ブラックリスト /征服

一宮 沙耶

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第3章 反撃

2話 防衛大臣

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先日、私の所にきた女子大生は私の研究所でアルバイトとして活動するようになった。
ところで、東京大殺戮はなんとしても防がなければならない。
杉田防衛大臣に、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の人々を避難させるべきと提言した。

「その未来が正しいとしても、大量殺戮があったのは東京なんだろう。大阪とかは攻撃されていないかもしれないんだよな。また、そんな予言的なことなんて信じてもらえないだろうし、信じられたらされたでパニックが起きる可能性も高い。」
「そう言っても、本当に起これば、大勢が死ぬんですよ。」
「だいたい、東京だけでも何人、居住者がいると思っているんだ? 大勢が死亡したといっても800万人もいるんだよ。どこに住む場所を用意するんだ。また、坂上さんの研究が正しいとすると、2%は人間の姿をした敵が、周りにいるんだよね。その人にバレたら失敗するじゃないか。」
「たしかに。」
「まずは、攻撃の日がわかれば、その前後だけ避難するというのが一番、いいかもしれない。急なら、敵にも情報は漏れにくいし。」
「さすが専門家ですね。ただ、攻撃の日は分からないんです。2025年9月の前だということぐらいしかわかりません。」
「未来から見て起きたことを変えることができるんだろうか? いずれにしても、あと1年しかないんだな。この件は私に預けて欲しい。」
「わかりました。」
「ところで、坂上さんから提案された武器は本当に使えるんだよな。秘密防衛費で秘密裏に生産しているが、ただのおもちゃだと私の責任を問われる。」
「大丈夫です。検証済ですから。」
「人間に向けても単なるペンライトのような感じなのが不安だが、そこまで言うなら。そろそろ次の会議があるので、失礼するよ。」
「今日は、ありがとうございました。」

私は、防衛省を出て、市ヶ谷の駅に向って歩いていた。
この辺も、最近は毎日38℃を超える猛暑だ。
半袖なのに、門を出たばかりで汗が吹き出す。

横の道を自動車が通り過ぎる。
駅の周りには、半分の人口が死亡していても、大勢の人々が行き交うのが見える。
今、発車した電車は、多くの人を運んでいる。

たしかに、線虫のせいで大勢が死んだが、まだ見える風景は平和だ。
こんなことを言うと不謹慎なのかもしれない。
でも、この東京に核のような爆弾が落とされ、荒野になるなんて信じられない。

ここにいる人たちは、熱風に飛ばされ、焼き尽くされる。
目の前の女性が焼かれ、ドクロだけになり、それも灰になる映像が脳内に浮かんだ。
電車で新宿の研究所に戻る中、どれだけの死体をイメージしただろうか。吐き気がする。

研究所では、アルバイトで働き始めた一ノ瀬さんが待っていた。

「所長、思い出したんですよ。」
「何を?」
「私がいたときが9月4日で、リーダーが「東京の攻撃は、今日でちょうど2ヶ月目だ」と言っていたので、攻撃は7月4日だと思います。なんでこんな重要なこと忘れてたんだろ。」
「それはグッドニュースだ。防衛大臣に伝えておこう。」
「また、全員を避難させようとしたけど、よくある予言だろうって信じる人が少なくて、避難できたのはごく僅かだったって。」
「そうなんだ。注意喚起の方法を考えないと。今日は、昔の上司から連絡があって、会うことにしているから、大臣には明日に伝える。ということで、今日は、そろそろ外出する。」
「お気をつけて。」

その後、あの河田にハメられ殺されそうになった。
河田が何をしたかったのか、今井本部長から情報を得て調べたが、結局分からなかった。
ただ、河田は宇宙人に思考がコントロールされているのは間違いないだろう。

そう思ったときだった。いきなり口に血が溢れた。
目の前が暗くなっていく。立ってられない。

私は、新宿の研究所から霞ヶ関に向かう途中の道で倒れた。
だれか救急車をと叫ぶ声が聞こえる。
もう、俺はだめだろう。河田が何かしたんだろう。

でも、宇宙人に俺の脳がコントロールされなかったのは良かった。
いや、コントロールされてないんだよな。コントロールされる前じゃないよな。
俺は、カバンに護身用として持っていたナイフで心臓を自分で突き刺した。
お前たちに、俺の体は渡さない。
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