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第3章

No.114 似た者同士

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とある空き教室から、向かいの一年クラスを覗きながらブツブツと呟く怪しい男が1人。

「殺す殺す殺す。俺の娘に近付く害虫め、始末してやる…」

言わずもがな、ギルバートである。

「何、俺の可愛いティアの隣に平然と座ってるんだっ!…あぁ!ティアに「あ~ん」だとっ!?何様のつもりだ!」
「あっ!やっぱり此処にいた。ちょっと、ギルバート!こんな所で娘のストーカーしてないでよ。貴方には、やる事があるでしょう?」

ギルバートを連れ戻しにきたアニーが呆れたように教室に入って来る。

「だから、娘に近付く害虫をチェックしてるだろ」
「その殺すヤるじゃないわよ!」

娘の事に関しては、ギルバートに何を言っても無駄だ。アニーは、色々諦めた。

「所で、何を見てるの?」
「クリスとノアって言う娘に近付く害虫を監視してる」
「それって片方は私の息子でもう片方は、貴方の手紙友達の息子じゃない…。2人は何をしてるの?」

そう言って、アニーも向かいの教室を見る。

「あらっ!クリスったら、ノア君とティアちゃんを巡って争ってるわ!」

「クリス頑張るのよ!」とアニーは息子の応援を始める。

「何、応援してるんだ!」
「だって~。息子の恋は応援したいじゃない!しかもライバルは、あの色気たっぷりのノア君よ?天使みたいなクリスvs悪魔の(実際、この世界では悪魔のような存在)ノア君。ティアちゃんったらモテモテね!」
「当たり前だ。何たって、俺とマリアの世界一可愛い娘だからな」

ギルバートが、誇らしそうに胸を張る。

「あっ!ノア君がティアちゃんの口元に着いたソースを指で取ったわ!」
「何!?」

ビタンッと窓に張り付くギルバート。
その時、不運にも互いのいる教室の間の道を歩いていた生徒がそれを見てしまい悲鳴を上げて逃げて行く。

***

後に、学園内で1つの噂が広がる。

『とある使われていない空き教室には、恐ろしい顔をした男性の姿をしたアンデットが、窓に張り付き生徒を監視している』…と。

この噂を警戒した学園側から調査の依頼を、噂の元凶であるギルバートとアニーが任されるのは、また別の話だ。

***   

「あっ!クリスも負けてないわ!ティアちゃんの垂れてる髪を結い直してる!」
「あのガキ共!!」

興奮するギルバートとアニー。だが、2人の興奮の種類は勿論違う。

「………それにしても、ティアはいつ見ても可愛いなぁ」
「うちのクリスは、今日も天使だわぁ~」
「僕のノアも可愛いよ~」

「「………ん?」」

1つ増えた声。
不思議に思い、声の場所を見る。そこには、黒い長髪にルビーの様な赤い瞳。頭からは黒い羊の様な捻れた角が生えた黒い服を着た全身真っ黒の長身の男がいた。

「えっ!?」
「アーノルド!?」
「久し振り、ギルバート。昨日の手紙振りだね。アニーさんも相変わらず綺麗だねぇ」

ニコニコと笑いながら話す魔王アーノルド。

「何で此処にいるんだ?魔王城はいいのか?」

ギルバートが質問すると、アーノルドは顔を伏せ身体を震わす。

「………わけ無いじゃないか」
「ん?何て言ったんだ?」
小さくて聞こえなかったので、もう一度聞き返す。すると、バッとアーノルドが顔を上げる。その目には涙が溜まっていた。

「だがら!可愛い息子から離れられるわけ無いじゃないか!それなのにいつも通りに仕事なんて出来ないよ!離れている間に、僕の大切な息子にもしものことがあったらどうするのさ!」

そう語るアーノルドにアニーが冷静に問いかける。

「それで、本音は?」
「僕が大切な息子から離れるのが寂しい!!」

堂々と言い切ったアーノルド。
何処に、子供の後をついて行く親が居るのだ。

「分かる、分かるぞ」
「君なら分かってくれると思ってたよ!」

(いたわね)

娘に近付く為に、調査団に無理矢理入り込んできたこの国の勇者が。勇者がコレなのだ。魔王も同じであっても何ら不思議では無い。

(世界を取れるかも知れない強者が親バカ…)

盛り上がる2人の男達親バカを見て、アニーは深い溜息を吐いた。


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