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第3章 反撃

1話 動き出す

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私は、2つのことから活動を始めた。
1つ目は、親に未来について信じてもらい、山梨に別荘を買って移住すること。
2つ目は、政府に未来について信じてもらい、戦争への準備をする。

まず1つ目だけど、親は、全く信じてもらえなかった。当然よね。
でも、別荘は買ってもいいかもとなり、石和温泉の近くに買うことになった。
一応、お父さんはそれなりの資産家だから。

親は、昔山登りもしていて、一緒に来いと言われてしまったのは想定外だったけど。
でも、戦争になった後の訓練、体力作りにはいいかも。

そういえば最近、毎日、毎日1,000人を超える人が死亡しているとニュースで騒いでいる。
私の見てきた未来と関連があるのだろうか?
線虫? なんか私が戦った宇宙人の触角と表面や形が似ているような気がした。
のんびりしてられないのかもしれない。

だから、自衛隊に行って未来について語ったけど、これも全く信じてもらえなかった。
ただ、線虫研究所の坂上所長のところを紹介してもらった。線虫?
私は、新宿にある研究所の坂上所長を訪問することにしたの。

「未来の敵は、頭から、伸び縮みする触覚のようなものを2本でていて、お祭りのペーパーヨーヨーのようだったんだね。しかも、乗り物に足がはえていて、その先端は板状になったり、針のようになったりして動く。針になれば、地面に垂直に建っているビルもすいすい登れると。」

こんなことを、文系の女子高生がすらすらと言えるだろうか?
人間は車輪を発明し、輸送革命をもたらした。車輪は画期的なものだった。
ただ、欠点は、ある程度道路を整備しないと、車輪の能力は十分に発揮できない。

整備されているか分からない他の惑星を移動するなら、複数の足の方が便利だろう。
しかも、その足が伸び縮みするなら海でも移動ができる。
よく考えられている。

また、触覚がペーパーヨーヨーのようだって。あの線虫みたいじゃないか。
しかも、移動する道具の足が伸び縮みするというのも、この技術を使っているのだろう。
言っていることに一貫性がある。
違和感があるのは、未来を見てきたという所だけだ。

「人間が持っていた武器はビームを出すライフル銃みたいだったって。今、人間世界には、そのようなものは主流じゃないようだけど。しかも、その闘いは、あと1年後なんだろう。」
「そういえば、リーダーが弾丸ではあいつらは死なないと言っていたような。」

そういえば、線虫は針とかでは刺せず、物理的な力にはしなやかで強かった。
もしかしたら、光とかに弱いのかもしれない。
私は研究スタッフの岸本さんを呼んだ。

「岸本さん、線虫にいろいろな周波数の光をビーム状にして当ててくれ。もしかしたら、殺せるかもしれない。」
「わかりました。」
「一ノ瀬さん、お昼はたべましたか? ここの食堂、カレーなんかは安くて美味しいんです。調査がすぐにできるかはわかりませんが、1時間ぐらいで分かるかもしれません。それまでの時間つぶしにご一緒するのはどうかと思いまして。」
「いいですね。ではご一緒させてください。」
「では。」

1階にある食堂は、夏休みのせいか、閑散としていた。
だから、周りを気にせずに、さっきの話しを続けた。

「一ノ瀬さん、さっきの話だと、山梨のあたりで戦っていたということでしたが、今、あなたは東京に住んでいるのですよね。どうして、東京が戦場じゃないんですか?」
「これから1年後までの間は、よく分からないんですけど、その時のリーダーの話しだと、世界各国の主要都市は、宇宙人が核のようなものを投下して、大勢が死んだと言っていました。」
「そうなんだ。それは今、聞いても防げなかったのだろうか?」
「そうですよね。ところで、さっき言うのを忘れていたんですけど、あの触角、多分、口にもなっているんだと思うんですよ。」
「触角でしゃべるとか?」
「そうじゃなくて、殺された兵士に、その触角が伸びて、血を吸ってたんです。多分、あの宇宙人は、動物の血液で生きているんじゃないかと思いました。だから、人間を捕らえ、家畜のように育てて、血を抜き取るんじゃないかしら。」

俺は、線虫が脳内で血液を養分にして生きていたのと全く同じだと思った。
この女性が未来で見たと言っていることが正しい可能性が高い。

「でも、東京で大量殺戮をしたというと、少し矛盾しているかな?」
「そうなんですよね。未だに、よく分からなくて。でも、東京はだめだから、山梨に別荘を買って、いつでも東京を出れるようにしたんです。」
「すごい、行動力だね。さて、食べ終わったし、あれから1時間経つから部屋に戻ろう。」
「わかりました。」

3階の部屋に戻ると、さっき調査を依頼した岸本さんが興奮して私を待っていた。

「所長、やりました。600nmの電磁波の波長でレーザーを線虫に照射したところ、外皮をやぶり中の溶液が流れ出して殺すことができました。これまで、どうしてレーザーということに思いあたらなかったのでしょうかね。目からウロコですよ。」
「だから、未来では、レーザーの武器で戦っていたんだ。一ノ瀬さん、ありがとう。これで、人類は勝てるかもしれない。岸本さん、この情報を防衛省の杉田大臣に伝え、武器の大量生産をするように言ってくれ。反応が悪ければ、私に代わって欲しい。時間がない。」

私は、岸本さんに怒鳴っていた。

「一ノ瀬さん、本当に未来を見てきたんですね。どうですか? ここで働きませんか?」
「私にできることがありますかね? 線虫とか全く知りませんが。」
「まずは、未来で見てきて、今日、話しきれなかったことを教えてください。また、研究というのは、試験管にいろいろな液をいれて観察する等といった地道な活動ばかりで、知識がかならずしも不可欠とは言えません。もちろん、あった方がいいですが。決して、人手不足だから誰でもいいということではないんですよ。研究しながら、忘れていたことを思い出すかもしれない。さっきから聞いていて、あなたの着眼点は新鮮で面白いと感じたんですよ。」
「そこまでいうならわかりました。」
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