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第1章 前兆
5話 線虫の正体
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あの会食の後、あるニュースがでて、総理の暗殺のニュースですら陰が薄くなっていた。
毎日、1,000人を超える人が死んでいくというニュース。
なんの前触れもなく、突然、死亡者が急増したんだ。
そして、脳に線虫がいることが原因らしいという報道が出始めた。
俺は、人々が大勢死んでいく中で、営業部長を続けることに意味があるのか悩んだ。
大学生時代に、魚の中にいる線虫を研究していたことがあったからだ。
それなら、もっと世の中に役立てることがある。
そう思い、建設会社をやめ、線虫の研究機関に転職した。
大学の頃の知識と人不足もあり、3ヶ月でこの道の第一人者と言われるようになった。
もともと、こういう自分だけの世界でコツコツと研究する方が営業より自分に合っている。
これまでの研究について、全世界の各種機関を繋いだリモート会議が始まった。
俺は、全世界の研究者を前に、これまでの調査結果について説明を始めた。
「まず、これまで分かったことを整理しよう。まず、この線虫は、血液の中に存在していた0.1μmぐらいのロボットが筒状で、内部から巻かれた皮膚が伸びて長くなる、その後、血液から養分を吸って皮膚が厚くなっていく。この2つは同じものだったんだ。」
「昔、お祭りとかで遊んだペーパーヨーヨーみたいな構造なんですね。」
「そうだな。まず、驚くことが、最初は機械的構造物であるにもかかわらず、動物のように成長し、自分の意思をもって動くことだな。さらに、その線虫は血液の中を流れていき、というよりは泳いで行き、脳に集まってくる。そして、脳にある血液で更に長く成長し、皮膚も弾力がある厚みを得ていくんだ。現時点での人類の技術では、このような微細で精密なロボットを作る技術はないと思う。」
「これはまだ検証できていないが、どうも、この線虫は人間の思考をコントロールできるようだ。」
「最初の球状のときからずっと電波のようなものを月の方向に発していて、更に受信もしているらしい。これを踏まえると、人間の思考をコントロールできるということだと、月に基地を置いた、どこかの国か宇宙人が人間を支配しようとしている可能性が高い。」
「私も、その電波らしきものは認識できたが、内容は解析できなかった。相手側の言語を理解できていないんだと思う。」
「この現象は世界各国で発生していて、どの政府も困惑しているので、地球のどこかの国というわけではないだろう。宇宙から来た敵ではないか。」
「私も、その意見に賛成だ。」
参加している多くのメンバーの多くは、将来への不安からか、沈黙を続けていた。
「次に、この球状のロボットだが、空気感染で広がったと考えられている。現在、空中にこのロボットが浮遊していることが確認できている。そして、これに感染した人間は3種類に分かれ、日本では約48%が死亡、約2%が生存、約50%が感染せずという状況だ。これは人種によって違い、欧米人は8割が死亡とでている。なお、50%の感染せずは、この球状のロボットは一旦血液中には入ったにもかかわらず感染していないと考えるのが妥当だと考える。」
「死亡した主な原因は、体内で線虫が増えていく中でショック死に至ったものだと我々も結論に至った。」
今、生きている人は、基本は、今後とも感染することはないということだ。
その発表に、参加者の顔には安堵の表情が溢れる。
「そして、2%の人は、脳には線虫がいるが生存している。しかも、理由は不明だが、この2%は男性だけのようだ。そして、これは正確な検証ができていないが、どうも、思考がコントロールされているらしい。2%の人たちは、我々の横に普通の人間として存在していて、誰が、そうなのかは脳を開いてみるまでは分からない。この会場にもいるのかもしれない。レントゲン等でも見つけることは困難で、更に、脳から線虫を除いても、また脳内で繁殖し、きりがないことも検証済だ。」
「誰が、この球状のロボットを空中に撒いたかということは、まだ推測の域をでていないが、全世界で同じ状況であることを考えると、さっきも発言があったが、どこかの国ということではなく、別の惑星から来た宇宙人が我々を征服しようとしていると考えるのが妥当だろう。」
誰もが想像していた内容であったが、会場は沈黙で覆われた。
「どうして、映画みたいに、直接、攻撃とかしてこないんでしょうか?」
「よくわからないが、すでに、半分が死亡していることで、彼らの目的は達成しているのかもしれない。」
「いや、我々を大勢殺すことは望んでないのかもしれない。我々を食料源としてみているとか。ただ、その場合には、思いの外、我々の体がこの球状のロボットに弱く、人類の半分以上が死に絶えてしまった。また、半分は感染していない。これは相手にとって想定外だったということなのだろう。」
「人間の脳に入り込み、人間を操ることで、直接、手を下さずに自分のものにしようとしてるという、高度な征服方法とは言えるかもしれませんね。」
「2%の人は何をやっているんですかね。」
「それは、はっきりしていない。ただ、これまでも各国政府は月への調査団を送ろうとしたが、どういうことか、どのプランも実現することはなかった。スペースシャトルが爆発したり、パイロットが死亡したりとか。こういうところで2%の人が動いているのかもしれない。」
「で、今、打てる手は何があるんでしょうか。」
「残念だが、現時点では分からないことばかりで、打ち手を絞り込むことができない。人類の半分が生き残ったということが、我々の力だったということでもあるが。」
「じゃあ、これまでの研究はスタートラインに立っただけということじゃないですか。」
「いや、実態が分かっただけでも十分、意味がある。今後の、大戦争が準備されているとしても、少しは相手のことが分かっただけでも時間が稼げた。」
この会議の後、俺は、総理暗殺で逮捕された今井本部長が取調べ中に亡くなったと聞いた。
死亡解剖で、線虫のアレルギー反応が原因だったらしい。
ただ、弁護士によると、死亡直前に河田について話していたというのだ。
どうやら河田は、この2%の人で、コントロールされているらしい。
そして、佐藤総理の暗殺は、地球攻撃の一歩で河田がやったというのだ。
お土産の中に、昆虫型爆弾を忍び込ませたらしい。
そういえば、河田はお土産の袋の上で不自然に手を差し出してたのを思い出した。
それから羽が生えて後部座席を食いちぎり、トランクに入って爆破させたという。
そんなSFのような話しは信じがたいが、宇宙人なら、ありえるかもしれない。
さらに、この線虫を最初に発見した脳外科医の殺害にも関与しているらしいのだ。
どこから、そんな情報を得たのかは分からない。
でも、弁護士は、そう聞いて、ニュースソースを聞く前に死亡したと言っていた。
毎日、1,000人を超える人が死んでいくというニュース。
なんの前触れもなく、突然、死亡者が急増したんだ。
そして、脳に線虫がいることが原因らしいという報道が出始めた。
俺は、人々が大勢死んでいく中で、営業部長を続けることに意味があるのか悩んだ。
大学生時代に、魚の中にいる線虫を研究していたことがあったからだ。
それなら、もっと世の中に役立てることがある。
そう思い、建設会社をやめ、線虫の研究機関に転職した。
大学の頃の知識と人不足もあり、3ヶ月でこの道の第一人者と言われるようになった。
もともと、こういう自分だけの世界でコツコツと研究する方が営業より自分に合っている。
これまでの研究について、全世界の各種機関を繋いだリモート会議が始まった。
俺は、全世界の研究者を前に、これまでの調査結果について説明を始めた。
「まず、これまで分かったことを整理しよう。まず、この線虫は、血液の中に存在していた0.1μmぐらいのロボットが筒状で、内部から巻かれた皮膚が伸びて長くなる、その後、血液から養分を吸って皮膚が厚くなっていく。この2つは同じものだったんだ。」
「昔、お祭りとかで遊んだペーパーヨーヨーみたいな構造なんですね。」
「そうだな。まず、驚くことが、最初は機械的構造物であるにもかかわらず、動物のように成長し、自分の意思をもって動くことだな。さらに、その線虫は血液の中を流れていき、というよりは泳いで行き、脳に集まってくる。そして、脳にある血液で更に長く成長し、皮膚も弾力がある厚みを得ていくんだ。現時点での人類の技術では、このような微細で精密なロボットを作る技術はないと思う。」
「これはまだ検証できていないが、どうも、この線虫は人間の思考をコントロールできるようだ。」
「最初の球状のときからずっと電波のようなものを月の方向に発していて、更に受信もしているらしい。これを踏まえると、人間の思考をコントロールできるということだと、月に基地を置いた、どこかの国か宇宙人が人間を支配しようとしている可能性が高い。」
「私も、その電波らしきものは認識できたが、内容は解析できなかった。相手側の言語を理解できていないんだと思う。」
「この現象は世界各国で発生していて、どの政府も困惑しているので、地球のどこかの国というわけではないだろう。宇宙から来た敵ではないか。」
「私も、その意見に賛成だ。」
参加している多くのメンバーの多くは、将来への不安からか、沈黙を続けていた。
「次に、この球状のロボットだが、空気感染で広がったと考えられている。現在、空中にこのロボットが浮遊していることが確認できている。そして、これに感染した人間は3種類に分かれ、日本では約48%が死亡、約2%が生存、約50%が感染せずという状況だ。これは人種によって違い、欧米人は8割が死亡とでている。なお、50%の感染せずは、この球状のロボットは一旦血液中には入ったにもかかわらず感染していないと考えるのが妥当だと考える。」
「死亡した主な原因は、体内で線虫が増えていく中でショック死に至ったものだと我々も結論に至った。」
今、生きている人は、基本は、今後とも感染することはないということだ。
その発表に、参加者の顔には安堵の表情が溢れる。
「そして、2%の人は、脳には線虫がいるが生存している。しかも、理由は不明だが、この2%は男性だけのようだ。そして、これは正確な検証ができていないが、どうも、思考がコントロールされているらしい。2%の人たちは、我々の横に普通の人間として存在していて、誰が、そうなのかは脳を開いてみるまでは分からない。この会場にもいるのかもしれない。レントゲン等でも見つけることは困難で、更に、脳から線虫を除いても、また脳内で繁殖し、きりがないことも検証済だ。」
「誰が、この球状のロボットを空中に撒いたかということは、まだ推測の域をでていないが、全世界で同じ状況であることを考えると、さっきも発言があったが、どこかの国ということではなく、別の惑星から来た宇宙人が我々を征服しようとしていると考えるのが妥当だろう。」
誰もが想像していた内容であったが、会場は沈黙で覆われた。
「どうして、映画みたいに、直接、攻撃とかしてこないんでしょうか?」
「よくわからないが、すでに、半分が死亡していることで、彼らの目的は達成しているのかもしれない。」
「いや、我々を大勢殺すことは望んでないのかもしれない。我々を食料源としてみているとか。ただ、その場合には、思いの外、我々の体がこの球状のロボットに弱く、人類の半分以上が死に絶えてしまった。また、半分は感染していない。これは相手にとって想定外だったということなのだろう。」
「人間の脳に入り込み、人間を操ることで、直接、手を下さずに自分のものにしようとしてるという、高度な征服方法とは言えるかもしれませんね。」
「2%の人は何をやっているんですかね。」
「それは、はっきりしていない。ただ、これまでも各国政府は月への調査団を送ろうとしたが、どういうことか、どのプランも実現することはなかった。スペースシャトルが爆発したり、パイロットが死亡したりとか。こういうところで2%の人が動いているのかもしれない。」
「で、今、打てる手は何があるんでしょうか。」
「残念だが、現時点では分からないことばかりで、打ち手を絞り込むことができない。人類の半分が生き残ったということが、我々の力だったということでもあるが。」
「じゃあ、これまでの研究はスタートラインに立っただけということじゃないですか。」
「いや、実態が分かっただけでも十分、意味がある。今後の、大戦争が準備されているとしても、少しは相手のことが分かっただけでも時間が稼げた。」
この会議の後、俺は、総理暗殺で逮捕された今井本部長が取調べ中に亡くなったと聞いた。
死亡解剖で、線虫のアレルギー反応が原因だったらしい。
ただ、弁護士によると、死亡直前に河田について話していたというのだ。
どうやら河田は、この2%の人で、コントロールされているらしい。
そして、佐藤総理の暗殺は、地球攻撃の一歩で河田がやったというのだ。
お土産の中に、昆虫型爆弾を忍び込ませたらしい。
そういえば、河田はお土産の袋の上で不自然に手を差し出してたのを思い出した。
それから羽が生えて後部座席を食いちぎり、トランクに入って爆破させたという。
そんなSFのような話しは信じがたいが、宇宙人なら、ありえるかもしれない。
さらに、この線虫を最初に発見した脳外科医の殺害にも関与しているらしいのだ。
どこから、そんな情報を得たのかは分からない。
でも、弁護士は、そう聞いて、ニュースソースを聞く前に死亡したと言っていた。
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