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第9章 滅亡へ
5話 魔女狩り
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それから報道のとおり、1年後に隕石が月に衝突した。
東京では満月のときで、夜空に大きな火花が飛び散ったように見えたの。
それから、月の軌道は楕円となり、すごい速さで地球をかすめて飛んでいくようになった。
月が通り過ぎると、そのエリアは建物だけじゃなく、山も川もすべてが荒野となった。
荒れ地に成り果てたパリの映像がテレビに映ると、次は日本だと誰もが恐れた。
月が通り過ぎていないときも、海の満ち引きの差は激しくなり、気候は荒れた。
暴風雨が吹き荒れ、いつもスーパータイフーンという感じで、外で立ってはいられない。
河川は氾濫し、多くの家が流されていった。
そして、4日に1回ぐらい月は轟音をたて通り過ぎ、地球を荒れ地に変えていく。
通り過ぎるときは、月が空の半分を覆うように大きく、慈悲とかは全くない。
荒野とならなくても、平穏な地球はもう、どこにもなかった。
そんな中、東京の人々は、これはあの魔女のせいだと言い出したの。
私が、人間を滅ぼそうとしているんだって。そんなわけないでしょう。
平安時代の陰陽師じゃないのよ。科学の時代に、それぐらい分かるでしょう。
でも、私の永遠の命は科学で説明がつくのかはわからないけど。
そして、私を魔女だといって暴徒が私の家に押し寄せた。
家の前には、あの仙台の刑事がいた。
「ここにいる女は魔女だ。仙台で、そして、先日、この近くで、人を殺して笑っていた。今回の月の件も、この魔女が引き起こしたんだと思う。なんたって、人を殺してもなにも思わないやつなんだから。俺達の手で、この魔女を殺そう。」
「おー。」
私の家の前で、怒号がうねりに変わっていった。
「私は、なにも悪くない。仙台の事件も、私にひどい仕打ちをしたから。先日の男性は、私を包丁で刺したから。こんなことをされて黙っていなければいけないの? 私のせいじゃないのよ。」
「騙されるな。あんな健気な顔をしていながら、心のなかでは俺達をどう殺そうかと楽しみにしてるんだ。」
「そんなわけないでしょう。」
「魔女は殺せ、魔女は殺せ。」
そして、誰かが、私の家にガソリンをまき、火をつけた。
火はあっという間に私の家中を囲み、人々はその火を見守っていた。
これで、魔女はいなくなり、もとの生活に戻れると笑顔があふれた。
でも、焼き尽くされた残骸から平然と歩いて出てきた私を見て、誰もが恐怖に凍りついた。
それを見たときには、周りの人々の顔から笑顔は消え、悲鳴も聞こえた。
やっぱり、あの女は魔女だったんだと。人々は、恐れ、逃げ出した。
「私はなにも悪くないのに・・・。」
私は、服が焼けてしまったので、横の家に入り、スエットを借りて街を歩いていた。
私が近づくと、みんなは悲鳴をあげて逃げていく。誰もが私を嫌いなのね。
でも、死にたくても死ねない。私も苦しいの。
また、災害は私のせいじゃない。
それなのに、暴徒は私をとらえ、柱に手足を縛りつけた。
横を見ると、私のような女性が20人ぐらい柱に縛り付けられている。
「私は魔女じゃない。助けて。」
「魔女はみんなそう嘘をつくんだよ。お前たちが地球を壊して、俺達を殺そうとしてるんだろう。もうやめて、俺達を助けてくれ。」
「そんなことしていない。間違いなのよ。」
私以外の女性たちは、悲鳴をあげ、助けを求めていたけど、誰も聞いていなかった。
そうだったの。私以外に、こんなに私と同じような人がいたのね。
だいたい20歳ぐらいの女性ばかり。あの薬を飲んだ人は、まだいたようね。
その時、私に大きな杭を何回も打ち付けた。
痛い。痛い。傷は治るけど、痛みは感じるのよ。やめて。
横を見ると、柱に縛られた女性たちにもみんな杭が打たれている。
ただ、どの女性たちも血を吐いて死んでいった。
「あなた達、こんなひどいことをして何も思わないの。横の女性たち、みんな死んだじゃないの。私と同じ魔女じゃなかったのよ。あなた達こそが鬼じゃないの。」
でも、もう暴徒を抑えることはできなかった。
私の服は血だらけになり、それから2週間、野ざらしにされた。
そして、大勢がそこに集まり、私を捧げるから災害から守ってくれとお祈りを始めた。
何千人という人が、私を中心にひれ伏し、お祈りを捧げている。
そんなことしても、月の軌道は変わらないということがわからないの。
そのうち、私を焼き始める人もでてきた。
裸の女性を杭に打ち付け、下から焼き付ける。
それを囲み、何千人という人がお祈りを捧げる。
こんな異様な風景が2週間も続いた。
ふと、空を見上げると、空の半分にもなる月が落ちてくる。
私の周りにいた人々はもう誰もいない。風に飛ばされ、水に流され、死に絶えたみたい。
私を押さえつけていた柱も炭となり、私を縛るものはもうなかった。
私は、わずかに残ったコンクリートの壁を背に、足を手でかかえ小さく丸まっていた。
月の引力のせいかしら、暴風雨は更に威力を増し、西の方に月は衝突した。
そして、その衝撃は地球全体に及び、地球は火につつまれた。
そして、わずかに生き残っていた人類も死に絶えた。
私は、服は焼かれ、傷1つない美しい裸体として、今も宇宙をさまよい続けている。
息はできず、なにもかもが凍り付く世界。
苦痛に耐えながら私の時間は終わらない・・・。
よく明けない夜はないと聞くけど、それは地球にいるから。
今は、ずっと夜は明けないし、先にある太陽は徐々に近づいてきている。
結局、あの不幸の薬のせいね。
あの時、みんなと一緒に死んでいればよかった。
この苦痛はいつまで続くのかしら。
眼の前には、大きな太陽が炎を揺らして近づいてきた。
それから数百年後、私は太陽の炎の中にいた。
私は、業火に焼かれ、死ぬこともできずに地獄を超える苦しみを永遠に感じて。
東京では満月のときで、夜空に大きな火花が飛び散ったように見えたの。
それから、月の軌道は楕円となり、すごい速さで地球をかすめて飛んでいくようになった。
月が通り過ぎると、そのエリアは建物だけじゃなく、山も川もすべてが荒野となった。
荒れ地に成り果てたパリの映像がテレビに映ると、次は日本だと誰もが恐れた。
月が通り過ぎていないときも、海の満ち引きの差は激しくなり、気候は荒れた。
暴風雨が吹き荒れ、いつもスーパータイフーンという感じで、外で立ってはいられない。
河川は氾濫し、多くの家が流されていった。
そして、4日に1回ぐらい月は轟音をたて通り過ぎ、地球を荒れ地に変えていく。
通り過ぎるときは、月が空の半分を覆うように大きく、慈悲とかは全くない。
荒野とならなくても、平穏な地球はもう、どこにもなかった。
そんな中、東京の人々は、これはあの魔女のせいだと言い出したの。
私が、人間を滅ぼそうとしているんだって。そんなわけないでしょう。
平安時代の陰陽師じゃないのよ。科学の時代に、それぐらい分かるでしょう。
でも、私の永遠の命は科学で説明がつくのかはわからないけど。
そして、私を魔女だといって暴徒が私の家に押し寄せた。
家の前には、あの仙台の刑事がいた。
「ここにいる女は魔女だ。仙台で、そして、先日、この近くで、人を殺して笑っていた。今回の月の件も、この魔女が引き起こしたんだと思う。なんたって、人を殺してもなにも思わないやつなんだから。俺達の手で、この魔女を殺そう。」
「おー。」
私の家の前で、怒号がうねりに変わっていった。
「私は、なにも悪くない。仙台の事件も、私にひどい仕打ちをしたから。先日の男性は、私を包丁で刺したから。こんなことをされて黙っていなければいけないの? 私のせいじゃないのよ。」
「騙されるな。あんな健気な顔をしていながら、心のなかでは俺達をどう殺そうかと楽しみにしてるんだ。」
「そんなわけないでしょう。」
「魔女は殺せ、魔女は殺せ。」
そして、誰かが、私の家にガソリンをまき、火をつけた。
火はあっという間に私の家中を囲み、人々はその火を見守っていた。
これで、魔女はいなくなり、もとの生活に戻れると笑顔があふれた。
でも、焼き尽くされた残骸から平然と歩いて出てきた私を見て、誰もが恐怖に凍りついた。
それを見たときには、周りの人々の顔から笑顔は消え、悲鳴も聞こえた。
やっぱり、あの女は魔女だったんだと。人々は、恐れ、逃げ出した。
「私はなにも悪くないのに・・・。」
私は、服が焼けてしまったので、横の家に入り、スエットを借りて街を歩いていた。
私が近づくと、みんなは悲鳴をあげて逃げていく。誰もが私を嫌いなのね。
でも、死にたくても死ねない。私も苦しいの。
また、災害は私のせいじゃない。
それなのに、暴徒は私をとらえ、柱に手足を縛りつけた。
横を見ると、私のような女性が20人ぐらい柱に縛り付けられている。
「私は魔女じゃない。助けて。」
「魔女はみんなそう嘘をつくんだよ。お前たちが地球を壊して、俺達を殺そうとしてるんだろう。もうやめて、俺達を助けてくれ。」
「そんなことしていない。間違いなのよ。」
私以外の女性たちは、悲鳴をあげ、助けを求めていたけど、誰も聞いていなかった。
そうだったの。私以外に、こんなに私と同じような人がいたのね。
だいたい20歳ぐらいの女性ばかり。あの薬を飲んだ人は、まだいたようね。
その時、私に大きな杭を何回も打ち付けた。
痛い。痛い。傷は治るけど、痛みは感じるのよ。やめて。
横を見ると、柱に縛られた女性たちにもみんな杭が打たれている。
ただ、どの女性たちも血を吐いて死んでいった。
「あなた達、こんなひどいことをして何も思わないの。横の女性たち、みんな死んだじゃないの。私と同じ魔女じゃなかったのよ。あなた達こそが鬼じゃないの。」
でも、もう暴徒を抑えることはできなかった。
私の服は血だらけになり、それから2週間、野ざらしにされた。
そして、大勢がそこに集まり、私を捧げるから災害から守ってくれとお祈りを始めた。
何千人という人が、私を中心にひれ伏し、お祈りを捧げている。
そんなことしても、月の軌道は変わらないということがわからないの。
そのうち、私を焼き始める人もでてきた。
裸の女性を杭に打ち付け、下から焼き付ける。
それを囲み、何千人という人がお祈りを捧げる。
こんな異様な風景が2週間も続いた。
ふと、空を見上げると、空の半分にもなる月が落ちてくる。
私の周りにいた人々はもう誰もいない。風に飛ばされ、水に流され、死に絶えたみたい。
私を押さえつけていた柱も炭となり、私を縛るものはもうなかった。
私は、わずかに残ったコンクリートの壁を背に、足を手でかかえ小さく丸まっていた。
月の引力のせいかしら、暴風雨は更に威力を増し、西の方に月は衝突した。
そして、その衝撃は地球全体に及び、地球は火につつまれた。
そして、わずかに生き残っていた人類も死に絶えた。
私は、服は焼かれ、傷1つない美しい裸体として、今も宇宙をさまよい続けている。
息はできず、なにもかもが凍り付く世界。
苦痛に耐えながら私の時間は終わらない・・・。
よく明けない夜はないと聞くけど、それは地球にいるから。
今は、ずっと夜は明けないし、先にある太陽は徐々に近づいてきている。
結局、あの不幸の薬のせいね。
あの時、みんなと一緒に死んでいればよかった。
この苦痛はいつまで続くのかしら。
眼の前には、大きな太陽が炎を揺らして近づいてきた。
それから数百年後、私は太陽の炎の中にいた。
私は、業火に焼かれ、死ぬこともできずに地獄を超える苦しみを永遠に感じて。
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