ちょっとハッとする話

狼少年

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怖さの話

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      これは記憶だ。

年々と、歳を取って行くに連れて、怖いと思っていた事が。
あまり怖く無くなって行く。
保育園の頃、床間の仏壇が怖かった。
特に夜。
台所から真っ直ぐ伸びた廊下の奥に床の間があり、仏壇があるのだが、夕食の際に、離れの祖父母を呼びに行く時はとても怖かった。

中学生の頃、夜水分を取りすぎて、
ジュースやコーラだ。
美味しいよね。夏の夜。
パッと目が開いた。
時計を見ると、ちょうど午前2時を指す針に、トイレを我慢して寝ようと思った。
階段を降りて、トイレまで行くのが怖いから。
丁度2時に目が覚めるなんて、
なんか怖い。

高校生の頃、友達と肝試し大会をした。
場所は近くの集団墓地を一周するってコース。
懐中電灯の頼りない灯りを手に、昼間に主催の友達が用意しておいたリボンを取って来るって事だって。

うん。怖い。
だって1人だし。
皆んな1人ずつだし。
案の定……途中で引き返して、ビビりのレッテルを貼られた。
怖いものは怖いんだ。

大学生の頃、祖母が亡くなった。
祖父はもっと前に亡くなった。うん。いつだっけ??そのくらいの記憶。
だから、その頃は死を理解できなかったという事。
大学生の頃、祖母が亡くなった。癌だった。
産まれて初めて見た死んだ人。
死体だ。
それもとても身近な人の死を目の当たりにして、怖さを覚えた。
そして悲しさも。
人はいつか死ぬのか。
頭では皆んなわかっていると思うが…
祖母の死を境に、死が身近に感じて、怖いと思った。

結婚して、子供が産まれた。
娘だ。
この子の成長を見るのが、とても、とても、楽しみで仕方無い。
そして、もし失う事などあったなら、生きていけないと思った。
命を変えてでも、守りたいと強く思った。

娘が成長して、思春期やら、反抗期になった。
臭い、キモい、近寄るな、洗濯物は別にして、話したく無い、……。
普段から浴びせられる悪たれ口に、立場も無いし、家に居る場所も無い。
あんなに可愛かった娘に怖さを感じた。

会社だけが自分の居場所だった。
若い頃はあんなに嫌だった仕事が楽しくて仕方が無い。
定年したらどうなってしまうのだろうか?
定年が怖くなった。
その頃には、昔怖った仏壇に向かって毎日念仏を唱えていた。
歳を取り近くなった小便に、夜中起こされる事も度々だが、怖くてトイレに行かないなんて事も無い。

妻に先立たれた。
それは定年を迎えて、これから2人でのんびり暮らそうかと思っていた矢先の事だった。

そうか。

なるほどな。

娘はたまに孫の顔を見せにやって来る。
あれほど毛嫌っていたのに、歳をとると丸くなるのだろう。体型と共に。

1人で暮らす家はとても広いのだ。

そうか。

なるほどな。

最近、あまり、死ぬのが怖く無い。















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