上 下
16 / 46
王都編

3

しおりを挟む
「別に、何でもないです」

目の前の赤髪イケメンに少しキツめの声でそう言い放ち、さっさとその場を離れるアリア。だが、イケメンはアリアにピッタリとついて来た。

(何でついてくるのよ!)

「まぁ、待ってよ。ここで会ったのも何かの縁。どう?俺とお茶しない?」
「しません」

イケメンを振り切るべく、アリアは足の動きを早める。。しかし、イケメンはその無駄に長い足を使い余裕な態度でついて来る。その事にも、イケメンに対して殺意が湧き上がる。

「そんな連れない事言わないで。息切れしてるし、子猫ちゃんは疲れてるだろ?そこのカフェに、休憩がてらに入らない?」

(息切れはアンタの所為だよ!)

ーー嗚呼、憎い。
その無駄に長い足がとてつもなく憎い。

「こんなそこら辺に沢山居るような私じゃなくて、あそこに居る美人なお姉さんに声掛けたらいいじゃないですか?」

本当に、何でこんな普通のアリアに声を掛けてくるのだろう?

(………ハッ!まさか!)

「……これが噂に聞く結婚詐欺?」

そう考えれば納得出来る。
むしろ、納得しか無い。

美人より、平凡な男慣れして無さそうな女に声を掛ける方が成功率は高いだろう。相手がイケメンなら尚更だ。男に慣れてない平凡な女に、こんなイケメンが恋人みたいに接して近付いて来たらイチコロだろう。そうして、その気にさせて全財産をむしり取るつもりなのだ。

「結婚詐欺。王都怖い…」

なんて事だ。
少し来ないうちに、王都はすっかり結婚詐欺師の巣窟になってしまっていたなんて。

どうやら、アリアの心の声が漏れていたらしい。イケメンは、少し慌てて否定する。

「違うからね?俺は結婚詐欺師とかじゃないからね?本当だからね?」

(嘘つけ!詐欺師じゃなきゃ、私に声なんてかける筈無いでしょ!)

そんな思いを込めて、イケメンを睨む。

「本当だよ。俺は君に用があるんだよ…アリア・ダングスマンちゃん」


ーーピタッ。


私は足を止め、ゆっくり隣のイケメンを見る。
イケメンは、先程よりも深くした笑みで此方を見ていた。

「……………それで?お茶は当然、貴方の奢りよね?」
「勿論」

にっこりと笑う目の前の男は、アリアの手を取ると目の前のカフェに向かって歩き始めたのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜

茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。 ☆他サイトにも投稿しています

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

皇妃になりたくてなったわけじゃないんですが

榎夜
恋愛
無理やり隣国の皇帝と婚約させられ結婚しました。 でも皇帝は私を放置して好きなことをしているので、私も同じことをしていいですよね?

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

処理中です...