ちょっとハッとする話

碧の湖

綺麗な綺麗な　さぞも綺麗な　真ん丸お月様が、今日も出ている夜でした。
青白い小さな湖にお月様が反射します。その湖の畔に、これまた小さな人が住んでいました。
なんでも願いを叶えてくれる小人だそうで、
小さな湖の周囲には、連日連夜大勢の人が押し寄せています。

 「君の夢はなんだい？」
畔の側の朽ち果てた切り株の上で、ピョンと飛び跳ねてみせた。
手のひらサイズの小人が言った。

男は言います。
「金持ちになりたい」

「そうか、そうか、わかったよ」
小人はもう一度ピョンと今度は宙返り。

                  「働けば？？」

男はガクッと肩を落として消えていきました。
　　　　　　
　　　　　「次！！！」

女は言います。
「綺麗になりたい」

「そうか、なるほど、不細工だもんね」
小人は女の顔を覗き込んで、プッと笑った。

　　　　「整形したら？？」

女はフンッと怒って消えていきました。

　　　　　　「次！！！」

少女は言います。
「友達が欲しい」

「そうか、でもそれはそうだな、なるほど」
　　と、根暗そうな少女に
小人はクルッと一回転。後スタッと止まってみせた。

　　　　「性格変えたら？？」
                
少女はうるっと目頭に涙を溜めて消えていきました。

　　　　　「次！！！」

白ひげの老人は言います。
「まだまだ長生きしたい」

「あらま、それは大変だ、
　死んでも尚と言うのなら、人の記憶の中にだけ、永劫不滅はあるけどね」
小人はニヤッと笑って、惚けてみせた。

　　　　「自伝でも書いたら？？」

白ひげの老人はワハハそりゃあイイと笑いながら消えていきました。

　　　　「次！！！」

消えて行った魂達は、青白い湖の湖畔に現れて、
真ん丸なお月様へ
フワフワと吸い寄せられていきます。

　　　　「次！！！」
　　　　「次！！！」
　　　　「次！！！」
               「次！！！」

人の強欲はとどまる事を知りません。
次の人生、生まれ変わったら、こうなりたい、あぁなりたいと、願いを……想いを……
夢を馳せます。

今日も小人が住む碧の湖の畔には、生まれ変わりを信じた、沢山の人達の魂が、

次を夢見て押し寄せてます。