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第4章 征服と反撃
1話 彗星
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あの戦いから平穏な1年が訪れた。
もちろん、復興のための作業は多かった。
崩されたコンクリート壁を取り払ったり、燃えた家を崩したり。
そして、仮設住居を作り、生き残った人たちが暮らす場所を作った。
カプセルに捕獲され、血を抜かれていた人たちも助け出した。
過酷な戦闘時期等は覚えていない人が多かった。
また、長期間寝たきりで筋力が衰え、日常生活に戻るまでに多くの時間を要した。
でも、誰もが平穏な時間を取り戻すことができたの。
また、安心して夜寝れる日々は本当に心が落ち着けた。
親と木村さんは亡くなったけど、そのおかげで助かった私の命。
でも、実は戦いは終わってなかった。
だって、地球を守っただけで、宇宙人の生活には何も攻撃できてなかったんだから。
しかも、リーダー達が暗殺され、私達の経験は乏しかった。
私達が無駄にのんびりと時間を過ごしている中、着々と私達の征服作戦が進められていた。
そして、私たちの悲劇は、あの彗星を見たときから始まったの。
みんなは、戦争を忘れ、穏やかな生活を送っていた。
私は、それを横目に、親と木村さんの死を悼み、部屋に閉じこもる日々を続けていた。
だから、気づかなかったけど、巨大彗星の天体ショーが見れると話題になっていたの。
ある日、寝ていると、周りで、車が衝突する音が聞こえた。
最近は見なくなっていた戦争の夢にうなされている自分がいた。
周りの爆破音で、そんな夢を見たのかもしれない。
久しぶりに家を出ると、日差しは眩しかった。
真っ白な目の前に、だんだん、周囲が見えてきた。
私に、同年齢の女性がすがってきたの。
「なにが起こったんだろう? 油断してたのかしら。」
「どういうこと?」
「昨日、巨大彗星の天体ショーがあったでしょう。」
「そうだったのね。」
「あなた、目は見えるの?」
「普通にね。」
「やっぱり、あの彗星が原因だったんだ。宇宙人の仕業だと思う。また、戦争が始まるかも。目が見えない私はすぐに殺されちゃう。」
「ごめん。よくわからない。順序立てて話して。」
「戦争前に一緒に大学に通っていて、それからずっと仲良くしている男女6人組がいて、一緒に暮らしていたの。そして、昨晩に夜空に巨大彗星が見えるってニュースが出てたから、みんなで大騒ぎしながら見てたの。そして、朝起きたら、みんなが目が見えないと大騒ぎになったというわけ。」
「巨大彗星って、どんな感じだったの?」
「彗星はここ半月ぐらいずっと夜空に見えていた。でも昨晩が一番大きく見えるって話題だったから、昨晩にパーティーを開こうとなったの。」
そう、彗星を見ることで目が見えなくなるとすれば、どう効率的に効果を出すのか?
ちょっとづつ見せれば途中でバレるから、まとめる方がいい。
そうでないと、途中で目が見えなくなる人が出て、みんなが警戒してしまう。
だから、最大の天体ショーまで引っ張ったのね。
そして、目が見えない人に近寄って捕獲し、カプセルホテルみたいなところで飼育する。
こういうシナリオなのだと思う。多分、多くの人が騙された。
「それでね。カラオケと大騒ぎをして3時を迎えた頃、夜空の半分ぐらいが彗星の尾で、とても美しかったわ。その姿に感動して、6人は、しばらく夜空にみとれ、眠りについた。そして、だいぶ寝たはずなんだけど、周りはまだ真っ暗。しかも、部屋の電気もつかない。でも、暗いと言っても、普通は少しは明かりがあるでしょう。それもなくて、おかしいと思ったの。これは目が見えていないんじゃないかって、誰かが言い出したときには、もう遅かったわ。私たちは、どうしようもなく、その時の恐怖、失望、とても表現できないわ。」
「そうでしょうね。」
「人生の中で、こんな真っ暗な経験はなかった。夜の道を歩いていても、街灯とか何らかの光はあったもの。光が全くない暗闇が、こんなに怖いものだとは知らなかった。ただ、前に何があるのかわからず、生活に困るというレベルではない。私を殺そうとしている人が横にいても、全くわからない。どこかの部屋に拉致されても、逃げる方向もわからない。明るさを感じている人には分からないでしょう。」
「おちついて。今は大丈夫だから。」
「例えば、自分を殺そうとしている透明人間が、横で自分の頭のうえに透明のナイフを振り落とそうとしているというと分かるのかしら。しかも、単に光が全くない暗闇じゃない。夜の暗闇なら、朝になったらなくなる。でも、この暗闇は、ずっと続くのよね。将来が見えない不安が、更に怖さを増長させているの。」
「どうやって、外に出てきたの?」
「寝てた部屋は、いつもいるから、何がどこにあるかはわかる。それでも、テーブルの角につまづき、食器棚のガラスにぶつかり、手を切ってしまったわ。そして、ガラスの破片が床に飛び散ってしまったけど、掃除も難しい。真っ暗な恐怖、これからずっと目が見えないかもという不安に押しつぶされそうなの。これからも治らないとすると、どう暮らしていけばいいのかしら。」
「おちついて。」
相手の目は、通常と変わらず、目が見えないとは外からは分からない。
でも、話している最中に狂乱になり、手を付けられない状態だった。
急に目が見えなくなった。しかも、それは宇宙人が仕組んだことだから気持ちは分かる。
でも、今更、どうしようもない。
また、車が塀とか電柱に衝突するような音が聞こえた。
この子は寝て起きたときに暗闇だったけど、起きている途中に暗闇になる人もいるのかも。
部屋の外からは、何回も爆発するような音が聞こえていた。
「危ないから家に戻って。もしかしたら、時間とともに回復するかもしれないし。」
「私は、どうすればいいの? 助けてください。」
「まずは、あなたの家はどこ? そこまで連れて行くから。」
「小学校の前の緑色の家。」
「ああ、あそこね。近くだから、家まで連れて行ってあげる。そこで、休んでなさい。」
「ありがとう。」
この子の家は、ここから100mぐらい先だけど、よくここまで来られたわね。
この子の立場になってみると、個人宅の壁も、歩いてぶつかるだけで怪我をする。
普通にある周りのものが、すべて凶器になるなんて気づかなかった。
この子の家の近くに眼科があって、その入口は人で溢れていた。
当院では対応できないという看護師の声が響いている。
昨晩、彗星を見たのが原因じゃないか、まずは家で静かに過ごしてくださいと言っている。
でも、この子はもうだめね。また、この子の面倒を私がみてあげられるわけでもない。
いずれ宇宙人に捕らえられてしまう。
私は、家でテレビをつけると、混乱する報道席の声しか聞こえない。
カメラマンも、アナウンサーの方にカメラを向けられないのだと思う。
おそらく、この状態は私たちだけじゃない。
日本、もしかしたら世界中で起こっていることなのかもしれない。
この子を家まで送り、部屋の中で散乱したガラスの掃除をしてあげた。
彼女は、それらのことに感謝し、玄関の前で笑顔で私に手を振り続けていた。
私が自宅に戻ろうと3分程歩いたときだった。さっき家の方で大きな衝突音が聞こえた。
振り返ると、ダンプが、さっきの玄関に突進していた。
家とダンプの間に、さっきの子が挟まれて。
少なくとも、当面、夜は家の中に閉じ籠るしかない。
もちろん、復興のための作業は多かった。
崩されたコンクリート壁を取り払ったり、燃えた家を崩したり。
そして、仮設住居を作り、生き残った人たちが暮らす場所を作った。
カプセルに捕獲され、血を抜かれていた人たちも助け出した。
過酷な戦闘時期等は覚えていない人が多かった。
また、長期間寝たきりで筋力が衰え、日常生活に戻るまでに多くの時間を要した。
でも、誰もが平穏な時間を取り戻すことができたの。
また、安心して夜寝れる日々は本当に心が落ち着けた。
親と木村さんは亡くなったけど、そのおかげで助かった私の命。
でも、実は戦いは終わってなかった。
だって、地球を守っただけで、宇宙人の生活には何も攻撃できてなかったんだから。
しかも、リーダー達が暗殺され、私達の経験は乏しかった。
私達が無駄にのんびりと時間を過ごしている中、着々と私達の征服作戦が進められていた。
そして、私たちの悲劇は、あの彗星を見たときから始まったの。
みんなは、戦争を忘れ、穏やかな生活を送っていた。
私は、それを横目に、親と木村さんの死を悼み、部屋に閉じこもる日々を続けていた。
だから、気づかなかったけど、巨大彗星の天体ショーが見れると話題になっていたの。
ある日、寝ていると、周りで、車が衝突する音が聞こえた。
最近は見なくなっていた戦争の夢にうなされている自分がいた。
周りの爆破音で、そんな夢を見たのかもしれない。
久しぶりに家を出ると、日差しは眩しかった。
真っ白な目の前に、だんだん、周囲が見えてきた。
私に、同年齢の女性がすがってきたの。
「なにが起こったんだろう? 油断してたのかしら。」
「どういうこと?」
「昨日、巨大彗星の天体ショーがあったでしょう。」
「そうだったのね。」
「あなた、目は見えるの?」
「普通にね。」
「やっぱり、あの彗星が原因だったんだ。宇宙人の仕業だと思う。また、戦争が始まるかも。目が見えない私はすぐに殺されちゃう。」
「ごめん。よくわからない。順序立てて話して。」
「戦争前に一緒に大学に通っていて、それからずっと仲良くしている男女6人組がいて、一緒に暮らしていたの。そして、昨晩に夜空に巨大彗星が見えるってニュースが出てたから、みんなで大騒ぎしながら見てたの。そして、朝起きたら、みんなが目が見えないと大騒ぎになったというわけ。」
「巨大彗星って、どんな感じだったの?」
「彗星はここ半月ぐらいずっと夜空に見えていた。でも昨晩が一番大きく見えるって話題だったから、昨晩にパーティーを開こうとなったの。」
そう、彗星を見ることで目が見えなくなるとすれば、どう効率的に効果を出すのか?
ちょっとづつ見せれば途中でバレるから、まとめる方がいい。
そうでないと、途中で目が見えなくなる人が出て、みんなが警戒してしまう。
だから、最大の天体ショーまで引っ張ったのね。
そして、目が見えない人に近寄って捕獲し、カプセルホテルみたいなところで飼育する。
こういうシナリオなのだと思う。多分、多くの人が騙された。
「それでね。カラオケと大騒ぎをして3時を迎えた頃、夜空の半分ぐらいが彗星の尾で、とても美しかったわ。その姿に感動して、6人は、しばらく夜空にみとれ、眠りについた。そして、だいぶ寝たはずなんだけど、周りはまだ真っ暗。しかも、部屋の電気もつかない。でも、暗いと言っても、普通は少しは明かりがあるでしょう。それもなくて、おかしいと思ったの。これは目が見えていないんじゃないかって、誰かが言い出したときには、もう遅かったわ。私たちは、どうしようもなく、その時の恐怖、失望、とても表現できないわ。」
「そうでしょうね。」
「人生の中で、こんな真っ暗な経験はなかった。夜の道を歩いていても、街灯とか何らかの光はあったもの。光が全くない暗闇が、こんなに怖いものだとは知らなかった。ただ、前に何があるのかわからず、生活に困るというレベルではない。私を殺そうとしている人が横にいても、全くわからない。どこかの部屋に拉致されても、逃げる方向もわからない。明るさを感じている人には分からないでしょう。」
「おちついて。今は大丈夫だから。」
「例えば、自分を殺そうとしている透明人間が、横で自分の頭のうえに透明のナイフを振り落とそうとしているというと分かるのかしら。しかも、単に光が全くない暗闇じゃない。夜の暗闇なら、朝になったらなくなる。でも、この暗闇は、ずっと続くのよね。将来が見えない不安が、更に怖さを増長させているの。」
「どうやって、外に出てきたの?」
「寝てた部屋は、いつもいるから、何がどこにあるかはわかる。それでも、テーブルの角につまづき、食器棚のガラスにぶつかり、手を切ってしまったわ。そして、ガラスの破片が床に飛び散ってしまったけど、掃除も難しい。真っ暗な恐怖、これからずっと目が見えないかもという不安に押しつぶされそうなの。これからも治らないとすると、どう暮らしていけばいいのかしら。」
「おちついて。」
相手の目は、通常と変わらず、目が見えないとは外からは分からない。
でも、話している最中に狂乱になり、手を付けられない状態だった。
急に目が見えなくなった。しかも、それは宇宙人が仕組んだことだから気持ちは分かる。
でも、今更、どうしようもない。
また、車が塀とか電柱に衝突するような音が聞こえた。
この子は寝て起きたときに暗闇だったけど、起きている途中に暗闇になる人もいるのかも。
部屋の外からは、何回も爆発するような音が聞こえていた。
「危ないから家に戻って。もしかしたら、時間とともに回復するかもしれないし。」
「私は、どうすればいいの? 助けてください。」
「まずは、あなたの家はどこ? そこまで連れて行くから。」
「小学校の前の緑色の家。」
「ああ、あそこね。近くだから、家まで連れて行ってあげる。そこで、休んでなさい。」
「ありがとう。」
この子の家は、ここから100mぐらい先だけど、よくここまで来られたわね。
この子の立場になってみると、個人宅の壁も、歩いてぶつかるだけで怪我をする。
普通にある周りのものが、すべて凶器になるなんて気づかなかった。
この子の家の近くに眼科があって、その入口は人で溢れていた。
当院では対応できないという看護師の声が響いている。
昨晩、彗星を見たのが原因じゃないか、まずは家で静かに過ごしてくださいと言っている。
でも、この子はもうだめね。また、この子の面倒を私がみてあげられるわけでもない。
いずれ宇宙人に捕らえられてしまう。
私は、家でテレビをつけると、混乱する報道席の声しか聞こえない。
カメラマンも、アナウンサーの方にカメラを向けられないのだと思う。
おそらく、この状態は私たちだけじゃない。
日本、もしかしたら世界中で起こっていることなのかもしれない。
この子を家まで送り、部屋の中で散乱したガラスの掃除をしてあげた。
彼女は、それらのことに感謝し、玄関の前で笑顔で私に手を振り続けていた。
私が自宅に戻ろうと3分程歩いたときだった。さっき家の方で大きな衝突音が聞こえた。
振り返ると、ダンプが、さっきの玄関に突進していた。
家とダンプの間に、さっきの子が挟まれて。
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