誰か、私を殺して

一宮 沙耶

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第4章 大阪生活

4話 別れ

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水商売を続けた久美は、時々、男性と寝てお金をもらっていたのは知っていた。
そんな日の朝は、いつも久美はトイレで朝、吐いていたの。
そして、いつもより長い時間、お風呂で体を洗っていた。

ある日、久美から相談を受けた。

「恭子、相談があるんだけど、子供ができちゃったの。」
「え! 誰の子なの?」
「わからない。お客さんの誰かだと思うけど。」
「堕ろすしかないでしょう。育てられないし。」
「子供を殺すようで、ずっと悩んでいたら、もう堕ろせない時期に来ちゃった。」
「そういえば、最近、生理もないようだったし、気分も悪そうだったね。」
「いろいろ考えたんだけど、お客さんの中で、もう50歳を過ぎてるんだけど、奥様が亡くなったばかりの一人の紳士がいるの。その人とも寝ていたから、その人に子供ができたと言って、責任をとって結婚してと言おうと思う。どうかな。」
「それは良いアイディアだけど、久美と分かれるのは寂しい。私、また1人になってしまう。」
「ごめんね。男性は好きじゃないけど、この子は育てたい。」
「寂しいけど、久美には幸せになって欲しいから、諦める。幸せになってね。」
「わかってくれてありがとう。でも、これからも、会えるじゃない。」
「本当は会いたいけど、いつか、2人の関係がバレると旦那さんにもよくないから、もう会わないことにする。」
「そうなの。仲のいい女友達っていえば、バレないと思うけど。」
「また会うと、寂しくて泣いちゃうし。でも、私のこと忘れないでね。」
「そこまで言うんだったら、しかたがないね。寂しくなるわ。でも、恭子のこと、絶対に忘れないよ。」
「わかってくれて、ありがとう。」

そう言って、久美は私を抱きしめ、最後の晩を過ごした。
私は、翌朝、久美を玄関で笑顔で送り出したの。
でも、久美が見えなくなると、玄関を締め、大声で泣いた。

女友達と会うなんてよくあるから、久美とは、これからも会うことはできた。
でも、最近、年をとらない私は浮いてきたと悩んでたの。
ずっと一緒にいたから、気づかれなかったようだけど、別に暮らしたらばれる。

だから、分かれるには、いい機会だったかもしれないわね。久美、幸せになってね。
彼も高齢だから、未亡人として財産をいっぱいもらえばいいわ。
そのお金で子供を育て、子供に愛される人生が待ってるわよ。

でも、また1人ぼっちになってしまった。
そして、変人である私を好きになってくれる女性となんて、もう出会えないと思う。
そもそも、女性が好きな女性なんて、久美以外にこの世にいるのかしら。

私は、変人である自分を憎んだ。
男性が好きになれるのであれば、どれだけ普通の幸せがあったのかしら。
しかも、ずっと死ねない体で、この苦痛をいつまで味わえばいいのかしら。

それから数年が経ち、1人で過ごすことにも慣れてきた。
しかも、最近は、女性の地位も向上して、性的にも少し開放的になってきたと聞いてる。
今の私なら、再度人生にチャレンジできるかもしれない。
これから東京で過ごそう。
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