おじさん、女子高生になる

１話 子宮と卵巣

「こんなことがあるなんて。」

この医者の言葉から私の女性人生は始まった。

私は、60歳で定年を迎えた男性。
数日前、ひどい腹痛に襲われた。
ずっとお腹がねじれる感じで痛い。

治る気配がなかったので病院に来たんだ。
でも、医師はとんでもないことを言い出した。

「あなたの体には卵巣と子宮がありますね。」
「卵巣と子宮って、女性のあれですか。」
「そうです。男性の体の中に卵巣が見つかるケースは稀ですがあります。卵精巣性性分化疾患なんて呼ばれています。人間の体はいろいろです。卵巣はなく、精巣を持っていながら、男性器に成長できずに女性の体として成長する方もいます。だから、あなたは異常とかではなく、稀ですが、現存するタイプだとお考えください。」
「でも、妻と子供もいますが。」
「精巣は正常に育ったので、当然、子供もできます。」
「それで、先生が驚いていたのはどういうことですか？」
「それなんですが、おそらく、あなたの卵巣と子宮は、これまで機能停止していたようですが、最近、潤ってきて、活動を始めたということだと思います。」

私は、ずっと言えなかったことがあった。
女装をしたい、大きなバストになりたい。
そういう欲求がずっとあったんだ。

男性が好きなわけじゃない。
単に女性の姿になりたいだけ。
離婚の原因は私の女装が妻にバレたことだった。

でも、そんな気持ちになったのは、これが理由なのかもしれない。

「それで、今回の腹痛ですが、いわゆる生理が始まったのです。問題は、子宮の先端が、体内の皮膚に癒着していて、このままだと数日後に、子宮から排出される血が子宮に逆流し、破裂する可能性があります。また、どこかに排出する口を作るとしても、あなたの精子が卵巣に入り込んで、子供ができてしまうリスクもあります。」
「で、どうすればいいのですか？」
「ご提案は、速やかに子宮と卵巣を取り除くということです。」
「少しいいですか？」
「どうぞ。」
「子宮と卵巣をそのままにし、男性器を取り除いて女性の体にすることは可能ですか？」