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10話 結婚式
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私は、高校を卒業し、大学に入った。莉菜には、私となんかじゃなく、誰か、きちんとした男性と付き合って欲しくて、高校を卒業してから少し距離を置いたの。高校で一緒に過ごした2年半で、だいぶ、莉菜の心は落ちついたように見えたから。
そして、風の噂で、新しい彼ができたと聞いて、半年ぐらい経った今日、結婚式に招待された。
私は、1人で結婚式に、元生徒ということで参加した。高校の先生や生徒が私しかいなかったというのは、高校で、莉菜はずっと1人で寂しい時間を過ごしていたということなんだと思う。私も少しは、気を紛らわせることができたのよね。
彼をみると、なんか、昔の私と似ている気がしたのは気のせいかしら。彼は、自分のことなんて全く気にせず、ずっと莉菜の世話をしていたし、ずっと莉菜の顔を見て微笑んでいた。
莉菜も、彼の笑顔に応え、時々、つんつんと彼の肩を指でつつき、あどけなく笑っているところは、とても微笑ましかったわ。
これで、莉菜も幸せに過ごせるのね。良かった。莉菜のように素敵な女性は、もっと幸せにならないと。どこで知り合ったかは知らないけど、良い彼を見つけたと思う。彼には、莉菜をずっと大切にしてもらわないと。
そう、莉菜に子供ができて、彼と一緒に子育をして、暖かい家庭を作る。そして、おばあちゃんになっても、暖かい日差しのもとで、楽しそうにしている孫たちに囲まれる日々。そんな生活を送ってほしい。
彼が先に亡くなるんじゃなくて、莉菜がこの世を去る時も、彼が、優しく手をとって最後まで笑顔で包み込む。明るくて、暖かい日の光が、最後まで莉菜を照らし、寒さも感じずに、最後まで幸せいっぱいの時間を過ごして欲しい。
そんなことを考えていると、教会で音楽とともに、彼の元に莉菜はお父さんと赤い絨毯を歩いてきた。
真っ白なスカートが風にたなびき、肩があいて、綺麗な鎖骨を見せたウェディングドレスは莉菜の清楚さを象徴していたわ。ウェディングベールも、これまでの苦悩を洗い流してくれているように見えた。
ステンドグラスから漏れる陽の光が莉菜にあたり、真っ白なところと、影になっているところがくっきりと別れていて、これまでの莉菜の心を表しているようね。これから、全てが真っ白でキラキラする莉菜になってね。
彼の元に着いて、少しよろけてしまった莉菜だったけど、彼がしっかり受け止めてくれた。そう、彼がこれからは支えて、幸せに生きていくのね。私は、ここまで。
披露宴会場に来て、場違いかとは思ったんだけど、弟さんの横、家族が座るテーブルに私の席はあった。多分、一人で寂しく座らせないようにしてくれたのね。そして、莉菜にとって、私は、とても大切な人だと思ってくれたんだと思う。だから、私はスピーチをお願いされた。何を話そう。とっても親しくしてくれた先生だったとか。そんなこと言っても、莉菜の心には残らないスピーチになっちゃうわね。
そして、私の順番が回ってきた。
「私は、女子校時代に、莉菜先生の生徒で、大変、お世話になりました。でも、本当は、もっと昔から、知っていたんです。実は、私は、もと男性で、その時に莉菜先生と付き合っていました。その後、事故で脳の移植をして、女性として生きることになりましたが、もう男性じゃなくなったので、莉菜先生には、私は死んだと伝えてもらいました。それで、高校で再会した莉菜先生は本当に心を病んでしまったように見えたんです。それから、ずっと莉菜先生の横で励ましてきましたが、今日は、こんな素敵な方と結婚することができて、本当に嬉しいです。これから、お幸せにお過ごしください。」
莉菜が困惑の顔色になり、急に立ち上がった。
「あなたが、誠一だったの? どうして、これまで言ってくれなかったの? これまでだって、言う機会なんて、いっぱいあったじゃない。ずっと黙っていたなんてひどい。私は、ずっと、あなたと暮らしたかった。あなたとわかったからには、もう結婚なんてできない。あなたが、どんな姿になっても、ずっと一緒にいるんだから。」
泣き崩れてしまう莉菜を目の前に、私は、何もすることができなかった。
「江本さん。では、次にスピーチをお願いします。」
いきなり声をかけられて、ふと我に戻った。そう、そんなことを言ったらどうなるだろうって自分の中で空想していただけ。このことは、最後まで莉菜にはいえないわね。
私は、寂しかった高校1年生の時に、暖かく見守ってくれたエピソードをいっぱい話して、その時の先生へのお礼と、彼には、とっても素敵な先生を、ずっと大切にしてくださいというお願いと、そして、今は私にも素敵な彼ができて楽しく過ごしているという嘘を伝えて、スピーチを終わりにした。さようなら、莉菜。
そして、風の噂で、新しい彼ができたと聞いて、半年ぐらい経った今日、結婚式に招待された。
私は、1人で結婚式に、元生徒ということで参加した。高校の先生や生徒が私しかいなかったというのは、高校で、莉菜はずっと1人で寂しい時間を過ごしていたということなんだと思う。私も少しは、気を紛らわせることができたのよね。
彼をみると、なんか、昔の私と似ている気がしたのは気のせいかしら。彼は、自分のことなんて全く気にせず、ずっと莉菜の世話をしていたし、ずっと莉菜の顔を見て微笑んでいた。
莉菜も、彼の笑顔に応え、時々、つんつんと彼の肩を指でつつき、あどけなく笑っているところは、とても微笑ましかったわ。
これで、莉菜も幸せに過ごせるのね。良かった。莉菜のように素敵な女性は、もっと幸せにならないと。どこで知り合ったかは知らないけど、良い彼を見つけたと思う。彼には、莉菜をずっと大切にしてもらわないと。
そう、莉菜に子供ができて、彼と一緒に子育をして、暖かい家庭を作る。そして、おばあちゃんになっても、暖かい日差しのもとで、楽しそうにしている孫たちに囲まれる日々。そんな生活を送ってほしい。
彼が先に亡くなるんじゃなくて、莉菜がこの世を去る時も、彼が、優しく手をとって最後まで笑顔で包み込む。明るくて、暖かい日の光が、最後まで莉菜を照らし、寒さも感じずに、最後まで幸せいっぱいの時間を過ごして欲しい。
そんなことを考えていると、教会で音楽とともに、彼の元に莉菜はお父さんと赤い絨毯を歩いてきた。
真っ白なスカートが風にたなびき、肩があいて、綺麗な鎖骨を見せたウェディングドレスは莉菜の清楚さを象徴していたわ。ウェディングベールも、これまでの苦悩を洗い流してくれているように見えた。
ステンドグラスから漏れる陽の光が莉菜にあたり、真っ白なところと、影になっているところがくっきりと別れていて、これまでの莉菜の心を表しているようね。これから、全てが真っ白でキラキラする莉菜になってね。
彼の元に着いて、少しよろけてしまった莉菜だったけど、彼がしっかり受け止めてくれた。そう、彼がこれからは支えて、幸せに生きていくのね。私は、ここまで。
披露宴会場に来て、場違いかとは思ったんだけど、弟さんの横、家族が座るテーブルに私の席はあった。多分、一人で寂しく座らせないようにしてくれたのね。そして、莉菜にとって、私は、とても大切な人だと思ってくれたんだと思う。だから、私はスピーチをお願いされた。何を話そう。とっても親しくしてくれた先生だったとか。そんなこと言っても、莉菜の心には残らないスピーチになっちゃうわね。
そして、私の順番が回ってきた。
「私は、女子校時代に、莉菜先生の生徒で、大変、お世話になりました。でも、本当は、もっと昔から、知っていたんです。実は、私は、もと男性で、その時に莉菜先生と付き合っていました。その後、事故で脳の移植をして、女性として生きることになりましたが、もう男性じゃなくなったので、莉菜先生には、私は死んだと伝えてもらいました。それで、高校で再会した莉菜先生は本当に心を病んでしまったように見えたんです。それから、ずっと莉菜先生の横で励ましてきましたが、今日は、こんな素敵な方と結婚することができて、本当に嬉しいです。これから、お幸せにお過ごしください。」
莉菜が困惑の顔色になり、急に立ち上がった。
「あなたが、誠一だったの? どうして、これまで言ってくれなかったの? これまでだって、言う機会なんて、いっぱいあったじゃない。ずっと黙っていたなんてひどい。私は、ずっと、あなたと暮らしたかった。あなたとわかったからには、もう結婚なんてできない。あなたが、どんな姿になっても、ずっと一緒にいるんだから。」
泣き崩れてしまう莉菜を目の前に、私は、何もすることができなかった。
「江本さん。では、次にスピーチをお願いします。」
いきなり声をかけられて、ふと我に戻った。そう、そんなことを言ったらどうなるだろうって自分の中で空想していただけ。このことは、最後まで莉菜にはいえないわね。
私は、寂しかった高校1年生の時に、暖かく見守ってくれたエピソードをいっぱい話して、その時の先生へのお礼と、彼には、とっても素敵な先生を、ずっと大切にしてくださいというお願いと、そして、今は私にも素敵な彼ができて楽しく過ごしているという嘘を伝えて、スピーチを終わりにした。さようなら、莉菜。
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今回は、とっても暖かい話で、雰囲気、変わりましたね。
泣いちゃった。
これからも、頑張ってください。