ちょっとハッとする話

狼少年

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我が実家の守り神 

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一昨年の盆休みの事です。私は婚約者の彼女を乗せて実家に帰省する為に車を走らせていました。
実家は私の家からは簡単に帰れる距離では無く久しぶりの帰省となり、彼女を紹介するのは初めてになります。彼女はかなり緊張気味に助手席に座っていました。そういう私も緊張していたのですが。
実家には祖父母、両親、両親と同居している兄夫婦、その子供の甥と姪、大学生の妹、そして飼い猫のタロ、全員集合で私達の帰りを待っていました。

「ただいま」

最初に出迎えてくれたのはタロ、バタバタと甥と姪、次に妹、その後両親、兄夫婦と続き最後尾に祖父母。

「おかえりなさい」

私は彼女を紹介します。

「えっと……婚約者の美香さんです」

「初めまして、美香と言います。宜しくお願いします」

震える彼女の声を聞き、

「これはこれは遠い所をさぁ、さぁ、どうぞどうぞ」
と父と母、ニンマリ笑う甥と姪、その後ろで兄夫婦、へーーと妹、影に隠れている祖父母、その中を私達はリビングに通されました。

私達がリビングに座ると、テーブルの向かいに父と兄、キッチンには母と義理姉、カウンターの前に妹、ソファーにちょこんと祖父母、甥と姪の姿は何処に行ったのでしょうか?見当たりません。

改めて挨拶を済まして、一通り談笑し、私も彼女も緊張がほぐれた頃。

「あれあの子達何処行った?」と義理姉。兄が名前を呼ぶと、
「待って今持って行く」と甥と姪、
「きっとアレ持って来るんだな」と父、
「あー」と妹、
「気味が悪い」と母、
話に付いていけてない祖父母、
何の事だかわからない私と彼女。
現れたのは金魚鉢を持った甥とそれを持てずに拗ねている姪。

「ねーねー見て見て」と甥が金魚鉢を近付けてきます。

私はそれを見てギョッとしました。金魚鉢の中には見た事も無い金魚が泳いでいます。

ブクブクと太った真っ赤な胴部、それに見合わない小さな尾ビレ、背びれは無く、胸ビレと尻びれがまるで手足の様にチョンチョンと4つ付いていました。更に驚いたのが頭部です。ゴツゴツと盛り上がった吻(額)、眼隔域は極端に狭く、口裂はエラ近くまで裂け、その歯は金魚なのか?と思うくらいに鋭く尖っています。

私は驚き少したじろぎました。

そんな私を見て甥がケラケラと笑います。
甥は調子に乗り彼女にも金魚鉢を
「見て見て」と差し出しました。

するとその金魚は彼女の方をじっと見てニヤニヤと笑っているではないですか。

彼女はビックリし、「ギャーーーー」と悲鳴をあげてのけ反ります。それにまたビックリした甥が誤って金魚鉢を床に落としていまい、

「ガッシャーーン」

もうリビングは水浸し、その場にいた全員がてんやわんやになった訳ですが……
すぐにその場から動けなくなります。
何故かって?聞こえたからですよ。




「おい!!早く!!水の中に戻せ!!苦しいじゃねーか!!」
って

見るとそこにはピチピチと跳ねる一匹の金魚が……誰もその場から動けずにいると、

「ニャーー」とタロ、

金魚をパクッと咥えて廊下の奥へと消えていきました。
私達はその光景を目で追うだけ。
誰も怖くて追いかけれません。



後から聞いた話ですが…あの金魚は今年の縁日に甥が祖父母に買って貰った物で、その時は普通の金魚だったみたいです。

あれから私達は無事に結婚し、今妻のお腹には新しい命が宿っています。あの金魚は何だったのか?結局はわからずじまいになってしまった訳ですが……
金魚を連れ去ったタロはというと、相も変わらず元気に実家で過ごしています。今頃は呑気に大好きな縁側でお昼寝でもしている事でしょう。






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