はキツいけど優しい人だな)
その時、アルスが莉緒に声をかける。
「ねぇ、リオちゃん」
「何ですか?」
「アイツらが働き始めてそれなりに経ったけど、何か嫌な事ある?邪魔じゃ無い?」
「そんな事ありませんよ。二人共、凄く仕事が丁寧で早くて私の方が学ぶ事が多いくらいですよ」
「そっか、それなら良いんだ。でも、もしもアイツらが邪魔だと感じたらいつでも言ってね。俺が処理するから」
ニッコリと笑うアルス。
だが、相変わらず物騒な言葉を口にする。
「そんな物騒な事、言わないでください!」
「ちょっと!私が働いてるのに、何をアルス様とイチャイチャしてるのよ!」
料理を持ったティナから、叱咤の声が莉緒に飛ぶ。
「イ、イチャイチャなんてしてません!」
「おい、俺とリオちゃんの邪魔するなよ」
「アルスさんも働いて下さい!」
アルスの背中を押して厨房に押し入れてから、莉緒も慌ただしく料理を持って駆け回る。
そうして仕事も終わり、ダンテに挨拶をしてから四人揃って宿屋を出る。
「アルス様、お疲れ様です。本日はこれで失礼します」
「アルス様!また明日もよろしくお願いします!」
「お~」
ダグラスとティナの言葉に、アルスは気の無い返事をする。二人は、宿屋に近い所に部屋を借りて二人で住んでいる。
(でも、恋人って訳じゃ無いんだよね)
ダグラス曰く、兄弟の様な感じらしい。
「さ、リオちゃん。早く俺達の愛の巣に帰ろう」
「愛の巣じゃ無いです!………ダグラスさん、ティナさん。また明日」
「あぁ」
「ふんっ!明日はドジ踏まないでよね!」
家の方角が違う為、二人とは少し先の道で分かれた。
「今日の夜は、朝から仕込んだシチューだよ。俺の愛情が一杯注ぎ込んであるから」
「………た、楽しみです」
この世界に来て不安な事は沢山あったが、今はとても充実した日々を莉緒は送っているのだった。
******
(あの後、ダグラスさんとティナさんも一緒に働く事になったんだけど…)
初対面で莉緒にかなりの敵意を持っていたティナが、次に会った時には全然態度が違っていたのだ。
『………ちょっと、貴女』
『ティ、ティ、ティナさん…』
『昨日は言い過ぎたわ。ずっと探していたアルス様が、貴女の為に戻らないなんていうから…ついムキになったの。ごめんなさい』
『そ、そうだったんですね』
『だけど…!』
『ひっ!?』
『貴女のそのビクビクした態度、凄く気に入らないわ!あの素晴らしいアルス様に望まれているのに、貴女はビクビクしてばっかり。もっと自信を持ちなさいよ!そんなんだから、貴女自身が私が言ったみたいに馬鹿にされるのよ。今からでも少しでも自信を持たないと、これからも何かと馬鹿にされるわよ!』
『ひゃ、ひゃい!』
声はキツかったが、言っている内容は莉緒を気遣う様なものだった。それ以来、ティナは言葉こそキツいが莉緒をさり気無く助けてくれる様になった。
(ティナさんって、言葉はキツいけど優しい人だな)
その時、アルスが莉緒に声をかける。
「ねぇ、リオちゃん」
「何ですか?」
「アイツらが働き始めてそれなりに経ったけど、何か嫌な事ある?邪魔じゃ無い?」
「そんな事ありませんよ。二人共、凄く仕事が丁寧で早くて私の方が学ぶ事が多いくらいですよ」
「そっか、それなら良いんだ。でも、もしもアイツらが邪魔だと感じたらいつでも言ってね。俺が処理するから」
ニッコリと笑うアルス。
だが、相変わらず物騒な言葉を口にする。
「そんな物騒な事、言わないでください!」
「ちょっと!私が働いてるのに、何をアルス様とイチャイチャしてるのよ!」
料理を持ったティナから、叱咤の声が莉緒に飛ぶ。
「イ、イチャイチャなんてしてません!」
「おい、俺とリオちゃんの邪魔するなよ」
「アルスさんも働いて下さい!」
アルスの背中を押して厨房に押し入れてから、莉緒も慌ただしく料理を持って駆け回る。
そうして仕事も終わり、ダンテに挨拶をしてから四人揃って宿屋を出る。
「アルス様、お疲れ様です。本日はこれで失礼します」
「アルス様!また明日もよろしくお願いします!」
「お~」
ダグラスとティナの言葉に、アルスは気の無い返事をする。二人は、宿屋に近い所に部屋を借りて二人で住んでいる。
(でも、恋人って訳じゃ無いんだよね)
ダグラス曰く、兄弟の様な感じらしい。
「さ、リオちゃん。早く俺達の愛の巣に帰ろう」
「愛の巣じゃ無いです!………ダグラスさん、ティナさん。また明日」
「あぁ」
「ふんっ!明日はドジ踏まないでよね!」
家の方角が違う為、二人とは少し先の道で分かれた。
「今日の夜は、朝から仕込んだシチューだよ。俺の愛情が一杯注ぎ込んであるから」
「………た、楽しみです」
この世界に来て不安な事は沢山あったが、今はとても充実した日々を莉緒は送っているのだった。
0
お気に入りに追加
92
あなたにおすすめの小説
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
男女比がおかしい世界にオタクが放り込まれました
かたつむり
恋愛
主人公の本条 まつりはある日目覚めたら男女比が40:1の世界に転生してしまっていた。
「日本」とは似てるようで違う世界。なんてったって私の推しキャラが存在してない。生きていけるのか????私。無理じゃね?
周りの溺愛具合にちょっぴり引きつつ、なんだかんだで楽しく過ごしたが、高校に入学するとそこには前世の推しキャラそっくりの男の子。まじかよやったぜ。
※この作品の人物および設定は完全フィクションです
※特に内容に影響が無ければサイレント編集しています。
※一応短編にはしていますがノープランなのでどうなるかわかりません。(2021/8/16 長編に変更しました。)
※処女作ですのでご指摘等頂けると幸いです。
※作者の好みで出来ておりますのでご都合展開しかないと思われます。ご了承下さい。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
無理やり婚約したはずの王子さまに、なぜかめちゃくちゃ溺愛されています!
夕立悠理
恋愛
──はやく、この手の中に堕ちてきてくれたらいいのに。
第二王子のノルツに一目惚れをした公爵令嬢のリンカは、父親に頼み込み、無理矢理婚約を結ばせる。
その数年後。
リンカは、ノルツが自分の悪口を言っているのを聞いてしまう。
そこで初めて自分の傲慢さに気づいたリンカは、ノルツと婚約解消を試みる。けれど、なぜかリンカを嫌っているはずのノルツは急に溺愛してきて──!?
※小説家になろう様にも投稿しています
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる