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第1章 犯罪カウンセラー File 1
2話 DNA鑑定
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「DNA鑑定の結果が出ました。あなたは、紗奈さんだったんですね。驚きました。」
「だから、そう言っているじゃない。」
「そこで、お聞きしたいのですが、先日の話しだと、紗奈さんが、一香さんになり変わったのは、手っ取り早いということでしたが、彼を奪うためだったら、一香さんを殺すより、彼に告白して、一香さんから彼を奪い取る方が簡単じゃないですか? あなたの大学の頃の写真を拝見したら、美人だったから、男性からすごい人気だったでしょう。」
「そんなこと言っているから凡人なのよ。一香はメス豚なのに、隆一をたぶらかして付き合っていたから成敗してあげたの。この世の害は取り除かないとダメでしょ。」
「どういうところがメス豚なんですか?」
この時、患者の目は吊り上がり、私を睨みつけた。光の加減で、口が裂けたようにも見え、恐怖感で私の体はすくみ、時間は止まった。
やはり、一香さんに、強い蔑視、敵対心がある。私は、その突き刺す視線に気づかないふりをして話しを続けた。そうすると、しばらくの沈黙のあと、患者は話し始めた。
「それは、女の体を使って男をたぶらかして付き合っているところ。穢らわしいわよね。ああ、気持ち悪い。隆一も穢れちゃって、かわいそう。」
「そういう現場を見て、そう判断されたんですか?」
「そりゃ、一香は、そんなことでもしないと隆一の気をひけない女だもの。」
言い方は冷たく、言い放つ喋り方だ。また、思い込みが強い。そうかもと思っていると、いつの間にかそれが事実だと思い込んでしまう、こういう患者は多い。
また、一香さんへの敵対心は、尋常じゃない。一香という言葉を言うたびに、上から下を向いて、唾を吐きつけるような仕草でしゃべっている。
「そうなんですか。ところで、お父さんに娘は生きているって言わなくていいですか?」
「今更、そんなことはしないわ。だって、娘が殺人犯となるんだったら、死んでいる方が、ましだと思うし。」
「じゃあ、私からは言いません。でも、ライバルの顔に整形するなんて、気分は良くなったでしょう。彼が一香さんを見ているとか、嫉妬しないですか。」
「体なんて箱に過ぎないのよ。私は、どんな顔になっても、体になっても、隆一から愛されていて、幸せだったわ。イヤリングとかで飾るのと同じで、イヤリングに嫉妬なんてしないでしょ。」
最近、ネットで生活している感覚の人が増え、リアルの世界での肉体はどうでもいいと思っている人が増えている。そういったケースでは、現実の罪悪感が失われるケースも多い。この患者も、そうなのかもしれない。でも、それだけじゃなくて、心の中に強い攻撃性を感じる。
「そうかもしれませんね。ところで、一香さんを殺害した時、その顔をみて何か感じましたか。」
「そりゃ、一香は私のこと知らないんだから、何が起こったのという顔してて、笑っちゃったわ。」
「結局、一香さんが邪魔で殺害したということですよね。」
「そうかもね。私は隆一が欲しくて、ずっと、一香が邪魔だった。殺して、よかったと思ってるわ。」
やはり、罪悪感は全くないようだ。人を殺害して、何が悪いのかを理解していない。というよりも、一香さんや刑務官は、自分と同じ人間とは思っていないのだろう。
「彼のどこが、そんなに好きだったんですか?」
「見た時から、この人だと直感で思ったの。彼はイケメンで、女性には、いつも紳士で優しく何でもしてくれるし、いつも相手のことばかり考えている。それでも、仕事で多くの成果を出して、本当に満点の人なのよ。今思えば、遅かったけど、私が初めて付き合った人だったのよね。」
「心から憧れていたんですね。でも、それまでに付き合ったことはなかったんですか。」
「私は、中学まで男性だったから、男性とは付き合えなかったし。」
「だから、そう言っているじゃない。」
「そこで、お聞きしたいのですが、先日の話しだと、紗奈さんが、一香さんになり変わったのは、手っ取り早いということでしたが、彼を奪うためだったら、一香さんを殺すより、彼に告白して、一香さんから彼を奪い取る方が簡単じゃないですか? あなたの大学の頃の写真を拝見したら、美人だったから、男性からすごい人気だったでしょう。」
「そんなこと言っているから凡人なのよ。一香はメス豚なのに、隆一をたぶらかして付き合っていたから成敗してあげたの。この世の害は取り除かないとダメでしょ。」
「どういうところがメス豚なんですか?」
この時、患者の目は吊り上がり、私を睨みつけた。光の加減で、口が裂けたようにも見え、恐怖感で私の体はすくみ、時間は止まった。
やはり、一香さんに、強い蔑視、敵対心がある。私は、その突き刺す視線に気づかないふりをして話しを続けた。そうすると、しばらくの沈黙のあと、患者は話し始めた。
「それは、女の体を使って男をたぶらかして付き合っているところ。穢らわしいわよね。ああ、気持ち悪い。隆一も穢れちゃって、かわいそう。」
「そういう現場を見て、そう判断されたんですか?」
「そりゃ、一香は、そんなことでもしないと隆一の気をひけない女だもの。」
言い方は冷たく、言い放つ喋り方だ。また、思い込みが強い。そうかもと思っていると、いつの間にかそれが事実だと思い込んでしまう、こういう患者は多い。
また、一香さんへの敵対心は、尋常じゃない。一香という言葉を言うたびに、上から下を向いて、唾を吐きつけるような仕草でしゃべっている。
「そうなんですか。ところで、お父さんに娘は生きているって言わなくていいですか?」
「今更、そんなことはしないわ。だって、娘が殺人犯となるんだったら、死んでいる方が、ましだと思うし。」
「じゃあ、私からは言いません。でも、ライバルの顔に整形するなんて、気分は良くなったでしょう。彼が一香さんを見ているとか、嫉妬しないですか。」
「体なんて箱に過ぎないのよ。私は、どんな顔になっても、体になっても、隆一から愛されていて、幸せだったわ。イヤリングとかで飾るのと同じで、イヤリングに嫉妬なんてしないでしょ。」
最近、ネットで生活している感覚の人が増え、リアルの世界での肉体はどうでもいいと思っている人が増えている。そういったケースでは、現実の罪悪感が失われるケースも多い。この患者も、そうなのかもしれない。でも、それだけじゃなくて、心の中に強い攻撃性を感じる。
「そうかもしれませんね。ところで、一香さんを殺害した時、その顔をみて何か感じましたか。」
「そりゃ、一香は私のこと知らないんだから、何が起こったのという顔してて、笑っちゃったわ。」
「結局、一香さんが邪魔で殺害したということですよね。」
「そうかもね。私は隆一が欲しくて、ずっと、一香が邪魔だった。殺して、よかったと思ってるわ。」
やはり、罪悪感は全くないようだ。人を殺害して、何が悪いのかを理解していない。というよりも、一香さんや刑務官は、自分と同じ人間とは思っていないのだろう。
「彼のどこが、そんなに好きだったんですか?」
「見た時から、この人だと直感で思ったの。彼はイケメンで、女性には、いつも紳士で優しく何でもしてくれるし、いつも相手のことばかり考えている。それでも、仕事で多くの成果を出して、本当に満点の人なのよ。今思えば、遅かったけど、私が初めて付き合った人だったのよね。」
「心から憧れていたんですね。でも、それまでに付き合ったことはなかったんですか。」
「私は、中学まで男性だったから、男性とは付き合えなかったし。」
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