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12話 挫折
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暴力事件の被疑者が、あの男性だった。
そう、幹事長のSPをしていたあの男。
男は気づいていないようだった。
まさか、私が検事になっているなんて思わないだろうし。
また、凛はもう40歳を過ぎている。
こんな若い女性だなんて思うはずもない。
そう、この男性を刑務所にいれてしまえば、私は安泰。
私は警察から提出された証拠で、5年の懲役刑だと主張した。
最終的に、私の主張がとおり、刑務所送りとなった。
やったわね。
でも、その男性は去る時、私の顔を見て妙な顔をしていた。
そういえば、先日の手紙は凛の妹から送られていた。
顔はとても似てる。
もしかしたら。
そんな顔だった。
でも、気にしてもしかたがない。
前に進むだけ。
私は、順調に、各所を巡り、検事として仕事を回していた。
そんな時だった。
上司から呼び出しがあったの。
昇格の通知かしら。
私は、いそいそと上司のところに向かうと個室に通された。
「佐久間さん、君にも言い分はあるだろうけど、検事をやめてもらいたい。」
「いきなり、どういうことですか?」
「君が、昔、ホステスをしていたって匿名の写真が送られてきたんだ。」
「そんなのフェイクですよ。写真を見せてください。」
写真をみると、たしかに凛のころの写真。
「この写真はいつのものかわかりませんが、私より歳とっているじゃないですか。別人ですよ。」
「いや、ホステスは化粧をするから、年齢がわからないんだろう。でも、君とそっくりだ。」
「合成写真じゃないんですか?」
「その可能性も考えて専門家に確認したが、合成ではないと判定が出た。さらに、この店に確認したところ、凛という名前で働いていた女性が、君とそっくりだと証言していた。なんだったら、一緒にその店に行って、違うと言ってみるかな?」
「いえ、違うのに・・・。」
「その顔じゃ、本当なんだね。検事は品行方正でないといけないから、辞めてもらいたいんだ。」
「そんなことできません。私、今の仕事に誇りを持っているので。」
「そこまでいうなら、懲戒審査会にかけて懲戒にしてもらうしかない。そうすると、再就職も難しくなるんだが。今、自己都合で辞めれば、退職金もでるし、経歴に傷はつかない。」
もう、外堀は埋められているみたい。
あの男性が政治家を通じて、検事の上層部に手を回したに違いない。
確かにホステスは良くないわよ。
でも、それだけでクビにしようなんて普通は考えないもの。
これ以上、抵抗するのは無理ね。
私は、退職届けを出して、その場を去ることにした。
どうして、こうなっちゃったんだろう。
涙を流しながら、黄色一面になったイチョウ並木の下を歩いていた。
昔は明るい将来を象徴するイチョウだった。
でも、今は、枯れ葉として落ちるイチョウとしか見えない。
その時、後ろから声をかけられたの。
「少しいいですか?」
「誰ですか?」
「幹事長を守る者といえばわかりますよね。」
「よくわかりませんが、なんですか?」
「とぼけなくてもいいでしょう。私、昔、凛という女性に会ったけど、あなたと瓜二つだと関心してるんです。しかも、最近、同僚にメールが来て、凛には妹がいるんだって知ったんです。そこで、ぴーんときました。あなたは凛の妹だと。」
「凛さんなんて知りません。」
「そうなんですか。それにしても、検事を退職されたなんて残念でしたね。」
「どうして、そのことを知っているんですか?」
「だって、手を回したのは我々の組織ですから。」
「じゃあ、写真を送ったのもあなたなの?」
「そうですよ。我々は、検事総長にも顔がききますしね。侮りましたね。」
「ひどい。」
「そうでもないと思いますよ。検事なんて公務員だし、儲からないでしょう。私達のことをサポートする弁護士事務所で働けば、稼げますから。」
「そこまで知ってるなら、逃げられないのね。」
「お察しのとおり。頭がいいですからね。じゃあ、事務所に一緒に行きましょう。」
私は、その男性に連れられて事務所に向かった。
そこでは、少し前に私が刑務所に入れたあの男性もいたの。
「どうして、ここにいるの? 刑務所に送ったのに。」
「我々の組織を甘く見てもらっては困るな。あなた、強姦されたってTVに出てたでしょう。凛より若いけど、顔がそっくりだと、その時からマークしてたんですよ。凛と関係があるに違いないって。まさか裁判所であなたから糾弾されるとは思ってなかったですけどね。でも、声もそっくりですね。あなたの声は、普通の女性と違って、少し特徴がある。ところで凛とはどういう関係なんですか? 本当に妹ということでもなさそうだし。」
「それは言えない。」
「まあ、あなたが働いてもらえるのなら、別にどうでもいいですけど。」
「で、何をしたらいいの?」
「私達は、強い組織力を使って、いろいろな行動を取っているんです。もちろん、よい世界にするためという信念に基づいてですよ。だから、悪いことじゃないんですが、今の法律の不備というか、犯罪と言われるような行為もあるんです。そんな時に、法律違反じゃないと弁護してもらいたいんです。」
「言いたいことは分かったわ。」
「あなたは賢い。だから負けることもないと思います。成功のたびに3,000万円をお渡しします。あなたもそれで楽しく暮らせる。お互いにいい話しでしょう。」
それから弁護士登録を行い、事務所所属の弁護士となった。
そう、幹事長のSPをしていたあの男。
男は気づいていないようだった。
まさか、私が検事になっているなんて思わないだろうし。
また、凛はもう40歳を過ぎている。
こんな若い女性だなんて思うはずもない。
そう、この男性を刑務所にいれてしまえば、私は安泰。
私は警察から提出された証拠で、5年の懲役刑だと主張した。
最終的に、私の主張がとおり、刑務所送りとなった。
やったわね。
でも、その男性は去る時、私の顔を見て妙な顔をしていた。
そういえば、先日の手紙は凛の妹から送られていた。
顔はとても似てる。
もしかしたら。
そんな顔だった。
でも、気にしてもしかたがない。
前に進むだけ。
私は、順調に、各所を巡り、検事として仕事を回していた。
そんな時だった。
上司から呼び出しがあったの。
昇格の通知かしら。
私は、いそいそと上司のところに向かうと個室に通された。
「佐久間さん、君にも言い分はあるだろうけど、検事をやめてもらいたい。」
「いきなり、どういうことですか?」
「君が、昔、ホステスをしていたって匿名の写真が送られてきたんだ。」
「そんなのフェイクですよ。写真を見せてください。」
写真をみると、たしかに凛のころの写真。
「この写真はいつのものかわかりませんが、私より歳とっているじゃないですか。別人ですよ。」
「いや、ホステスは化粧をするから、年齢がわからないんだろう。でも、君とそっくりだ。」
「合成写真じゃないんですか?」
「その可能性も考えて専門家に確認したが、合成ではないと判定が出た。さらに、この店に確認したところ、凛という名前で働いていた女性が、君とそっくりだと証言していた。なんだったら、一緒にその店に行って、違うと言ってみるかな?」
「いえ、違うのに・・・。」
「その顔じゃ、本当なんだね。検事は品行方正でないといけないから、辞めてもらいたいんだ。」
「そんなことできません。私、今の仕事に誇りを持っているので。」
「そこまでいうなら、懲戒審査会にかけて懲戒にしてもらうしかない。そうすると、再就職も難しくなるんだが。今、自己都合で辞めれば、退職金もでるし、経歴に傷はつかない。」
もう、外堀は埋められているみたい。
あの男性が政治家を通じて、検事の上層部に手を回したに違いない。
確かにホステスは良くないわよ。
でも、それだけでクビにしようなんて普通は考えないもの。
これ以上、抵抗するのは無理ね。
私は、退職届けを出して、その場を去ることにした。
どうして、こうなっちゃったんだろう。
涙を流しながら、黄色一面になったイチョウ並木の下を歩いていた。
昔は明るい将来を象徴するイチョウだった。
でも、今は、枯れ葉として落ちるイチョウとしか見えない。
その時、後ろから声をかけられたの。
「少しいいですか?」
「誰ですか?」
「幹事長を守る者といえばわかりますよね。」
「よくわかりませんが、なんですか?」
「とぼけなくてもいいでしょう。私、昔、凛という女性に会ったけど、あなたと瓜二つだと関心してるんです。しかも、最近、同僚にメールが来て、凛には妹がいるんだって知ったんです。そこで、ぴーんときました。あなたは凛の妹だと。」
「凛さんなんて知りません。」
「そうなんですか。それにしても、検事を退職されたなんて残念でしたね。」
「どうして、そのことを知っているんですか?」
「だって、手を回したのは我々の組織ですから。」
「じゃあ、写真を送ったのもあなたなの?」
「そうですよ。我々は、検事総長にも顔がききますしね。侮りましたね。」
「ひどい。」
「そうでもないと思いますよ。検事なんて公務員だし、儲からないでしょう。私達のことをサポートする弁護士事務所で働けば、稼げますから。」
「そこまで知ってるなら、逃げられないのね。」
「お察しのとおり。頭がいいですからね。じゃあ、事務所に一緒に行きましょう。」
私は、その男性に連れられて事務所に向かった。
そこでは、少し前に私が刑務所に入れたあの男性もいたの。
「どうして、ここにいるの? 刑務所に送ったのに。」
「我々の組織を甘く見てもらっては困るな。あなた、強姦されたってTVに出てたでしょう。凛より若いけど、顔がそっくりだと、その時からマークしてたんですよ。凛と関係があるに違いないって。まさか裁判所であなたから糾弾されるとは思ってなかったですけどね。でも、声もそっくりですね。あなたの声は、普通の女性と違って、少し特徴がある。ところで凛とはどういう関係なんですか? 本当に妹ということでもなさそうだし。」
「それは言えない。」
「まあ、あなたが働いてもらえるのなら、別にどうでもいいですけど。」
「で、何をしたらいいの?」
「私達は、強い組織力を使って、いろいろな行動を取っているんです。もちろん、よい世界にするためという信念に基づいてですよ。だから、悪いことじゃないんですが、今の法律の不備というか、犯罪と言われるような行為もあるんです。そんな時に、法律違反じゃないと弁護してもらいたいんです。」
「言いたいことは分かったわ。」
「あなたは賢い。だから負けることもないと思います。成功のたびに3,000万円をお渡しします。あなたもそれで楽しく暮らせる。お互いにいい話しでしょう。」
それから弁護士登録を行い、事務所所属の弁護士となった。
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