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第3章 逃げる
2話 彼氏
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「陽稀さん、ちょっと聞いてよ。私、最近、夜、悪夢にうなされていてさ、本当に怖いんだけど、どうにかなからないかな。」
「そうなんだ。でも、たかが夢じゃん。別に、現実世界で、傷つけられたりされるわけじゃないんだろう。気にしないのが一番だよ。そのうち、出てこなくなるって。それでもだめなら、あとは、霊媒師とかに相談してみるとか。」
「そうだんだけどさ。すこしは、大変だねとか声をかけられないの? なんか相談して損した感じ。」
「なにをそんなに怒ってるんだよ。ちゃんと相談にのってるじゃないか。」
美智子は、僕と同じデパートで働く後輩で、今、付き合っている女性だ。
美智子は、いつも僕に笑顔をみせ、僕を優先してきてくれた。
でも、夢のことは本当に悩んでいるみたいだな。
いつになく、怒られてしまったのには少し驚いた。
そういえば、美智子の今日の目は、いつもの笑顔いっぱいの目でなく、大きく開いている。
僕を真剣に見つめていた。こんな美智子の表情は初めてだった。
美智子は、だれもが認める美人だが、性格はとてもいい。
美智子と一緒にいると、心が落ち着けると言うか、自分らしくいられる。
僕がデパートに入社して2年目のとき、2名のエレベーターガールが入社した。
いずれも、とびっきりの美人で、社内の男性陣は、かなり沸き立っていたんだ。
1人は、斉藤さんという女性で、見た目は可愛いく、誰にでも親しみやすい感じだった。
でも、芯が強い人で、実は、僕は最初は、斉藤さんが気になっていたんだ。
でも、すでに彼がいたようで、話しかけても一言、二言返事があるだけだった。
近づいてこないでという聞こえない声が聞こえてくるようで無理だなと思った。
もう一人は柏木さんという女性。
高嶺の花というか、誰もが付き合えるはずがないと諦めていたんだ。
でも、一旦親しくなると、すごく開放的でお互いの壁は全くないタイプの人だった。
僕自身は、廊下を歩いている時に、時々、話しかけられたりした。
そして、ふと雑談をしてきたりとか、なんか、今から思うと、話す機会が多かった。
そして、休日に映画とか2人で行くようにもなった。
そして、帰りに僕が働いていないデパートのレストランにも一緒に行った。
でも、柏木さんの偏食はすごくて、肉、魚はだめで、ミルクとかサラダしか食べない。
僕と一緒にいたくないという意思表示かと思ったけど、そうでもなかったようだ。
さすがに、お料理について一緒に感想も言い合える人じゃないと、お付き合うのは無理。
この2人の女性がきた翌年に入社したエレベーターガールが美智子だった。
美智子も、美人として目立っていたけど、いつも仕事はひたむき。
しかも、僕と廊下ですれ違うと、どんなときも笑いかけてくれた。
背は高くて、それ自体はあまり好みではなかったけど、一緒に歩くと自慢ができる。
しかも、自分がどうしたいとかわがままを言うことは全くない。
常に僕のことをすごいすごいと言ってくれる女性は初めてだったんだ。
そして、美智子から、映画に誘われ、帰りに喫茶店で一緒の時間を過ごしていた。
そこでは、いつもよりも明るくて、ずっと喋り続けている美智子がいた。
とても心地がよく、こんな女性と付き合えたらなんて考える時間が増えていったんだ。
美智子は、いつも、将来の夢を語る僕の話しをずっと聞いてくれた。
そんな姿が素敵だ、一緒に夢を叶えたいと言ってくれた。
美智子は、家庭が裕福なのだろうか、いつもおしゃれな服を着ていた。
だからか、僕にもおしゃれな服はどうかと言ってきた。
これを機に、僕は、美智子のおかげで、おしゃれにも気を使えるようになったな。
僕は、昔から女性からもてたんだけど、女性から拒否されてしまうことが怖かった。
だから、付き合っても続かなかったんだ。
でも、美智子とは、不思議と付き合い続けることができた。
お見合いで付き合っていた女性もいた。
しばらくお付き合いし、お食事を一緒にしてご自宅まで送っていったときだった。
その女性は、急に立ち止まり、僕の顔を見つめていた。
僕は、そのまま歩き続けて彼女の家に送り届けたけど、その後、お断りの連絡が来た。
多分、キスをしてほしいと思っていて、強引さが足りないと思ったのかもしれない。
勇気がなかった。
やっとできたことは、女性から手を握ってきたり、腕を組んできたときに応じるぐらいだ。自分からやったことは何もない。
そんな僕をみて、付き合った女性たちは、自分が避けられていると勘違いしたのだろう。
どの女性も、僕から去っていった。
だから、美智子とも、夕食に行くことは続いたけど、それ以上には自分から進めなかった。
渋谷の公園で、夜、食事したあと、ベンチにすわり1時間程過ごしたこともある。
「もう1時間も座ってるわね。」
「そうだね。そろそろ帰ろうか。」
「そうじゃなくて、私と、もう付き合って半年以上経つんだから、キスとかしてくれてもいいのと言っているの。今日は、家に帰らなくてもいいのよ。」
「僕は、美智子を大切にしたいんだ。そういうことは結婚してからと思っているんだ。」
「私がいいと言っているんだからいいじゃない。私のことを大切にというんだったら、あなたの愛情、体でも感じたいの。」
「まあ、今日は帰ろう。」
そんな僕をみて、じれったかったんだろうか。
美智子から、小さな声で結婚してと耳元で囁かれたんだ。
僕らは婚約し、親同士も合意のうえでの付き合いをしていた。
僕は、美智子をずっと大切にしようと決めたんだ。
でも、なんで悪夢に悩んでいるのだろうか。
仕事はそんなに大変じゃなくて、マイペースで進めているようだし。
過去に、そんな経験があったとも聞いていない。
そういえば、美智子には、過去に付き合っていた人がいるらしい。
その人のことは一切話さないが、まあ、そんなもんだろう。
誰も隠したい過去の1つや2つはある。
でも、そういえば、美智子は、お腹に手術の痕があることをすごく気にしている。
どうも、その男性と関係があるような気がする。
あの夢は、そのことと関係しているんだろうか?
「そうなんだ。でも、たかが夢じゃん。別に、現実世界で、傷つけられたりされるわけじゃないんだろう。気にしないのが一番だよ。そのうち、出てこなくなるって。それでもだめなら、あとは、霊媒師とかに相談してみるとか。」
「そうだんだけどさ。すこしは、大変だねとか声をかけられないの? なんか相談して損した感じ。」
「なにをそんなに怒ってるんだよ。ちゃんと相談にのってるじゃないか。」
美智子は、僕と同じデパートで働く後輩で、今、付き合っている女性だ。
美智子は、いつも僕に笑顔をみせ、僕を優先してきてくれた。
でも、夢のことは本当に悩んでいるみたいだな。
いつになく、怒られてしまったのには少し驚いた。
そういえば、美智子の今日の目は、いつもの笑顔いっぱいの目でなく、大きく開いている。
僕を真剣に見つめていた。こんな美智子の表情は初めてだった。
美智子は、だれもが認める美人だが、性格はとてもいい。
美智子と一緒にいると、心が落ち着けると言うか、自分らしくいられる。
僕がデパートに入社して2年目のとき、2名のエレベーターガールが入社した。
いずれも、とびっきりの美人で、社内の男性陣は、かなり沸き立っていたんだ。
1人は、斉藤さんという女性で、見た目は可愛いく、誰にでも親しみやすい感じだった。
でも、芯が強い人で、実は、僕は最初は、斉藤さんが気になっていたんだ。
でも、すでに彼がいたようで、話しかけても一言、二言返事があるだけだった。
近づいてこないでという聞こえない声が聞こえてくるようで無理だなと思った。
もう一人は柏木さんという女性。
高嶺の花というか、誰もが付き合えるはずがないと諦めていたんだ。
でも、一旦親しくなると、すごく開放的でお互いの壁は全くないタイプの人だった。
僕自身は、廊下を歩いている時に、時々、話しかけられたりした。
そして、ふと雑談をしてきたりとか、なんか、今から思うと、話す機会が多かった。
そして、休日に映画とか2人で行くようにもなった。
そして、帰りに僕が働いていないデパートのレストランにも一緒に行った。
でも、柏木さんの偏食はすごくて、肉、魚はだめで、ミルクとかサラダしか食べない。
僕と一緒にいたくないという意思表示かと思ったけど、そうでもなかったようだ。
さすがに、お料理について一緒に感想も言い合える人じゃないと、お付き合うのは無理。
この2人の女性がきた翌年に入社したエレベーターガールが美智子だった。
美智子も、美人として目立っていたけど、いつも仕事はひたむき。
しかも、僕と廊下ですれ違うと、どんなときも笑いかけてくれた。
背は高くて、それ自体はあまり好みではなかったけど、一緒に歩くと自慢ができる。
しかも、自分がどうしたいとかわがままを言うことは全くない。
常に僕のことをすごいすごいと言ってくれる女性は初めてだったんだ。
そして、美智子から、映画に誘われ、帰りに喫茶店で一緒の時間を過ごしていた。
そこでは、いつもよりも明るくて、ずっと喋り続けている美智子がいた。
とても心地がよく、こんな女性と付き合えたらなんて考える時間が増えていったんだ。
美智子は、いつも、将来の夢を語る僕の話しをずっと聞いてくれた。
そんな姿が素敵だ、一緒に夢を叶えたいと言ってくれた。
美智子は、家庭が裕福なのだろうか、いつもおしゃれな服を着ていた。
だからか、僕にもおしゃれな服はどうかと言ってきた。
これを機に、僕は、美智子のおかげで、おしゃれにも気を使えるようになったな。
僕は、昔から女性からもてたんだけど、女性から拒否されてしまうことが怖かった。
だから、付き合っても続かなかったんだ。
でも、美智子とは、不思議と付き合い続けることができた。
お見合いで付き合っていた女性もいた。
しばらくお付き合いし、お食事を一緒にしてご自宅まで送っていったときだった。
その女性は、急に立ち止まり、僕の顔を見つめていた。
僕は、そのまま歩き続けて彼女の家に送り届けたけど、その後、お断りの連絡が来た。
多分、キスをしてほしいと思っていて、強引さが足りないと思ったのかもしれない。
勇気がなかった。
やっとできたことは、女性から手を握ってきたり、腕を組んできたときに応じるぐらいだ。自分からやったことは何もない。
そんな僕をみて、付き合った女性たちは、自分が避けられていると勘違いしたのだろう。
どの女性も、僕から去っていった。
だから、美智子とも、夕食に行くことは続いたけど、それ以上には自分から進めなかった。
渋谷の公園で、夜、食事したあと、ベンチにすわり1時間程過ごしたこともある。
「もう1時間も座ってるわね。」
「そうだね。そろそろ帰ろうか。」
「そうじゃなくて、私と、もう付き合って半年以上経つんだから、キスとかしてくれてもいいのと言っているの。今日は、家に帰らなくてもいいのよ。」
「僕は、美智子を大切にしたいんだ。そういうことは結婚してからと思っているんだ。」
「私がいいと言っているんだからいいじゃない。私のことを大切にというんだったら、あなたの愛情、体でも感じたいの。」
「まあ、今日は帰ろう。」
そんな僕をみて、じれったかったんだろうか。
美智子から、小さな声で結婚してと耳元で囁かれたんだ。
僕らは婚約し、親同士も合意のうえでの付き合いをしていた。
僕は、美智子をずっと大切にしようと決めたんだ。
でも、なんで悪夢に悩んでいるのだろうか。
仕事はそんなに大変じゃなくて、マイペースで進めているようだし。
過去に、そんな経験があったとも聞いていない。
そういえば、美智子には、過去に付き合っていた人がいるらしい。
その人のことは一切話さないが、まあ、そんなもんだろう。
誰も隠したい過去の1つや2つはある。
でも、そういえば、美智子は、お腹に手術の痕があることをすごく気にしている。
どうも、その男性と関係があるような気がする。
あの夢は、そのことと関係しているんだろうか?
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