誰か、私を殺して

一宮 沙耶

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第3章 逃げる

5話 予知夢

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私は、死んだ子どもの父親の夢でうなされていることを親に伝えた。
そして、あの子のお父さんが今どうしているか聞いたわ。
子供を生んだすぐ後に、事故で死んだって。

知っていたんだったら、教えてくれればいいのに。
でも、親も、死んだ理由は分からないらしい。

でも、どうして、あの人が夢にでてくるのだろう。
私があの人を殺したわけでもないのに。
ただ、その頃から、私の体に何か変化が起きていることに気づいたの。
最初はよくわからなかったけど、日が経つうちになんとなく分かってきた。

それは、将来のことが予知できるようになったんじゃないかということ。
最初は、私の前に、公園で遊んでる子どもたちのボールが飛んでくることから始まったの。昨晩、そんな夢を見たなと思って公園をみたら、夢のとおりボールが飛んできた。

偶然だと思ったけど、そんなことが続いたので、これは偶然じゃないと思った。
例えば、お父さんの会社が、新しい特許で株価が急激に上昇する夢とか。
だいたい、お父さんの会社で新たな特許を取得したことなんて知らなかったし。
株なんて興味もなかったけど、夢で見たとおりの株価が新聞に載っていた。

ここまでくると、単なる夢とか言っていられない。
この力は、妊娠したあたりから、だんだん身についたものじゃないかと思う。

その頃、ある組織が私にコンタクトしてきた。

「あなたは、異能力をお持ちですね。」
「あなたは誰ですか?」
「あなたと同様に異能力を持っている者です。今はある組織の一員で、あなたのお子さんも、我々の組織で活動しています。」
「え、あの子は生きていたんですか?」
「ええ。組織に参加してもらえれば、今はアメリカの研究所にいるので、すぐにはとは言えませんが、お会いできるよう取り計らってみましょう。」

私は、想定もしていなかったことを聞かされ、呆然とその場で立ちつくした。

「どうですか? 組織に参加してください。」
「ところで、どうして私が異能力を持っていると思うのですか?」
「まずは、異能力を持つお子さんのお母様であること、次に、異能力者どうしはお互いに分かるんですよ。」

たしかに、目の前の人からは薄っすらと光が放出され、普通の人とは違うことがわかる。

「組織に参加して、私は何をやるんですか?」
「あなたの異能力ってなんですか?」
「私は、予知夢が見れると思うのですが、それ以上はよくわかりません。」
「そうであれば、我々が計画していることの未来を見ていただき、結果次第で、計画を修正するための情報提供をいただくということでしょうか。」
「じゃあ、参加しないと答えたら?」
「そうしたら、我々のことを知ってしまったので、死んでいただくことしかありません。お子さんとも会うことはできなくなりますよ。」

もう断るという選択肢はなかった。参加するというと、その人は去っていった。

それからしばらくして、陽稀が私に別れを告げる夢を見たの。
それは、いくらなんでも間違いでしょう。だって、陽稀とは、今でも仲がいいし。
でも、その3日後、陽稀から私に別れたいと言い出したの。

私の親から、酔っ払った席で私は以前、子供を産んでいたと聞いたらしい。
私は、変な能力まであって汚れている。
そんな私は、陽稀に私を選んでなんて言えなかった。
私は、そんなことを伝えてしまった親を憎み、その翌日、朝起きたら目が腫れていたわ。

もう終わりなのね。私は、眼の前が真っ暗となり、もう生きる気力がなくなっていた。
そんな弱気になっている時に、ふと、あの悪夢のことを思い出していた。
そういえば、あれって予知夢だったの?

これは、私の心、考えていることを反映しているんじゃない。
将来、私が殺されるということの予知なんじゃないかって。
そうは言っても、あの人はすでに死んでいる。

でも、ある日、私はびっくりして、その場で凍りついた。
腕や膝、足の裏に、夢で見たようなガラスで切ったような傷が多数あったから。
いつ、怪我したんだろう。全く記憶はないのに。

でも、これって、あの夢の怪我に似てない?
そう思っている間に、背中が腫れてきた。そう、包丁で切り裂いたように。
私は、激痛に苦しみながらも、組織の人に聞いてみた。

そうしたら、組織の人は、前から分かっていたように冷静に私の話し始めたの。
これは最初の症状にすぎずに、これを契機に、だんだん私の体が溶けていくんだって。
どうしてわかるのと聞いたら、私の子供がそうだったからと言われた。
そう、私の子供は、もう亡くなっているということだった。

話しのとおり、私は、半年で、足と手が溶けてなくなった。
状況は違ったけど、私の体はあの夢の通り傷ついていったの。
あの人が私の体に遺伝子を移し、私の体は逃げ回ったけど、最後は死に至る。
夢の通りだったのね。
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