天才詐欺師は三度笑う

一宮 沙耶

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4話 政治家の死

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 伊藤所長から、仕事のオーダーが来た。
「悪い政治家がいて、この人を失脚させるために、あなたは、彼から性的暴行を受けたという事件を起こしましょう。もちろん、暴行を受けたり、エッチはしなくていいわ。あくまでも、その事件が起きたと社会的に思わせればいい。最初の仕事としては、ちょうどいいと思う。シナリオとか、この政治家の情報を渡しておくから、目を通して、イメージアップしておいて。その人と会う日時、場所は後で連絡するから。」
「わかりました。まずは、やってみます。」
「初めて人を騙すのは勇気がいると思うけど、1人でやれるシンプルな仕事だから、まずは実力を見せて。お手並拝見ね。」

 最初の役割は、選挙中の車で住民の方々に声をかける、いわゆるうぐいす嬢であった。ターゲットは、山梨県の衆議院議員選挙小選挙区第4区の立候補者で、私の履歴書とかは所長が用意してくれて、すんなり選挙事務所に入り込めた。今朝、皆さんには挨拶をしたが、とてもハキハキした、明るい女性を演じた。その後、数日に渡り選挙カーで、住民の皆様に挨拶をし、立候補者をよろしくと美しく透き通る声でご挨拶をした。

 その中で、立候補者には、お水とか事務所ではお茶とか、お菓子とかしょっちゅう持っていって、尊敬しています、本当に大変ですね、憧れていますなどと頻繁に声をかけ、胸の谷間とかもあえて見せながら、興味を引くようにした。さらに、ネクタイが曲がっていますとバストを近づけて直したり、通常のうぐいす嬢のボトムスはパンツなのをスカートにして、スラリとした足を見せた。やっぱり男ね。彼の目は私の体に釘付け。みられているのって、分かるものね。

 もちろん、周りには笑顔を振りまいたが、1人になった時、周りに人がいることを確認して、少し、困惑しているような表情も見せてみた。

 そんな中、数日経った、みんな帰ろうとしていた夜に立候補者から声をかけられた。
「佐々木さん、今日は、配布リーフレットの整理とか、お願いしたいことがあるんだけど、残業、お願いしてもいいかな。」
「もちろんです。」

 リーフレットを片付けて1時間ほど経った時に、立候補者が声をかけてきた。
「お腹も空いただろう。お弁当を用意したから、ビールでも飲みながら、一緒に食べよう。」
「ありがとうございます。では、コップを用意します。私は、お酒は弱いので、コップ1杯ぐらいしか飲めませんが。」
「もちろん、それでいいよ。さあ、食べよう。」

 選挙事務所のソファーに座りながら、缶ビールを彼のコップに注ぐのに、体をくっつけ、というよりバストが彼に当たるようにして注いだ。缶ビールを2本ぐらい飲んだ頃に、少しよろけて、彼の膝に倒れかかる仕草もしてみた。そのうち、彼は、やや酔っ払ったのか、俺はすごいんだ、これからも俺について来いとか声が大きくなってきたので、少しスカートの裾を上にずらし、ももを見せて擦り寄ってみた。

 そうすると、彼は、私のももに手をおいて、可愛い子だねと呟いた。
「きゃー。乱暴しないで。」
 私は、下着が見えるように、ブラウスのボタンを引き裂いて、道路に逃げ出した。もちろん、この時間に、事務所の前に警官が見回りをしていることを知ってのことよ。
「乱暴されたんです。」
 と泣きながら警官に助けを求めた。これをみた警官は、酔っ払った立候補者を現行犯逮捕することになった。私は、翌日、所長から紹介された週刊誌の記者に、性的暴力を立候補者からされて、さらに、日頃から、車の中でも、住民がいなくなると、横に座れと強要され、ももをさすらた、だけど口に出せなくて苦しかった、許せないとさめざめと泣く演技をした。

 これが、選挙中の性犯罪事件と大話題になり、もちろん、この立候補者は立候補資格を取り消されてしまった。それから、数日後、彼は自殺したと報道があった。

 自殺したのは後味が悪かったけど、ほのかは、期待の成果が出せたことに満足し、自分の部屋で祝杯をあげた。私の実力はこんなもんよって。
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