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第1章 都会生活
1話 彗星
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「結婚なんて、いいことないし、やめたら。せめて、そんなに焦らない方がいいわよ。」
「みうは、1回してるから、そう言えるけど、私はまだだし、もう30過ぎだと焦るわよ。女に生まれたんだから、子供は作りたいじゃない。」
「まあ、私には、子供はまだいないから、結婚の全てを知ってるわけじゃないけど。」
渋谷のバーカウンターで、土曜日の夜、友人と真っ赤なカクテルが注がれたグラスを傾けていた。
カウンターだけのお店。オープンバックスタイルの私の背中には、人が1人通るのも厳しいすぐ後ろの窓から渋谷の街の光が差し込む。都会に住む私には、こんな空間が合ってると思うし、これからも、こんな生活を続けたい。
そのために、夜遅くまで働いているし、休みだったはずの今日も、お客様からの突然の要請に対応するため、休日返上で対応し、仕事をがんばっているのだから。
そして、天井から細いワイヤーで吊り下げられた小さな照明は、目の前のカクテルグラスと、机の上に飾られた一輪のお花だけを照らし、全体的に暗い雰囲気を醸し出している。
気づかなかったけど、静かにシャンソンがバックミュージックとして流れていた。
20席ぐらいしかないバー。今夜だけなのかわからないけど、20代後半の女性ばかりで、暗いシックな雰囲気のなか、男性に気を使うことなく話せる。
高いカウンターチェアーに座り、足のつま先にハイヒールをひっかけ、ぶらぶらさせていた。
「結婚って、そんなに魅力ないかな。生活も安定するし、いつでも頼れる旦那さんが横にいてくれるなんて素敵だと思うけど。」
「住居費とかは楽になると思うけど、自由はなくなるよ。たとえば、梨沙の今の家に彼が来て住んだら、1部屋、使える部屋が減っちゃうし、リビングでは、お風呂上がりで下着だけで歩くとか、リラックスできないかもよ。窮屈でしょう。」
「もっと広い家に移ればいいじゃん。」
「そうすると、どの程度広い家に移るかによるけど、住居費は変わらないかもしれないじゃない。相手次第だけど、今より自由に使えるお金が増えるとは考えないほうがいいと思うけど。また、今日は寝てたいと思っても、彼が起こしてくるとか、なにかと自由にできない時間が増えるじゃない。」
「それがいいのよ。朝からベットでつんつんとかして楽しそう。」
「それは最初だけだって。人って、気づかずにこだわりとかあるのよ。でも、それって、人によって違うから、洗濯の仕方とか、お茶碗の洗い方とか、こうしないとダメっていうことと違うことを平気でしてくると腹が立つ。逆もそうで、こちらが何も考えずにしたことが、彼の気にさわって喧嘩になったりとかが増えてくるってわけ。つかず離れずで、恋愛しているのがちょうどいいのよ。」
「みうは、あまり人に依存するタイプじゃないから、そういうマイナス面だけが気になるんだと思う。私みたく、いつも寂しいと思うタイプだと、横に男性がいてくれれば、心が満たされるというか、安心できるのよ。」
「まあ、大半の人が結婚するんだから、そうかもね。でも、40代女性で5人に1人は未婚らしいから、今は、結婚自体に魅力を感じない人も増えているじゃないかな。」
結婚についての私たちの会話は、平行線のまま、ずっとこの調子で続いていた。女性どうしの会話では、いつもは、そうね、そうねと言っているけど、結婚に憧れをもつ女性には、バツイチ経験者として、いろいろと言いたくなってしまう。
そんな時、アメリカホワイトハウスでは、そんな会話とは全く違う緊迫の時間が流れていた。
「大統領、本当に国民に伝えなくていいのですか。」
「くどい。この作戦が失敗すれば、地球は灼熱の地獄となって人間は死に絶えるのだし、成功すれば、これまでどおりなんだ。2年後に彗星が地球に衝突するとみんなに伝えても、国民はどうしようもないし、混乱を煽るだけだろう。それで各国のトップとも、この結論に達したのだから、今更、何を言っているんだ。」
「でも、彗星の衝突の前に祈るとか、できることはまだあるのに・・・」
アメリカのホワイトハウスで大統領との会話がなされているとき、NASAでは、彗星への迎撃ミサイルの軌道計算などを進めていた。
「軌道計算は大丈夫だろうな。」
「計算はバッチリです。ただ、初めてのことなので、迎撃した後、すべての可能性が網羅できているかには不安もあります。」
「迎撃後のシミュレーションもしっかりとするしかない。」
「彗星の軌道がずれて地球との衝突を避けられるだけのインパクトは迎撃ミサイルで確保できています。2年後には、みんなで笑っていられますよ。地球を救う、この任務に携わることができて、2年後には友人とかに自慢ができますね。」
「まだ安心するな。テクノロジーの進化で2年前に衝突が分かったことは、神様に感謝だ。与えられたチャンスを十分に活かし、考えられる可能性を抽出し、あらゆる対策を講じておくのだ。さあ、皆集まって、各班ごとに検討を進めろ。」
「了解。検討を再開だ。」
「みうは、1回してるから、そう言えるけど、私はまだだし、もう30過ぎだと焦るわよ。女に生まれたんだから、子供は作りたいじゃない。」
「まあ、私には、子供はまだいないから、結婚の全てを知ってるわけじゃないけど。」
渋谷のバーカウンターで、土曜日の夜、友人と真っ赤なカクテルが注がれたグラスを傾けていた。
カウンターだけのお店。オープンバックスタイルの私の背中には、人が1人通るのも厳しいすぐ後ろの窓から渋谷の街の光が差し込む。都会に住む私には、こんな空間が合ってると思うし、これからも、こんな生活を続けたい。
そのために、夜遅くまで働いているし、休みだったはずの今日も、お客様からの突然の要請に対応するため、休日返上で対応し、仕事をがんばっているのだから。
そして、天井から細いワイヤーで吊り下げられた小さな照明は、目の前のカクテルグラスと、机の上に飾られた一輪のお花だけを照らし、全体的に暗い雰囲気を醸し出している。
気づかなかったけど、静かにシャンソンがバックミュージックとして流れていた。
20席ぐらいしかないバー。今夜だけなのかわからないけど、20代後半の女性ばかりで、暗いシックな雰囲気のなか、男性に気を使うことなく話せる。
高いカウンターチェアーに座り、足のつま先にハイヒールをひっかけ、ぶらぶらさせていた。
「結婚って、そんなに魅力ないかな。生活も安定するし、いつでも頼れる旦那さんが横にいてくれるなんて素敵だと思うけど。」
「住居費とかは楽になると思うけど、自由はなくなるよ。たとえば、梨沙の今の家に彼が来て住んだら、1部屋、使える部屋が減っちゃうし、リビングでは、お風呂上がりで下着だけで歩くとか、リラックスできないかもよ。窮屈でしょう。」
「もっと広い家に移ればいいじゃん。」
「そうすると、どの程度広い家に移るかによるけど、住居費は変わらないかもしれないじゃない。相手次第だけど、今より自由に使えるお金が増えるとは考えないほうがいいと思うけど。また、今日は寝てたいと思っても、彼が起こしてくるとか、なにかと自由にできない時間が増えるじゃない。」
「それがいいのよ。朝からベットでつんつんとかして楽しそう。」
「それは最初だけだって。人って、気づかずにこだわりとかあるのよ。でも、それって、人によって違うから、洗濯の仕方とか、お茶碗の洗い方とか、こうしないとダメっていうことと違うことを平気でしてくると腹が立つ。逆もそうで、こちらが何も考えずにしたことが、彼の気にさわって喧嘩になったりとかが増えてくるってわけ。つかず離れずで、恋愛しているのがちょうどいいのよ。」
「みうは、あまり人に依存するタイプじゃないから、そういうマイナス面だけが気になるんだと思う。私みたく、いつも寂しいと思うタイプだと、横に男性がいてくれれば、心が満たされるというか、安心できるのよ。」
「まあ、大半の人が結婚するんだから、そうかもね。でも、40代女性で5人に1人は未婚らしいから、今は、結婚自体に魅力を感じない人も増えているじゃないかな。」
結婚についての私たちの会話は、平行線のまま、ずっとこの調子で続いていた。女性どうしの会話では、いつもは、そうね、そうねと言っているけど、結婚に憧れをもつ女性には、バツイチ経験者として、いろいろと言いたくなってしまう。
そんな時、アメリカホワイトハウスでは、そんな会話とは全く違う緊迫の時間が流れていた。
「大統領、本当に国民に伝えなくていいのですか。」
「くどい。この作戦が失敗すれば、地球は灼熱の地獄となって人間は死に絶えるのだし、成功すれば、これまでどおりなんだ。2年後に彗星が地球に衝突するとみんなに伝えても、国民はどうしようもないし、混乱を煽るだけだろう。それで各国のトップとも、この結論に達したのだから、今更、何を言っているんだ。」
「でも、彗星の衝突の前に祈るとか、できることはまだあるのに・・・」
アメリカのホワイトハウスで大統領との会話がなされているとき、NASAでは、彗星への迎撃ミサイルの軌道計算などを進めていた。
「軌道計算は大丈夫だろうな。」
「計算はバッチリです。ただ、初めてのことなので、迎撃した後、すべての可能性が網羅できているかには不安もあります。」
「迎撃後のシミュレーションもしっかりとするしかない。」
「彗星の軌道がずれて地球との衝突を避けられるだけのインパクトは迎撃ミサイルで確保できています。2年後には、みんなで笑っていられますよ。地球を救う、この任務に携わることができて、2年後には友人とかに自慢ができますね。」
「まだ安心するな。テクノロジーの進化で2年前に衝突が分かったことは、神様に感謝だ。与えられたチャンスを十分に活かし、考えられる可能性を抽出し、あらゆる対策を講じておくのだ。さあ、皆集まって、各班ごとに検討を進めろ。」
「了解。検討を再開だ。」
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