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第7章 組織の壊滅
3話 もう1組の被害者
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煙につつまれた教会で、なにが起こったのかわからず、僕は、呆然と椅子に座っていた。
背広の肩に、しろい砂埃が降りかかっているが、ネクタイは特に汚れていない。
逃げようと、すぐ後ろにある扉をあけると、外の光が差し込んだ。
その時だった、僕と同様に、バージンロードの上で呆然と佇む女性が目に入ってきたんだ。
「お嬢さん、逃げましょう。」
「何が起こったんですか?」
「そんなこといいから、早く、ここから出ましょう。建物が崩れるかもしれないから。」
「はい。」
僕は、その女性の手を引いて、眩しくてよく見えない外に出た。
最初に階段があり、転びそうになったが、公園のような広場に避難してきた。
「ありがとうございます。怖くて、動けないところを助けてもらいました。」
「いえ、私も同じでしたから。でも、ほとんど傷とかもなさそうですし、よかったです。」
医者らしい人が私たちをさっとチェックし、大丈夫だと判断され、その場で開放された。
新婦の安否とか気になったけど、教会の中には入れないと言われた。
もう、この場を去るしかない。
「一応、お礼とかもしたいですし、連絡先を教えていただけないですか?」
「気を使わなくていいですよ。でも、私のPHSの番号はこれです。気が向いたら連絡してみてください。では、お互いに大丈夫だと言われたから、帰りましょう。」
僕は、内閣府に勤めていて、首相とかの政策立案に参画している。
でも、今日は、仕事関係ではなく、新婦が高校の時の同級生だったので結婚式にでていた。
新婦が亡くなったようだったのはショックだった。
でも、そんな時にいうことじゃないけど、あのとき一緒に外に出た女性は美しかった。
あの横顔は、これまで会った誰よりも美しかった。
長い髪、すらっとしたスタイル。胸も大きいが嫌らしさはない。
清楚で、純粋という感じに心を惹かれた。
長い髪の毛を陽の光が照らし、妖精が目の前にいるのかと思ったぐらいだった。
また、目が大きいことにも惹かれた。つぶらな瞳というものだろうか。
見ているだけで、吸い込まれそうだ。
ミステリアスだけど、暖かい顔つきと言って、分かってもらえるだろうか。
一目惚れって、こういうことを言うのかもしれない。
僕は、機密情報を扱うことが多い仕事だから、付き合う彼女にも気を使う。
その結果というのは言い訳かもしれないが、内閣府に入ってから今まで、彼女はいない。
上司からお見合いとして紹介とかされることもある。
だけど、これからもその上司にずっと支配されるようで嫌じゃないか。
僕は、自分で言うのもなんだけど、それなりのイケメンで、言い寄ってくる女性も多い。
美人もいっぱいいる。
でも、ハニートラップの可能性もあり、なかなか相手のことは信用できない。
ただ、この前、教会で会ったあの女性は、単なる偶然で会っただけ。
だから、そんな心配はなく、付き合えるんじゃないか。
あんな事件の後に不謹慎だとは思うけど、あの女性からの連絡を実は期待していた。
そして、その女性から連絡があり、心が踊った。
「今日は、来てくれてありがとう。こんな素敵な人と一緒に過ごせるなんて、本当に嬉しいです。」
「褒めすぎですって。お名前はなんていうんですか? 私は、小川 恵子です。」
「僕は、佐々木 一郎です。何を頼みましょうか。まず、飲み物で、僕はビールですが、小川さんはどうします?」
「じゃあ、私も初めはビールでお願いします。」
「突然でびっくりされると思うんですけど、僕、小川さんに一目惚れなんです。」
「え、積極的ですね。まずは友達からということで。」
私は、醜い女。ある研究機関から渡された薬を飲んで、異能力を身につけてしまった。
手で人に触れると、相手が何を考えているかがわかる。
私自身は、この能力があって良かったなんて思ったことはないわ。
外を歩いていると、同年齢の女性たちは、みんな、友達と楽しそうに話している。
本当に楽しそう。でも、私には、そんな時間はなかった。
いつも、脳波や、血液、心拍などの検査と、何かわからない訓練ばかり。
手をさわった人の大部分がどす黒いことを考えていたから、私はこの能力が嫌いになった。
私を犯してやろうかとか、あいつを騙して金を奪い取ってやるとか。
みんなを殺してやろうとか、ひどい人ばかり。
私は、心を病んでしまい、施設から逃げ出したの。
そして、その時に、助けてくれたのが異能力集団だった。
この組織は、私の気持ちをいっぱいわかってくれた。
普通の人のように学校にもいかせてもらえ、楽しい生活ができた。
そして、大学をでて組織の一員として活動することになった。
でも、私の仕事は、人から情報を盗むことだったの。
嫌だったけど、これまでの恩もあって、断れなかった。
そんな時に、内閣府の人から情報を盗めと指示があった。
教会を爆破するときに偶然を装い、一緒に被害者となれば疑われないって。
その人も、政府の人っていうんだから、きっと悪どい人にちがいない。
さっさと仕事、すましてしまおうと思って、教会で、その男性の近くに座った。
この人なんだ。別に悪そうな人じゃなさそうだけど。
でも、人は見た目じゃ分からない。結局はみんな同じ悪人なんだから。
そんなことを考えているとき、教会で聞いていた爆破事件が起きた。
もちろん、私のところまでには爆弾の影響はほとんどないことは分かっていた。
そして、指示されていたとおり、バージンロードで佇んでいた。
周りには人もいたけど、内閣府の人の目をみて、私に声をかけるように促したわ。
そして、思ったとおり彼が声をかけてきた。
そして、彼は、私の手を握って、外に避難させてくれたの。
でも、初めてだった。悪どいことなんて考えていない政府の人なんているのね。
美人で興味があると思ってるけど、私を犯したいなんてことは考えていない。
誰かを貶めたいとか、足をひっぱりたいとかいう気持ちは全く感じられなかったの。
この事件で、困惑しているからかもしれないけど、こんな人もいるんだって驚いた。
あらためて彼をみると、必ず明るい将来があると思って仕事に打ち込んでいる。
目がキラキラした素敵な人だと感じたわ。
組織の指示だから、彼にお礼をしたいとメッセージを送ったの。
そしたら、その晩に、今度会おうって返事がきた。
私は彼と会い、おしぼりを間違えるふりをして彼の手の上に手を重ね、情報を盗んだ。
でも、彼はとても純粋で、信念に基づき行動していたので、後ろめたい気持ちになったわ。
彼は、私と食事するのは初めてなのに、私にとても暖かい気持ちをもってくれている。
どうすれば私が喜ぶかということばかり考えている。
私も、この人と一緒にいたら幸せな人生を送れるのかしら。
私は28歳なんだけど、これが初恋だったんだと思う。心から信頼できる人だと思った。
ところで、盗んだ情報は2つあった。
1つ目の、記者である新郎のことを知っているかについては、全く知らなかった。
2つ目は、驚くもので、次の総理は水野政調会長にするという総理の発言だった。
水野政調会長は、異能力者に強く反対しているという噂。
組織はこれを知りたかったんだと思う。
でも、彼は、異能力者については、なにも意見はないみたい。
その情報を、指示どおり組織に送り、私の仕事は終わった。
ただ、組織からは禁止されていたけど、清らかな心を持ってる彼とは、付き合い続けたい。
この気持ちが抑えられずに、私は、彼との関係を続けた。
背広の肩に、しろい砂埃が降りかかっているが、ネクタイは特に汚れていない。
逃げようと、すぐ後ろにある扉をあけると、外の光が差し込んだ。
その時だった、僕と同様に、バージンロードの上で呆然と佇む女性が目に入ってきたんだ。
「お嬢さん、逃げましょう。」
「何が起こったんですか?」
「そんなこといいから、早く、ここから出ましょう。建物が崩れるかもしれないから。」
「はい。」
僕は、その女性の手を引いて、眩しくてよく見えない外に出た。
最初に階段があり、転びそうになったが、公園のような広場に避難してきた。
「ありがとうございます。怖くて、動けないところを助けてもらいました。」
「いえ、私も同じでしたから。でも、ほとんど傷とかもなさそうですし、よかったです。」
医者らしい人が私たちをさっとチェックし、大丈夫だと判断され、その場で開放された。
新婦の安否とか気になったけど、教会の中には入れないと言われた。
もう、この場を去るしかない。
「一応、お礼とかもしたいですし、連絡先を教えていただけないですか?」
「気を使わなくていいですよ。でも、私のPHSの番号はこれです。気が向いたら連絡してみてください。では、お互いに大丈夫だと言われたから、帰りましょう。」
僕は、内閣府に勤めていて、首相とかの政策立案に参画している。
でも、今日は、仕事関係ではなく、新婦が高校の時の同級生だったので結婚式にでていた。
新婦が亡くなったようだったのはショックだった。
でも、そんな時にいうことじゃないけど、あのとき一緒に外に出た女性は美しかった。
あの横顔は、これまで会った誰よりも美しかった。
長い髪、すらっとしたスタイル。胸も大きいが嫌らしさはない。
清楚で、純粋という感じに心を惹かれた。
長い髪の毛を陽の光が照らし、妖精が目の前にいるのかと思ったぐらいだった。
また、目が大きいことにも惹かれた。つぶらな瞳というものだろうか。
見ているだけで、吸い込まれそうだ。
ミステリアスだけど、暖かい顔つきと言って、分かってもらえるだろうか。
一目惚れって、こういうことを言うのかもしれない。
僕は、機密情報を扱うことが多い仕事だから、付き合う彼女にも気を使う。
その結果というのは言い訳かもしれないが、内閣府に入ってから今まで、彼女はいない。
上司からお見合いとして紹介とかされることもある。
だけど、これからもその上司にずっと支配されるようで嫌じゃないか。
僕は、自分で言うのもなんだけど、それなりのイケメンで、言い寄ってくる女性も多い。
美人もいっぱいいる。
でも、ハニートラップの可能性もあり、なかなか相手のことは信用できない。
ただ、この前、教会で会ったあの女性は、単なる偶然で会っただけ。
だから、そんな心配はなく、付き合えるんじゃないか。
あんな事件の後に不謹慎だとは思うけど、あの女性からの連絡を実は期待していた。
そして、その女性から連絡があり、心が踊った。
「今日は、来てくれてありがとう。こんな素敵な人と一緒に過ごせるなんて、本当に嬉しいです。」
「褒めすぎですって。お名前はなんていうんですか? 私は、小川 恵子です。」
「僕は、佐々木 一郎です。何を頼みましょうか。まず、飲み物で、僕はビールですが、小川さんはどうします?」
「じゃあ、私も初めはビールでお願いします。」
「突然でびっくりされると思うんですけど、僕、小川さんに一目惚れなんです。」
「え、積極的ですね。まずは友達からということで。」
私は、醜い女。ある研究機関から渡された薬を飲んで、異能力を身につけてしまった。
手で人に触れると、相手が何を考えているかがわかる。
私自身は、この能力があって良かったなんて思ったことはないわ。
外を歩いていると、同年齢の女性たちは、みんな、友達と楽しそうに話している。
本当に楽しそう。でも、私には、そんな時間はなかった。
いつも、脳波や、血液、心拍などの検査と、何かわからない訓練ばかり。
手をさわった人の大部分がどす黒いことを考えていたから、私はこの能力が嫌いになった。
私を犯してやろうかとか、あいつを騙して金を奪い取ってやるとか。
みんなを殺してやろうとか、ひどい人ばかり。
私は、心を病んでしまい、施設から逃げ出したの。
そして、その時に、助けてくれたのが異能力集団だった。
この組織は、私の気持ちをいっぱいわかってくれた。
普通の人のように学校にもいかせてもらえ、楽しい生活ができた。
そして、大学をでて組織の一員として活動することになった。
でも、私の仕事は、人から情報を盗むことだったの。
嫌だったけど、これまでの恩もあって、断れなかった。
そんな時に、内閣府の人から情報を盗めと指示があった。
教会を爆破するときに偶然を装い、一緒に被害者となれば疑われないって。
その人も、政府の人っていうんだから、きっと悪どい人にちがいない。
さっさと仕事、すましてしまおうと思って、教会で、その男性の近くに座った。
この人なんだ。別に悪そうな人じゃなさそうだけど。
でも、人は見た目じゃ分からない。結局はみんな同じ悪人なんだから。
そんなことを考えているとき、教会で聞いていた爆破事件が起きた。
もちろん、私のところまでには爆弾の影響はほとんどないことは分かっていた。
そして、指示されていたとおり、バージンロードで佇んでいた。
周りには人もいたけど、内閣府の人の目をみて、私に声をかけるように促したわ。
そして、思ったとおり彼が声をかけてきた。
そして、彼は、私の手を握って、外に避難させてくれたの。
でも、初めてだった。悪どいことなんて考えていない政府の人なんているのね。
美人で興味があると思ってるけど、私を犯したいなんてことは考えていない。
誰かを貶めたいとか、足をひっぱりたいとかいう気持ちは全く感じられなかったの。
この事件で、困惑しているからかもしれないけど、こんな人もいるんだって驚いた。
あらためて彼をみると、必ず明るい将来があると思って仕事に打ち込んでいる。
目がキラキラした素敵な人だと感じたわ。
組織の指示だから、彼にお礼をしたいとメッセージを送ったの。
そしたら、その晩に、今度会おうって返事がきた。
私は彼と会い、おしぼりを間違えるふりをして彼の手の上に手を重ね、情報を盗んだ。
でも、彼はとても純粋で、信念に基づき行動していたので、後ろめたい気持ちになったわ。
彼は、私と食事するのは初めてなのに、私にとても暖かい気持ちをもってくれている。
どうすれば私が喜ぶかということばかり考えている。
私も、この人と一緒にいたら幸せな人生を送れるのかしら。
私は28歳なんだけど、これが初恋だったんだと思う。心から信頼できる人だと思った。
ところで、盗んだ情報は2つあった。
1つ目の、記者である新郎のことを知っているかについては、全く知らなかった。
2つ目は、驚くもので、次の総理は水野政調会長にするという総理の発言だった。
水野政調会長は、異能力者に強く反対しているという噂。
組織はこれを知りたかったんだと思う。
でも、彼は、異能力者については、なにも意見はないみたい。
その情報を、指示どおり組織に送り、私の仕事は終わった。
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