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俺の終わり
しおりを挟む残業で遅くなった俺が飛び乗ったのは最終電車だった。
終電の車内はガランとしていて、
俺以外に乗客は居ない。
疲れたと、長手椅子に腰を下ろす。
すると、目の前の席に4人組が座って来た。
(あれ?。。を、?乗客居たかな。。?)
ジロジロみるのは失礼だけれども、
しかし、いったい、どういう組み合わせだ?気になる俺は流し目の様に観察する事にした。
1人目は、恰幅のイイ中年男性。
咥えタバコに、止まる事を知らない貧乏揺すり。
色付きのメガネからは細い眉毛が、申し訳なそうにはみ出ていて、これまたチョンと、付け髭のような口髭が、ノリで貼り付けたみたいに生えている。
上下共、黒のスウェット姿で、
背中には龍の刺繍。
肩で風切るように周囲を威嚇しそうな風貌は、誰がどう見てもチンピラにしか見えない。
2人目は、セーラー服姿の女子高生だ。
茶髪でセミロングの髪はクルクルに巻かれている。腕にはジャラジャラと色とりどりな腕輪を身に付け、首から下げたガラケーはビーズでビッシリとデコレーションされていた。
顔面に至っては、ケバケバしい化粧でまるでパンダみたいだ。
所謂娘ギャルという奴か。ルーズソックスを履き、パンツまで見えそうなスカートの丈。
茶色く健康的??に焼けた太腿からパンツがチラチラと見え隠れして目のやり場に困る。
3人目はガリガリに痩せ細った老人だ。
病院の患者衣からは、今にも折れそうな、骨と皮だけの手足が伸びている。
痩せこけた顔からは頬骨が飛び出し、剃り忘れた薄い白ひげに、ツンツルテンの頭皮。
歯がないのか、口回りのシワが中心に向かって集まっていて、おちょぼ口のように見えた。
そして4人目はセールスレディー風にビシッとスーツを来た20代の女性だ。
髪はキッチリと纏められており、鼻筋の通った綺麗な顔は、化粧などしていないように見える。
肩からかけた大きめの黒のトートバッグを膝に乗せ。
背筋を伸ばし、俺の真向かいに座っている。
ふと、その女性と目が合い。俺は慌てて目を逸らした。
少しばかり、ジロジロ見過ぎたか。
気まずい俺は電車の窓の外に視線を送る。
電車の窓からは流れて行く家家の明かり。
あの光一つ一つに俺の知らない誰かが、
今日も色々な思いの中暮らしている。
何か不思議な感じがした。。。
それはどっちにもだ。
窓の外の景色にも……
窓に映り込む人影にも……
………ん???
視線を車内へと戻す。
あれ??
目の前には、中年の男、娘ギャル、痩せ細った老人、そしてスーツの女性。
もう一度窓に映る人影を確認するが、
そこに映っているのは、スーツの女性だけだ。
ゾゾっと背筋が凍る……
それは何かを感じたからか??
後ろの気配。。
俺の後頭部に刺さる視線……
振り返る??振り返るべきなのか??
迷う…
迷う…
迷うが俺は振り向いた。
そこには俺を恨めしそうに見つめる、3人の視線……
ビックリして座席から滑り落ちる俺に、
「あら。。ごめんなさいませ。。
貴方もしかしたら生きてます??」
とスーツの女性は俺に言う。
俺はコクコク頷くと、
女性は徐に大きな黒のトートーバックから青いファイルを取り出すし、
「貴方お名前は?」と俺に聞いてきた。
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「佐野……佐野……佐野隆史と。。。」
女性はペラペラとファイルを捲る。
「あら!!すいませんね。。
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頑張って生きて下さい。。」
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電車のアナウンスが車内に響いた。
ーー20年後ーー
「またお会いしましたね。。」
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「貴方お名前は??」
俺は笑って答えた。
「佐野隆史です」
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