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第3章

No.119 全力で行く

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あれから、私とクリスの2人で教室に戻った。
すでに教室内には誰もおらず、中はシーンと静まり返っていた。

(き…気まずい)

教室に戻るまで、私たちの間に会話は無かった。先程のクリスに抱き締められた事に混乱して話しかけられなかった。

「わっ私、もう帰るね!さっきは心配してくれてありがと!じゃあ!」

沈黙に耐えきれなくなり、早口でそう言って自身の荷物を持ち教室を出ようとした。

「ティア、待って」

だが、直ぐにクリスに右手を掴まれ逃げられなかった。

「…ねぇ、ティア」
「な、何でしょう」

名前を呼ばれただけなのに妙に緊張する。
それは多分、クリスの纏っている雰囲気のせいだ。
とても真剣な顔で私を見つめるクリスに、ゴクリと唾を飲み込む。

「…僕、ティアの事が好きだよ」
「………え?」

その言葉の意味が、最初は理解出来なかった。
暫くぼんやりして、漸く頭が言われた言葉の意味を理解した。

「!?えっ、あの、それって!」
「勿論、異性として好きって事だから」

そう言って、クリスは掴んでいた手を引き私を抱き締める。

「…好きだよ、ティア。ずっと、君が好きだった」

とても穏やかで優しい声の告白に、心臓が勢い良く動き出す。

「あの、その…」

混乱して言葉が出てこない。

「本当は、君の心の歩幅に合わせて行くつもりだったんだ。…でも、そう言ってられなくなった。だから、これからは本気で行く事にしたんだ」

(本気って!?)

どうかお願いだから、本気を出さないで欲しい。

「取り敢えず今は、僕の気持ちを知ってもらいたかったんだ」
「あ…」
「今は、返事は要らない。どうせ、断るだろうからね」

心を読まれ、断りの言葉を遮られる。
もう、何が何だか分からない。

「今日は、此処までにしてあげる。…明日から覚悟してね」

ーーチュッ

そう言ってクリスは、私の額にキスをした。

「!?」
「ははっ!それじゃあ、また明日」

驚く私を笑ったクリスは、そのまま教室を出て行く。

(本当にーー)

「どうしてこうなったの?」

そんな私の疑問に答えてくれる人は、誰も居なかった。

「………取り敢えず、帰ろう」

今日は疲れた。
そうして直ぐにベッドで寝よう。

そう決意しながら、ふらふらと私は教室を出た。
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