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第1章 死ねない
3話 100年の計
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「お嬢様。ご無事だったのですね。」
「権三、お前も無事だったのね。よかった。私は死ぬはずないことは知っているでしょう。」
「そうでした。医師の平蔵も無事です。まずは、比較的被害が少ない浦和の別宅に避難しましょう。」
「わかったわ。お世話になります。」
私たちは、瓦礫で歩きづらい30Kmの道を歩き、2日後に浦和に到着した。
そして、家に到着した途端、2人とも、倒れるように寝てしまった。
権三は、私の家に代々仕える執事。
そして、あの事件からも、私をずっと支えてくれている。
私が保有する資産も管理してくれて、生きていくのに困ることはない。
目覚めた私に、権三は暖かいスープを出してくれた。
スープを飲んでいると、権三から今後の生活について提案があったの。
「あの事件から16年経って、お嬢様は36歳のはずですが、いまだに20歳の頃のままで、お美しく、若々しいのは素晴らしいことです。でも、現実世界では、化け物じゃないかと奇異にみられ、これから生きていくのはとても困難だと思います。そこで、鷺ノ宮家と縁が深かった菱丸商事の会長にお願いして、仙台、東京、名古屋、大阪、広島にある、そのグループ会社で20年ごとに地域を変えて、生きていただくことにしました。」
「どういうこと?」
権三は紙に絵を書き始めた。
「これから20年は、仙台にある菱丸自動車という会社で、20歳の事務社員として入社し、40歳まで働いてもらう。そして、その後は、大阪にある菱丸建設という会社で、同じように働いてもらう。これを繰り返せば、この権三が死んでも、ずっと生きていけます。」
「菱丸商事に、ずっと協力してもらえるかしら。」
「それは、歴代の社長の引き継ぎ事項として、お金を渡して契約をしました。また、大量の株式も購入し、株主としては意見はなにも言わないということで委任状も出しています。もう一つ、契約に違反すると、死ぬことがないお嬢様から、ご家族全員が殺されると思うと脅しています。」
「それじゃぁ私はまるで化け物じゃない。ひどいわ。でも、ありがとう。私のために言ってくれたのね。任せるわ。」
権三は、自分のスープを飲み、一息ついた後、再び話し始めたの。
「もう一つ。年齢相当の戸籍がないと困るでしょうから、この戦後の混乱に乗じて、5つ戸籍を作りました。そして、20年後に行く場所の戸籍に、医師の平蔵から出産証明書を出してもらう。つまり、仙台で働き始める時に、大阪では女の子が生まれたと届けて、20年後には、お母さんとしては死亡し、その娘である20歳の女性として大阪で暮らし始めるということを繰り返す。これで、ずっと、暮らしていけるはずです。」
「平蔵も歳をとるし、本当に続けられるのかしら。」
「平蔵にもお金を渡していて、その子孫にもお願いしてもらえることになっています。また、菱丸商事と同じように脅してありますし。」
「私には、よく分からないからお任せするわ。」
「あと、それぞれの地域で暮らせる家を手配しました。お嬢様には狭いとお感じになられると思いますが、お許しください。また、その家は、定期的に換気、掃除をする業者もお願いしていて、不動産購入費用、維持費用を差し引いて残った財産を、先ほど申したとおり、菱丸商事の株に投資することにしました。まだ、かなりのお金が残っているので、配当金もそれなりに入ると思います。贅沢はできませんが、庶民の生活としては十分に暮らしていけるものと思います。私はいつまで生きていられるか分かりませんが、お嬢様の将来に向けてすべきことは、なんとかできたと思っています。贅沢な生活をしていただけないことだけが心残りでございます。」
「当然でしょう。ずっと死ねない私の200年後の生活費とか確保できないのは理解しているわ。むしろ、権三には感謝しかない。本当に、ありがとう。」
「もったいないお言葉でございます。」
すっかり老けた権三は涙もろくなったのか、目に手をあてて泣いていたわ。
そして、私は仙台に行き、菱丸自動車の事務員として働き始めた。
「権三、お前も無事だったのね。よかった。私は死ぬはずないことは知っているでしょう。」
「そうでした。医師の平蔵も無事です。まずは、比較的被害が少ない浦和の別宅に避難しましょう。」
「わかったわ。お世話になります。」
私たちは、瓦礫で歩きづらい30Kmの道を歩き、2日後に浦和に到着した。
そして、家に到着した途端、2人とも、倒れるように寝てしまった。
権三は、私の家に代々仕える執事。
そして、あの事件からも、私をずっと支えてくれている。
私が保有する資産も管理してくれて、生きていくのに困ることはない。
目覚めた私に、権三は暖かいスープを出してくれた。
スープを飲んでいると、権三から今後の生活について提案があったの。
「あの事件から16年経って、お嬢様は36歳のはずですが、いまだに20歳の頃のままで、お美しく、若々しいのは素晴らしいことです。でも、現実世界では、化け物じゃないかと奇異にみられ、これから生きていくのはとても困難だと思います。そこで、鷺ノ宮家と縁が深かった菱丸商事の会長にお願いして、仙台、東京、名古屋、大阪、広島にある、そのグループ会社で20年ごとに地域を変えて、生きていただくことにしました。」
「どういうこと?」
権三は紙に絵を書き始めた。
「これから20年は、仙台にある菱丸自動車という会社で、20歳の事務社員として入社し、40歳まで働いてもらう。そして、その後は、大阪にある菱丸建設という会社で、同じように働いてもらう。これを繰り返せば、この権三が死んでも、ずっと生きていけます。」
「菱丸商事に、ずっと協力してもらえるかしら。」
「それは、歴代の社長の引き継ぎ事項として、お金を渡して契約をしました。また、大量の株式も購入し、株主としては意見はなにも言わないということで委任状も出しています。もう一つ、契約に違反すると、死ぬことがないお嬢様から、ご家族全員が殺されると思うと脅しています。」
「それじゃぁ私はまるで化け物じゃない。ひどいわ。でも、ありがとう。私のために言ってくれたのね。任せるわ。」
権三は、自分のスープを飲み、一息ついた後、再び話し始めたの。
「もう一つ。年齢相当の戸籍がないと困るでしょうから、この戦後の混乱に乗じて、5つ戸籍を作りました。そして、20年後に行く場所の戸籍に、医師の平蔵から出産証明書を出してもらう。つまり、仙台で働き始める時に、大阪では女の子が生まれたと届けて、20年後には、お母さんとしては死亡し、その娘である20歳の女性として大阪で暮らし始めるということを繰り返す。これで、ずっと、暮らしていけるはずです。」
「平蔵も歳をとるし、本当に続けられるのかしら。」
「平蔵にもお金を渡していて、その子孫にもお願いしてもらえることになっています。また、菱丸商事と同じように脅してありますし。」
「私には、よく分からないからお任せするわ。」
「あと、それぞれの地域で暮らせる家を手配しました。お嬢様には狭いとお感じになられると思いますが、お許しください。また、その家は、定期的に換気、掃除をする業者もお願いしていて、不動産購入費用、維持費用を差し引いて残った財産を、先ほど申したとおり、菱丸商事の株に投資することにしました。まだ、かなりのお金が残っているので、配当金もそれなりに入ると思います。贅沢はできませんが、庶民の生活としては十分に暮らしていけるものと思います。私はいつまで生きていられるか分かりませんが、お嬢様の将来に向けてすべきことは、なんとかできたと思っています。贅沢な生活をしていただけないことだけが心残りでございます。」
「当然でしょう。ずっと死ねない私の200年後の生活費とか確保できないのは理解しているわ。むしろ、権三には感謝しかない。本当に、ありがとう。」
「もったいないお言葉でございます。」
すっかり老けた権三は涙もろくなったのか、目に手をあてて泣いていたわ。
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