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5話 秘密の会合
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私は、毎朝、隅田川テラスでランニングしている。
広々としていて、高層ビルもあり、とても素敵な風景の中を走れる。
今朝も、いい気分でランニングをしていた。
その時だった。
厳しい目をした背広姿の男性が私の前に立ちふさがったの。
避けようとしたけど、あきらかに私の進路を妨害している。
私、何か捕まるようなことしたかしら。
そんなことはしていない。
じゃあ、あの人は誰なの?
暴力団とか?
「話しがあるんですが、少しお時間をいただけないですか?」
「誰なんですか?」
「暴力とかはふるいません。少しだけでいいんです。」
「このベンチで5分ぐらいなら。」
「では、ここで話しましょう。昨晩、佐藤幹事長のお話しを聞いていましたよね。」
「どうかな。」
「すべて分かっているんです。お話しいただいた方が、あなたのためですよ。」
「やっぱり、暴力団とかですか? 私はここで失礼します。」
「そう言わないで、少し、付き合ってくださいよ。」
私のことはかなり知っているようだ。
昨晩、佐藤先生と話したことも知っているし。
逃げても、逃げ切れないと思う。
「それで、何なんですか?」
「話したことを詳しく教えてください。」
「そんなこと話せる訳ないじゃないですか。そういう仕事ですし。」
「あなたにはご迷惑をおかけしないことはお約束します。」
「どうして、昨晩のことをご存知なんですか?」
「それは知らないほうがあなたのためだ。」
「で、私には、どういうメリットがあるんですか?」
「お話しいただければ、1,000万円、お渡ししましょう。」
私は迷った。
そんなお金、貰えるはずがない。
貰ったら、弱みを握られる。
とは言っても、魅力的な金額よね。
「2,3分話しただけなのよ。それでも1,000万円くれるの?」
「ええ、ここに現金を用意しています。」
「ところで、あなたは誰なの?」
「それも、知らないほうがあなたのためかと。」
袋の中身をみると、ランニング用の小さなバックパックが入っている。
そのファスナーを開けると、現金が入っていた。
「これを背負って、ランニングを続け、家に戻ってください。だれも、気づきませんから。」
昨晩、聞いたのは少しだけ。
それぐらい話してもいいんじゃないかしら。
でも、1,000万円も出すなんて、相手には大切な情報なんだと思う。
迷った様子に、急かすようにその男性は話してきた。
「断れば、どうなるかわかっていますか?」
「わかりました。佐藤幹事長は、先週、いつだったかな? そう先週の火曜日に総務大臣と会食をして、その時に、青森万博誘致に向けて5億円を渡したって。それを総務大臣は関係する所に配るんだろうって言っていた。また、今週月曜日に岩手県知事の弔事に、秘書を通じて50万円を渡したって言っていた。それぐらい。いいかしら。」
「ありがとうございます。では、このお金をお渡しします。また、来ますから、いろいろと情報提供をお願いします。」
そう言って、その男性は去っていった。
なんだったんだろう。
でも、私はこのことは忘れることにした。
誰とも会っていないし、何も言っていない。
もし、何かあれば、横のお客が盗み聞きしていたことにすればいい。
このお金も、私がこれまで稼いできたもの。
銀座の人気ホステスなら、そんなこともあるだろう。
それから1ヶ月後だと思う。
私は、朝のニュースに驚いた。
広々としていて、高層ビルもあり、とても素敵な風景の中を走れる。
今朝も、いい気分でランニングをしていた。
その時だった。
厳しい目をした背広姿の男性が私の前に立ちふさがったの。
避けようとしたけど、あきらかに私の進路を妨害している。
私、何か捕まるようなことしたかしら。
そんなことはしていない。
じゃあ、あの人は誰なの?
暴力団とか?
「話しがあるんですが、少しお時間をいただけないですか?」
「誰なんですか?」
「暴力とかはふるいません。少しだけでいいんです。」
「このベンチで5分ぐらいなら。」
「では、ここで話しましょう。昨晩、佐藤幹事長のお話しを聞いていましたよね。」
「どうかな。」
「すべて分かっているんです。お話しいただいた方が、あなたのためですよ。」
「やっぱり、暴力団とかですか? 私はここで失礼します。」
「そう言わないで、少し、付き合ってくださいよ。」
私のことはかなり知っているようだ。
昨晩、佐藤先生と話したことも知っているし。
逃げても、逃げ切れないと思う。
「それで、何なんですか?」
「話したことを詳しく教えてください。」
「そんなこと話せる訳ないじゃないですか。そういう仕事ですし。」
「あなたにはご迷惑をおかけしないことはお約束します。」
「どうして、昨晩のことをご存知なんですか?」
「それは知らないほうがあなたのためだ。」
「で、私には、どういうメリットがあるんですか?」
「お話しいただければ、1,000万円、お渡ししましょう。」
私は迷った。
そんなお金、貰えるはずがない。
貰ったら、弱みを握られる。
とは言っても、魅力的な金額よね。
「2,3分話しただけなのよ。それでも1,000万円くれるの?」
「ええ、ここに現金を用意しています。」
「ところで、あなたは誰なの?」
「それも、知らないほうがあなたのためかと。」
袋の中身をみると、ランニング用の小さなバックパックが入っている。
そのファスナーを開けると、現金が入っていた。
「これを背負って、ランニングを続け、家に戻ってください。だれも、気づきませんから。」
昨晩、聞いたのは少しだけ。
それぐらい話してもいいんじゃないかしら。
でも、1,000万円も出すなんて、相手には大切な情報なんだと思う。
迷った様子に、急かすようにその男性は話してきた。
「断れば、どうなるかわかっていますか?」
「わかりました。佐藤幹事長は、先週、いつだったかな? そう先週の火曜日に総務大臣と会食をして、その時に、青森万博誘致に向けて5億円を渡したって。それを総務大臣は関係する所に配るんだろうって言っていた。また、今週月曜日に岩手県知事の弔事に、秘書を通じて50万円を渡したって言っていた。それぐらい。いいかしら。」
「ありがとうございます。では、このお金をお渡しします。また、来ますから、いろいろと情報提供をお願いします。」
そう言って、その男性は去っていった。
なんだったんだろう。
でも、私はこのことは忘れることにした。
誰とも会っていないし、何も言っていない。
もし、何かあれば、横のお客が盗み聞きしていたことにすればいい。
このお金も、私がこれまで稼いできたもの。
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それから1ヶ月後だと思う。
私は、朝のニュースに驚いた。
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