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第2話
しおりを挟む2 微笑みの爆●天使
この人生における最初の衝撃は、見た目、穢れなど知らなそうな、いたいけな少女。その歳ばもいってない少女←(そう見えるだけで実際は1000年魔女)が自ら服を捲り上げおっぱいを晒す。
『プルン』『プルン』とたわわに実ったおっぱいが顔を出した。
ーーあんなに大きかったのになぁ……
「あぁん…割れちゃった」
目玉焼きの黄身が割れて悲しそうな声を出す母サリー。その胸はほぼ板で、あの頃の面影は見る影も無い。金髪、童顔、爆乳、エルフは期間限定だったらしい。
ーー惜しい事をした……
僕の視線に気が付いたのか…
「どこ見てんの?」
「トゥルクの視線はなんかいつもエッロいぞ!」
胸の前で手をクロスに交差するサリー。恥じらって見せるが、いやん♡なんて。その前になんとかしたら?
「そんな事気にする前に、その爆発した頭なんとかしたらど?」
「かっこいいでしよ?」
「ある意味ね」
母サリーの頭は爆発中だ。
そんなサリーはなんかちょっと変わってると言うか……抜けているというか……マイペースというか……自己中というか……ズレてるというか……僕とは多少{何か}に関しての価値観が合わない。
その{何か}ってなんだろな?って考えた事があるが、結局行き着く先は彼女の耳。種族だ。
サリーの耳は縦長でピンっと尖っている。
それは彼女がエルフである証なのだけれど、エルフという種族自体が絶滅危惧種に近い為他のエルフを見た事がない。
エルフって皆んなこんな感じなのだろうか?
ちなみに僕は人間だ。
髪は黒いし、耳も小さい。
エルフと人の違いって何?
耳が長いか長く無いか?
いやいや……そんなんじゃない。
もっと根底的に違うんだ。
エルフの母を持ちながら、僕は普通の人間だ。普通と言えば普通だが、普通じゃないと言えば普通じゃない。それは僕が前世の記憶を持っているからで、その他はただの普通の人間だという事。
「フフフ」と笑う。
微笑みの天使がいたら、今、僕の目の前に座っている人だろう。なんて。思わせる彼女は、ごくごく自然体に悠久の時の中を生きている。
「フフフ」と笑う。
母サリーはその長い人生の中で、28人の子供を産んだと聞いた事がある。ちなみに僕がその28人目なんだけど、その中で母と同じエルフの血を継いだ者は1人だと聞いた。
エルフは人との間に子を宿すが、そのほとんどが人間で、エルフがエルフを産む事はごく稀だとか。
エルフに比べ人の一生は限り無く短い。
精々生きて100年だ。
エルフからしてみれば、人の子なんてほんの僅な時間の中で成長し、歳を取り、そして死んで行く。
アクビが出る程のあっという間な時間の中で、精一杯その生を駆け抜けて行くのだ。そして、悲しい事に僕もその中の1人。
ただ、良い事だってある。
それは僕が前世の記憶を持っているという事。
鼻垂れの木の棒なんかを振り回して、
「やれ!剣士ごっこ」だ。とか…
おままごとのように泥団子を作って、
「はい!どうぞ。召し上がれ?」とか…
そういう子供じみた時代をワープする如く、僕はサリーとの時間を有意義に使えているのだ。
「サリー。朝ご飯食べ終わったらさ、僕が新しく編み出した、多重構造魔法陣について聞きたい事があるからさ。研究室に顔出してよ!」
「へーー。多重魔法陣か……トゥルクはまた変な事を考えてるね?」
「変な事って…」
「昔、私も多重魔法陣にハマった事があったけど、あれはあんまり良いもんじゃ無いよ」
『パチンッ』と僕は指を鳴らし、
「いいから、いいから」
「サリーもきっと面白いって思うはずだからさ」
そう言い残し、僕は研究室へ向かおうとしたが、もう一度キッチンへと戻り、キッチンなだけにキチンと言い忘れた事をサリーに伝える。
「後片付けはちゃんとする事!」
「お皿は洗ったら乾燥魔法をかけて棚に戻す事!」
「食べっぱなしはダメだからね!以上!」
「……はーーい」
と、気怠そうに応えるサリー。
その頭は寝起きの時と同様に、相変わらず逆立っていて爆発していた。
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