ブラックリスト /征服

一宮 沙耶

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第5章 宇宙人の再来

2話 ホロコースト

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今日は、この前、バーで一緒だった梨沙から山登りに誘われて高尾に来ていたの。
昔だったら断っていたけど、戦争の時に体力は付けたから、そんなに苦労はない。
今日のコースは、南高尾山陵で、結構、アップダウンはそれなりにある。

高尾駅から歩き始めた。
この辺は、まだ復興できておらず、高尾駅の周りは荒野という感じで雑草が生え放題だった。
東京から大阪まではリニアモーターカーが通っている。
その他に、東京から高尾、甲府、金沢と一部の路線は再開されていた。

少し山を登ると、視界が開ける場所に出た。遠くに、東京のビル群が薄っすらと見える。
昔と違うのは、そのビル群までは、荒野が広がっているということ。
ただ、3年の間に木々は広く育っていたから、目の前には緑色の風景が広がっていた。

陣馬山に来て、和田峠に降りてきた時だった。
轟音が響き渡った。なんだろう。
あわてて陣馬山を振り返ると、山頂から爆風が通り過ぎた。
山が、私達を爆風から守ってくれた。

スマホを見てみても、通信はできない。
私達は、道路に沿って高尾駅まで帰ることにした。
高尾駅に着いたときには夜になっていた。
これ以上は歩けなくて、梨沙とともに、その場で地面に眠り込んでしまっていた。

朝起きると、友人の頬にはドロがついていた。
昨晩は、ここで寝てしまったのね。
朝日を浴びた高尾駅は、レールと崩壊したホームだけで、駅の建物は跡形もなかった。
そして、多くの建物は倒壊していた。

ボロボロの服を着た人から声をかけられた。

「よく無事でしたね。」
「私達は、高尾にハイキングに来ていて、山が守ってくれたんです。何があったんですか?」
「私は八王子にいたので、直接見たわけではないんですが、東京駅に天空からまばゆい光が放たれたらしくて、きのこ雲が出たと思ったら爆風で飛ばされたんです。」
「また、宇宙人の攻撃ですか?」
「それしか考えられないですね。」
「で、東京はどんな感じなんですか?」
「全貌はわかりませんが、三鷹あたりまでは何もないらしいです。三鷹から八王子ぐらいまでは、ビルは倒壊し、瓦礫の山だと聞いています。八王子からは、いくつか建物は残っていますが、とても生きていける感じではなかったです。やっと、ここまで逃げてきたんですが、ここもかなり被害を受けていますね。ここからはどんな感じなのですか?」
「ここからは、高めの草木はなぎ倒されていますが、昔の姿はそれなりに残っています。おそらく、生きている人もたくさんいるんじゃないかと。」
「よかった。私は、藤野に親が住んでいるので、そちらに行こうと思っています。お二人もお気をつけて。」

私達は、高尾近辺にある廃屋で当面、暮らすことにした。
そして、1週間ぐらい過ぎた頃から、だんだん状況がわかってきたの。

東京は一撃で荒野となった。
でも、それで終わりではなかったの。
地域では、人食い虫が放たれたの。

それが孵化し、1日で100匹ぐらいの卵が産まれ、それが孵化する。
虫は人間が寝ている時に口から体内に入り、体内に卵を産み付ける。
そして、卵が孵化すると、急に体を食いちぎり外に出てくる。

それまで、虫が体内に入った人は、本人も全く気づかずに過ごすの。
だから、周りの人も全く普通に一緒にいるでしょう。
でも、ある日、周りに人がいる中で、急に体中から血が吹き出し、虫がわいて出てくる。

虫は体から出ると羽でどこかに飛んでいき、捕まえられない。
そして、夜に人の口に入る。
こうして、地域の人達は急激に減っていった。

都市は一気に、地方は地道に1人残らず殺す方法だったんだと思う。

虫は小さく、早く飛ぶので、ビルに逃げても、車に乗っていても、いつでも入ってくる。
10Kmぐらいは普通に飛べるらしいから、山中でも集落から集落へと広がっていく。

バーナーで焼こうと思っても、小さく、飛んでいてターゲットが定まらないから殺せない。
防護服とかを着ていても、衣服を破ってくるのか、どこからか入ってきてしまうらしい。

体内にいる時に、その人ごと焼くということも考えられたらしい。
だけど、まず、誰の体にいるのか特定できず、殺せない。
また、分かっても、さっきまで一緒だった人を焼くことに躊躇いがあった。
人の心情をたくみについてくる。

これで、1ヶ月後には、私達のように都市と地方の間にいる人以外は駆逐されてしまった。
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