レズビアンの裏アカ

一宮 沙耶

文字の大きさ
上 下
6 / 8

6話 温泉旅行

しおりを挟む
 温泉旅行って、凛からみるとかなり大胆な提案をしたんだと思うけど、当時の私は、女性同士の旅行気分で、特に深い考えもなく了解と返事をした。ただ、計画を作っていくと、単純な女性同士の旅行とは違うことに気づいた。

 まず、大阪とかのビジネスホテルと違い、こんなところにまできて温泉宿に泊まるのに、別々の部屋というのは違和感がある。また、行きたいと思ったホテルは、家族風呂とかあって、凛のこと誘った方がいいのか、誘わないのかも悩んでしまった。

 ただ、すでに約束してしまったし、考えても仕方がないので、まずは行って、そこで考えるしかなかった。

「12月22日から2泊、紅葉庵というところを予約したんだけど、お料理も美味しいと評判が高いから期待していてね。」
「ネットで調べてみるね。あ、これだ。温泉も綺麗な写真ばかりだし、部屋も素敵。お料理も人気が高そうね。楽しみ。」
「それで、部屋は1つなんだけど。」
「温泉宿で2つの部屋なんて、おかしいじゃない。当たり前よ。そんなこと気にしていたの。私たち、もう大人なんだよ。本当に、も~。しっかりしてよね。」

 凛は、やっぱり自分のことを好きなんだと確信した様子で、奥手で自分から攻めないので、自分で攻めないとと思っていたように見えた。

「涼は、女性と旅行なんて初めてだよね。」
「もちろんだよ。凛はどうなの?」
「私だって、男性と2人旅行なんてしたことない。クリスマス旅行で特別だから行こうって言ったんだよ。また、涼とは楽しく過ごせることは間違いない。だって、私たち、事故でブランクもあったけど、かなり昔から話していて、涼のことはなんでも知っているもん。」
「そうだね。凛は誰よりも素敵な人だと思っている。」
「それそれ。これからも、ずっと言ってね。それから、宿ですっぴんとか、私の素顔を見ても、嫌いにならないでよ。」
「今の顔も大好きだけど、顔じゃなくて、凛という人が好きなんだから、そんなことは心配不要だよ。心配性だね。」
「心配性の涼から言われたくないな。どんな服を着てもらいたいとかある? これから買いに行こう。涼が、こんな服着てほしいという服でいくから。」
「なんでも素敵だよ。」
「そう言わずにさ。」

 私達は、渋谷の街を歩き、凛は、私に相談しながらも、私の顔を見ながら、一番嬉しそうだった、ふわふわしたウールの白いワンピースを買い、これに今着ている赤いコートで行くことにしたって言っていた。

 その後、ランチをして別れ、凛は、私へのクリスマスプレゼントは何がいいかショッピングを楽しんだみたいだ。

 旅行当日、東京駅の高速バス乗り場で待ち合わせ、7:50に出発した。

「朝ごはん、駅でお弁当、涼の分も買ってきちゃったよ。どっちがいい? こっちがイクラとろサーモン弁当、こっちが牛タン弁当。」
「凛は、どっちにする?」
「涼が決めてよ。」
「じゃあ、牛タン弁当にする。」
「私は、イクラとろサーモン弁当ね。でも、どっちも食べたいから、半分食べたら交換ね。」
「それじゃ、どっち選んでも変わらなかったね。さすが凛らしい。」
「いただきます。」

 約3時間のバスだったが、相手のことに夢中だった2人には短すぎて、風景も楽しみながら楽しく過ごし、あっという間に高速を降りて、バスは一般道に入っていった。

「なんか、このバス蛇行していない。」
「そういえば。」

 その時だった、急に左折したバスはガードレールにぶつかり、横転してしまった。バスの中の人たちは、前に飛ばされ、バスの窓にぶつかり、横転の中でさらに窓から放り出されてしまった人もいた。

 うっすらと周りで煙が出ていることに気が付き、ここはどこかと思ったけど、気を失ってしまった。気づいたのは病院のベットで、横には両親がいた。

「大変なことになってしまったけど、気がついてよかった。幸いに、怪我とかはほとんどなく、頭を打ったようだけど、特に問題がないとのことだ。本当によかった。」
「凛と一緒だったけど、どうしている?」
「あ、あのお嬢さん、残念だけど、バスの中で亡くなったって。」
「え?」

 その後、凛の両親が来て、どうして大切な娘と2人で旅行なんて行ったんだ、娘を返してくれなどと、大きな声で怒鳴りながら、泣き崩れてしまった。

 ただ、それから2週間後に再度、訪問があり、娘が私のことをどれだけ想っていたかという日記が見つかり、まだ許したわけではないがと言いながら、これまで娘のことを大切にしてくれてありがとうと言ってくれた。

 それから、しばらくの間、とても大切にしていた凛を失い、失望の日々を過ごしていたんだ。

「私には凛しかいないって思ってたのに、こんなに早く別れちゃうなんてひどい。もう、これほど私にピッタリな人とは会えない。私って、いつも、求めると失う、そういう運命なんだ。女性の時も、男性の体になっても、そんな人生で、これからもずっとそうなんだ。」

 私は悲観にくれ、やる気も失せて、また半年ほど、会社にいくことができず、部屋に閉じ籠る日々となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

変身シートマスク

廣瀬純一
ファンタジー
変身するシートマスクで女性に変身する男の話

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

処理中です...