滅びゆく都会の住人

一宮 沙耶

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第1章 都会生活

4話 離婚

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 あの事件をきっかけに、男性と付き合いたいと思わなくなったし、結婚願望とかも持てなくなった。

 もともと1人が好きなタイプだけど、逆に、男性から遠ざかるような生活を続けたの。大学の中では女子大だから男性は先生とかだけど、学校をでて駅までのイチョウ並木には近くの大学に通う男性も多く、目を伏せて歩いた。

 そんなだから、その時期は、景色から色が消えた。気持ちが荒んでいたのかもしれない。大学でも、暗い私に話しかける人はいなくなり、1人で過ごす時間が増えていった。

 でも、会社に入って1年ぐらい経ったころかな。同じ職場の先輩と帰り道であって、声をかけられたの。別に関心を抱いたことはない人で、そういう人がいるとは知ってた程度だったかな。

「今井さん、これから帰りだよね。時間があれば、これから飲みに行かない?」
「でも、2人でというのは少し・・・」
「いいじゃないか。この前、美味しい焼き鳥のお店を見つけたんだ。ごちそうするから、いいだろう。」

 一応、先輩だし、無視もできないから、一緒に飲みにいくことにした。そして、適当に軽く笑い続けながら、話しを聞いていたの。

「今井さんは、仕事ができるよね。すごいと思う。」
「ありがとうございます。」

 なんか興味がなくて、話す話題もなくて、ずっと笑顔でいたら、どうも、清楚な女性と勘違いしたみたい。先輩は、気持ちよくなったのか、ずっと得意げに話していた。

 でも、焼き鳥って、服に匂いがつくし、美味しいけど、来るならTシャツとかで来たかったな。こんなスーツでくると、クリーニングに出さないと。ごちそうしてくれると言っていたけど、クリーニング代も出してもらいたい。

 先輩は、ご機嫌だったけど、私は、そんなことを考えて、しらけていた。

 そしてお店をでて駅に向かって歩いていたら、駅についてLINE交換してと言われたの。お酒も入って、自分中心の話しもできて、よほどご満悦だったんだと思う。

 でも、職場で嫌な雰囲気になるのも避けたかったし、まあ、連絡がきても適当に返事しておけばいいだろうと思って、LINE交換をしたわ。

 そうすると、数日後に連絡があって、また飲みに誘われた。面倒だと思ったけど、何回も連絡がきたから、まあいいかと、また一緒に飲むことになってしまった。

 顔はイケメンだったし、周りの同僚も彼がいたから、そろそろ彼がいないのも不自然だと思い、なんとなく付き合うようになった。

 確かに、クリスマスイブとか、外を1人で歩くと嫌になるし、タンプレとかもらえると嬉しいとは思う。でも、先輩と付き合って、ワクワクしたことはなかったかな。

 そんななか、作り笑いする時間も増えたのが嫌で、忙しいって距離を取るようにして、自然消滅をさせることにした。

 あの日だったのもあるけど、イライラしてきて、もう別れると言ったら、彼からはどうしてとか聞いてきた。説明するのも本当に面倒。もともと、初めから、そんな気分じゃなかったんだから察してよ。

 結局、先輩とは別れ、職場ではなんとなく雰囲気が悪くなって、先輩は、自分で希望をだしたのかはわからないけど、別の部署に異動していった。

 そんな私も、しばらくすると、なんとなく周りの圧力に負けて結婚することになった。親からいつになったら結婚するんだと毎回言われるのが嫌だったから。

 婚活サイトで、それなりの年収と学歴のある医者がいて、数回会ったら、まあ優しかったし、周りも結婚してるんだからということで、成り行きで結婚生活が始まった。

 結婚前は、自立してる女性が好きだから私を選んだと言っていたわ。結婚しても、自分でやりたいことをずっとしていてねと言われの。だから仕事に専念していたら、一緒に過ごせる時間が少ないから寂しいとか言い始めた。

 男女って、相手に向かうベクトルを持つ人と、相手とは逆の方向にベクトルを持つ人がいるわよね。男女両方が相手にベクトルが向かうか、どちらとも外にベクトルが向かうと上手くいくんだと思う。

 でも、どちらかが相手を求め、相手が外にベクトルを向く関係だと、相手を求める人が辛くなって関係が破綻する。

 そんなことに気づいた時は遅かった。そんなこと言われても、お互いに自立して好きに生きる関係だということが気に入って結婚したのに、もっと自分をみてとか今更言われても。

 しばらく、我慢してたけど、結局、旦那が別の女性ができたから離婚したいと言われた。慰謝料ももらえたし、自由が戻ってきたから、まあいいっかという感じ。今どき、バツがついている人も多いから、もらい事故かな。

 そんなこともあって、今は1人の生活。親も、さすがに、もう結婚しなさいとは言わなくなったわね。

 でも、大学の時の友達から、子供が生まれた写真とか送られてくることが多くなって、また、子育てとかで連絡が取りづらくなって、自分だけこのままでいいのかなとは思うことはある。

 でも、もう結婚に興味はないし、今の生活を変えられないわ。目の下にシワとかできても、コンシーラーとかでごまかせば、なんとか過ごせるし、これからも、楽しく1人で過ごせると思って生きてきたんだし。

 そんな時に、友人から早く結婚したいと相談され、土曜日の夜に渋谷のバーカウンターで相談にのってあげてたってわけ。結婚なんて、いいことないって答えたの、気持ち、分かってくれたよね。
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