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13話 闇の世界へ

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弁護士になってから3ヶ月ぐらい経った頃かしら。
幹事長に呼ばれたの。

佐藤前幹事長とは違い、体は締まり、突き刺すような目をしている。
実務家で、隙がない感じね。
まあ、佐藤前幹事長を追い払う実力者だものね。

「佐久間さん、君のことは優秀だと聞いているよ。検事のことは残念だったね。」
「あなた達が仕組んだんでしょう。よく、そんなことを言えますね。」
「まあ、そこまで言わないでくださいよ。さて、今日はお願いがあって、来ていただきました。」
「なんですか?」
「私は、今度の総裁選に出馬する。それで、対抗馬の山本総務会長を失脚してもらいたいんだ。」
「弁護士の仕事と関係があるんですか?」
「いや、検事の経験を活かし、違法行為を行っているとロジックを固め、週刊誌に情報を流してもらいたい。成功すれば、聞いていると思うが、3,000万円を渡すから安心してもらいたい。」
「断ったら?」
「帰り道には気をつけてもらうしかないね。」
「断るという選択肢はないんですね。」
「ああ。」

まずは、得意技でいこうか。
幹事長のつてで総務会長が通うクラブに入り込んだ。
凛という源氏名のホステスとして。

「山本先生、うちで人気の凛です。綺麗で上品でしょう。先生に気に入ってもらえると思って。さあ、先生の横にお座りなさい。」
「山本先生。よろしくお願いいたします。凛と申します。お名刺をどうぞ。では、ウィスキーの水割りをお作りいたしますね。」
「君も飲んで。」
「嬉しい。ではビールをいただきます。」
「では乾杯。」
「この店では若めだね。何歳だ?」
「26歳になります。」
「いいね。やっぱり女は若い子がいい。」

そう言って、私のももに手を載せたの。
これはいけるかもしれない。

「先生ったら、ここではだめですよ。」
「そんなこと言わずにさ。誘ったら、外で会ってくれるのかい。」
「どうしようかしら。」

お店で騒ぐことはできない。
だから、ホテルに誘い、乱暴をされたと騒ぐ。
こんなシナリオを考えたけど、なかなか進まなかった。

「先生、お誘いしていただけるというお話しでしたけど、いつまで待てばいいんですか?」
「そんなに急かすなよ。もうすぐ総裁選があるし、自粛しないとな。それまで待っててよ。」
「そんなことだとお高くつきますよ。お寿司とか。」
「わかった、わかった。ところで、最近、息子が言うことを聞かないので困ってるんだ。私より近い年齢だし、なんかアドバイスとかあるかい。」
「息子さんは、今、何歳なんですか?」
「できない子でさ、江戸大学の文学部にいるんだよ。できない子の方がかわいいと言うだろう。この頃は、大学に行っていないようでさ、女の子連れてドライブばかりしているんだよ。どうしたんだと怒ったら、家を出て行ってしまってさ。」

これは使える。
私は組織に連絡をした。

「山本総務会長の息子が江戸大学の文学部に入っている。まずは、その子を探して。」
「それで、どうするんだい?」
「ドライブが趣味だそうだから、運転の途中でブレーキが効かなくなるよう細工してよ。」
「事故を起こさせるんだな。」
「そう。山本総務会長の息子が事故なんて、大事件じゃない。」

組織に伝え、その息子の車のブレーキを壊した。
そして、息子は人を轢き殺す事件を起こしたの。
しかも、事故の相手は死亡して、息子は怖くなってその場を立ち去った。

車は大破し、ナンバープレートがあったからすぐに犯人は判明したわ。
息子は、なにがあったか分からないと混乱しているらしい。
総務会長は、あろうことか、この事件をもみ消した。

息子が大切だったのよね。
でも、それ以上に自分の評判への悪影響を気にしたんだと思う。

この機を逃さなかった。

週刊誌に、総務会長について情報提供をした。
息子が事故を起こし、1人が死亡したこと。
そして息子はひき逃げして逮捕された。
これを、総務会長の立場を利用してもみ消したこと。

毎日のように、総務会長を批判する報道がなされた。
そして、総務会長の曖昧な対応が更に火を注いで炎上したの。
その結果、総務会長を辞任するだけでなく、政党から除名された。
そして、議員辞職することになったの。

私は、別に総務会長には悪意はない。
幹事長に狙われたのが運の尽きだったわね。

幹事長は、それを契機に総理大臣に上り詰めていった。
私は、問題が起きる都度、解決に向けて動いたの。
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