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第9章 滅亡へ
3話 恋人の紹介
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温泉から戻ってからも、唯奈とは親しく過ごしていた。
でも、唯奈には、私が女性のことしか愛せないことは伝えられず苦しかった。
唯奈の笑顔はいつも輝いている。
そんな唯奈に私の気持ちを伝えられたら、どんなに素晴らしいことだろう。
でも、そんなことしたら、汚らわしいと言われ、唯奈が去ってしまうことが怖かった。
唯奈はいつも、どの男性が好みかなんて話してる。
女性が女性のことを好きになるなんて考えたこともないんだろうな。
この前に手を握ってくれたのも、女友達として。
一緒に泊まった夜も、女性から抱かれるなんて思ってもみないから、安心して寝てた。
そうよね。それが普通。
「秘密にしておいてくれる?」
「わかったけど、何?」
「今、同棲を始めたの。人がいる部屋に帰るって、あんなに温かい気持ちになれるなんて気づかなかった。」
「それは、おめでとう。よかったね。結婚は考えてるの?」
「まだかな。まずは、一緒に暮らすだけで幸せいっぱいなんだから。」
「お相手は、どんな人なの?」
「う~ん。もちろん、嘘をつかない誠実な人。あとは、私のこと、とっても大切にしてくれる人かな。」
「やっと、念願の人を見つけたのね。本当によかった。」
「芽依は喜んでくれると思ってた。ありがとう。」
やっぱり男性に愛されるのが女性の幸せなんだろうな。
唯奈も、やっと唯奈のことを大切にしてくれる人を見つけたのね。
私が愛した人、幸せになってね。私じゃ、だめだから。
それから3ヶ月ぐらい経ったころかしら、唯奈が恋人を紹介してくれると連絡が来た。
日曜日のお昼、紙屋町のおしゃれなカフェで会おうって。
私は、少し早めに行って、窓から通り過ぎる人たちを眺めていた。
もうすぐ冬に入る、木枯らしが吹く日曜日。
でも、みんな、誰かに寄り添って暖かく、楽しそうに過ごしている。
1人では寂しくて生きていけないものね。
でも、みんなは誰かと一緒なのに、私はまた1人になっちゃう。
10分ぐらいして唯奈が下を向きながら恥ずかしそうにやってきた。
その姿を見て、私は呆然としたの。
彼氏を連れて来ると言っていたのに、連れてきたのは女性だったから。
「芽依、驚かないでね。私は、ずっと、自分の気持ちを言えなかったんだけど、男性のことが好きになれなくて、ずっと、女性のことしか好きになれないの。」
「でも、酒井くんとか、男性のことが気になるって言っていたのに・・・。」
「だって、女性のことが好きなんて言ったら、私のこと嫌いになっちゃうでしょう。今日も、きっと、気持ち悪いと思ってるんだと思う。」
「そんなことない。」
「わかってる。女性のことが好きな女性なんて気持ち悪いって思われること。だから、これまでずっと、芽依には言えなかった。でも、こんな私を受け入れてくれた人がいたの。ここにいる沙也加。沙也加も私と同じ気持ちなんだって。」
唯奈は、横の女性の顔をみて、微笑んだ。
「私は、自分の気持ちのままでいられることにほっとして、また、ずっと、そんな自分でいたいと思って沙也加と一緒にいることにしたの。まだ、女性どうしの結婚はできないけど、そのうち、できるようになるかもしれないし。ずっと、このままでいたい。だから、沙也加と同棲も始めた。」
同棲を始めたというのは彼氏じゃなかったんだ。
唯奈が男性との恋バナをするもんだから、勝手に思い込んでいただけだった。
唯奈も嫌われるのが怖くて、男性との恋愛って偽っていたんだ。
「でも、お願いだから、芽依、私のこと嫌いにならないで。ずっと、友達のままでいてよ。芽依がすてきな女性なのはわかってるから。」
「芽依さん、沙也加といいます。すぐには理解できないかもしれないけど、世の中にはそういう人がいるの。唯奈を暖かく受け止めてあげて。」
唯奈を嫌いになったりなんかしない。だって、私も女性のことが好きだもの。
どうして、唯奈がそういう人だということに気づかなかったんだろう。
私が告白していれば、唯奈と付き合えたの?
もしかしたら、温泉に一緒に行ったことは、私への想いがあったのかもしれない。
私もそうだったけど、唯奈も私に言い出せなくて苦しかったとか。
湯船で私の肩に頭を埋めたのは、そういうことだったの?
手を握ったのに、私は、唯奈の気持ちに気づいてあげられなかったということ?
これまでたくさんのチャンスがあったのに、思い込みで何もできなかったことを悔いた。
私は、気持ちの整理ができずに、気づいたらカフェを飛び出していたの。
唯奈が、待ってと言っているのが聞こえたけど、振り返ることができなかった。
その後、唯奈からメッセージがスマホに来ていた。
「私のことを軽蔑したでしょう。でも、私のこと嫌いにならないで。気持ち悪いと思わないで。私と芽依とは、ずっと、仲のいい友達でいたい。芽依と過ごした時間は、とても楽しかった。私が、自分のことを話す勇気がなかっただけ。芽依は普通で、何も悪くない。」
普通って何? 私は化け物。
でも、もっと早く唯奈の気持ちを知ればよかった。もう遅い。
唯奈にはメッセージを返した。
「この前はごめん。気持ちの整理がつかずに、カフェ、飛び出しちゃった。でも、気持ち悪いとか、嫌いとかにならないよ。私達は、ずっと仲のいい友達。でも、2人で会ったりすると沙也加さんが嫌かも。だから、もう2人で会うのはやめよう。私は転職が決まってるし、職場でも、もう会うことはない。時々は、メッセンジャーで私の相手をしてね。じゃあ、沙也加さんとお幸せに。」
私はずるい。唯奈はカミングアウトしたのに、私は普通の人のふりをして。
でも、唯奈に本当のことをいう勇気はまだなかった。
すでに、他の女性と結ばれ、手遅れだし。
目からは雫が流れていった。
もう、こんな気持ちになるのは嫌だ。
布団をかぶり、枕を涙で濡らした。
でも、唯奈には、私が女性のことしか愛せないことは伝えられず苦しかった。
唯奈の笑顔はいつも輝いている。
そんな唯奈に私の気持ちを伝えられたら、どんなに素晴らしいことだろう。
でも、そんなことしたら、汚らわしいと言われ、唯奈が去ってしまうことが怖かった。
唯奈はいつも、どの男性が好みかなんて話してる。
女性が女性のことを好きになるなんて考えたこともないんだろうな。
この前に手を握ってくれたのも、女友達として。
一緒に泊まった夜も、女性から抱かれるなんて思ってもみないから、安心して寝てた。
そうよね。それが普通。
「秘密にしておいてくれる?」
「わかったけど、何?」
「今、同棲を始めたの。人がいる部屋に帰るって、あんなに温かい気持ちになれるなんて気づかなかった。」
「それは、おめでとう。よかったね。結婚は考えてるの?」
「まだかな。まずは、一緒に暮らすだけで幸せいっぱいなんだから。」
「お相手は、どんな人なの?」
「う~ん。もちろん、嘘をつかない誠実な人。あとは、私のこと、とっても大切にしてくれる人かな。」
「やっと、念願の人を見つけたのね。本当によかった。」
「芽依は喜んでくれると思ってた。ありがとう。」
やっぱり男性に愛されるのが女性の幸せなんだろうな。
唯奈も、やっと唯奈のことを大切にしてくれる人を見つけたのね。
私が愛した人、幸せになってね。私じゃ、だめだから。
それから3ヶ月ぐらい経ったころかしら、唯奈が恋人を紹介してくれると連絡が来た。
日曜日のお昼、紙屋町のおしゃれなカフェで会おうって。
私は、少し早めに行って、窓から通り過ぎる人たちを眺めていた。
もうすぐ冬に入る、木枯らしが吹く日曜日。
でも、みんな、誰かに寄り添って暖かく、楽しそうに過ごしている。
1人では寂しくて生きていけないものね。
でも、みんなは誰かと一緒なのに、私はまた1人になっちゃう。
10分ぐらいして唯奈が下を向きながら恥ずかしそうにやってきた。
その姿を見て、私は呆然としたの。
彼氏を連れて来ると言っていたのに、連れてきたのは女性だったから。
「芽依、驚かないでね。私は、ずっと、自分の気持ちを言えなかったんだけど、男性のことが好きになれなくて、ずっと、女性のことしか好きになれないの。」
「でも、酒井くんとか、男性のことが気になるって言っていたのに・・・。」
「だって、女性のことが好きなんて言ったら、私のこと嫌いになっちゃうでしょう。今日も、きっと、気持ち悪いと思ってるんだと思う。」
「そんなことない。」
「わかってる。女性のことが好きな女性なんて気持ち悪いって思われること。だから、これまでずっと、芽依には言えなかった。でも、こんな私を受け入れてくれた人がいたの。ここにいる沙也加。沙也加も私と同じ気持ちなんだって。」
唯奈は、横の女性の顔をみて、微笑んだ。
「私は、自分の気持ちのままでいられることにほっとして、また、ずっと、そんな自分でいたいと思って沙也加と一緒にいることにしたの。まだ、女性どうしの結婚はできないけど、そのうち、できるようになるかもしれないし。ずっと、このままでいたい。だから、沙也加と同棲も始めた。」
同棲を始めたというのは彼氏じゃなかったんだ。
唯奈が男性との恋バナをするもんだから、勝手に思い込んでいただけだった。
唯奈も嫌われるのが怖くて、男性との恋愛って偽っていたんだ。
「でも、お願いだから、芽依、私のこと嫌いにならないで。ずっと、友達のままでいてよ。芽依がすてきな女性なのはわかってるから。」
「芽依さん、沙也加といいます。すぐには理解できないかもしれないけど、世の中にはそういう人がいるの。唯奈を暖かく受け止めてあげて。」
唯奈を嫌いになったりなんかしない。だって、私も女性のことが好きだもの。
どうして、唯奈がそういう人だということに気づかなかったんだろう。
私が告白していれば、唯奈と付き合えたの?
もしかしたら、温泉に一緒に行ったことは、私への想いがあったのかもしれない。
私もそうだったけど、唯奈も私に言い出せなくて苦しかったとか。
湯船で私の肩に頭を埋めたのは、そういうことだったの?
手を握ったのに、私は、唯奈の気持ちに気づいてあげられなかったということ?
これまでたくさんのチャンスがあったのに、思い込みで何もできなかったことを悔いた。
私は、気持ちの整理ができずに、気づいたらカフェを飛び出していたの。
唯奈が、待ってと言っているのが聞こえたけど、振り返ることができなかった。
その後、唯奈からメッセージがスマホに来ていた。
「私のことを軽蔑したでしょう。でも、私のこと嫌いにならないで。気持ち悪いと思わないで。私と芽依とは、ずっと、仲のいい友達でいたい。芽依と過ごした時間は、とても楽しかった。私が、自分のことを話す勇気がなかっただけ。芽依は普通で、何も悪くない。」
普通って何? 私は化け物。
でも、もっと早く唯奈の気持ちを知ればよかった。もう遅い。
唯奈にはメッセージを返した。
「この前はごめん。気持ちの整理がつかずに、カフェ、飛び出しちゃった。でも、気持ち悪いとか、嫌いとかにならないよ。私達は、ずっと仲のいい友達。でも、2人で会ったりすると沙也加さんが嫌かも。だから、もう2人で会うのはやめよう。私は転職が決まってるし、職場でも、もう会うことはない。時々は、メッセンジャーで私の相手をしてね。じゃあ、沙也加さんとお幸せに。」
私はずるい。唯奈はカミングアウトしたのに、私は普通の人のふりをして。
でも、唯奈に本当のことをいう勇気はまだなかった。
すでに、他の女性と結ばれ、手遅れだし。
目からは雫が流れていった。
もう、こんな気持ちになるのは嫌だ。
布団をかぶり、枕を涙で濡らした。
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