結城 隆一郎 の事件簿 Seazon 5

一宮 沙耶

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第1章 私を殺した人

3話 桜井 早稀

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 私は、桜井 早希。歯科衛生士をしている。大学時代には、この美貌のおかげで、何人もの男から声をかけられ、何人もの男と付き合った。もちろん、いずれの男とも大人の関係を持ったわ。いつもお金持ちのボンボンを選んだから、かなり贅沢な大学生活を送らせてもらったわ。

 男なんてちょろい。適当に、微笑んでいれば、かわいいねって、なんでもしてくれる。特に、清楚系に弱い男が多いから、何も知らないと言って、家で静かにしている毎日とか言っていれば、こんな美女が見出されずにいる、他の男に汚されていない女だと、大抵は好きになってくれる。

 どうして、男って、こんなに簡単に騙されるのかしら。私の顔が小悪魔だからなの。誰もが清楚って思ってくれる、この顔は私の宝物。これだけでも、人生、楽しく生きていける。そして、若いうちに、大金持ちをゲットして、一生、楽して生きていくの。

 大金持ちと結婚して、旦那を殺し、遺産をがっぽりもらうというのもいいかもね。まずは男は条件だと思う。

 大学を出て、歯科衛生士をしているときに、結構流行っていてお金もたんまり儲けている歯医者を選んだ。そこにイケメンの先生がいたから、誘ったら、すぐに着いてきたわ。いつも、髪を直すとか、ナルシストっぽかったけど、贅沢はさせてくれた。

 でも、半年ぐらい付き合った時に、先生の方から、実は既婚者で、奥さんにバレそうだから別れてほしいと言ってきたの。

 私は、既婚者だと思ってなかったし、本当に結婚できると思っていたのにと、さめざめと泣いた。そして、人生を台無しにされた、奥様にも文句を言うと大騒ぎをしたら、慰謝料として300万円を出してきたのはびっくりだったわ。

 もしかしたら、もっと貰えるかもと思い、私の気持ちをお金で買うつもりなのと言ってみたら、500万円出すって。そこで、これ以上、騒いでも先生にご迷惑がかかるのは嫌なので、残念だけどお金で解決しますと引いた。本当に儲かった。笑っちゃう。

 その歯医者にはいられないので、今いる歯医者に移ることにした。そのうち、イケメンの三島という患者が来るようになって、保険が使えない治療とかいつもして、毎回、大金を支払っていくので、この人はお金持ちだと思った。

 予約表を見て、今日、三島が来ることは知っていたので、私は早退する手続きをとって、彼が帰る時間に、トイレから飛び出して、彼がいるエレベーターに飛び乗った。

 三島は、私を見て笑顔で、ここの歯医者の方ですよねと声をかけてきたので、ええと言いながら恥ずかしそうな顔をして下を向いた。そう、男性は清楚系が好きだもの。そして、勇気を絞り出すように下から見上げ、三島さんでしたっけと声をかけた。

 覚えていらしたんですねと言って、歯医者から駅まで一緒に歩いたが、彼は、ずっと話し続けた。そして、駅に着く少し前、せっかくだから少し飲みませんかと聞いてきた。

 私は、男性と2人で飲みに行ったことないしと言って、どうしようかなと迷ったふりをした後、少しだけだったらと答えた。彼は大喜びで、近くのイタリアンのお店に私を連れて行ってくれた。そこでは、私では頼まないような高いワインを頼んだから、やっぱり金持ちだったわという感じ。

 そこで、せっかくなので、どんな仕事をしているのかと聞いたの。彼は、親が会社を経営していて、自分は今は修行で丸菱商事にいると話していたわ。そう、ハーバードも出てるって。

 身につけているものを見ても、たんまりお金を持っていそう。そうそう、こういう上玉がいるのよね。これはゲットする価値があるわ。これまでの経験をフルに活かして、彼のハートを射抜いてあげるから。

 それからも、彼はずっと話していたので、ずっと笑顔で聞いていた。幸い、私は、お酒はとても強いので、全く酔っていなかったけど、少し酔っ払ったふりをした。そして、興味のある話しじゃなかったけど、すごい、すごいと相槌をうっていた。

 そのうち、映画とか一緒に行くことが増えたわ。清楚系を演じて、いつも何もせずに、夕食を食べて別れていたけど、ある日、手を握ってきたので、恥ずかしそうに下をむき、そして、笑顔で彼の顔を見上げた。そして、その頃から、彼のことを将生さんと呼ぶようになったわ。

 付き合って、1ヶ月ぐらい経った頃、家まで送ってもらった時に大雨が降ってきたので、家の中に誘ってみた。本当に、男って手の上ですぐに転がせる。私と寝たいって、顔に書いてあるもの。

 昨晩飲んで、冷蔵庫に残しておいたワインを将生に出して一緒に飲むことにした。ちょうどワインがあって、日頃からワイン1本飲むのに数日かかるとか、贅沢をしていないとかの雰囲気を出せて良かったわ。

 そして酔ったふりをしてベットに転んだら、将生、私にキスをし、抱いてきた。本当に計画どおり。そして経験がないふりをしたら、将生は信じたみたい。

 こんなこといつもしてることだけど、せっかくなので、痛かったと恥ずかしそうに言ってみた。彼は、初めてだったんだねと言って、私を暖かく抱きしめてくれたわ。私、処女のふりも上手いのよ。何回もやってるし。

 今日は本当に幸せだった、これからも大切にしてねと言って、将生の胸に顔を埋めたら、今日は楽しかったと、再度、抱きしめてくれた。これで、将生は私のもの。落ちたわ。そうして、しょっちゅう、私の部屋で会うようになった。

 でも、ある日、六本木でショッピングをしていると、将生が、ある女とレストランに入っていくのが見えた。その女は、将生と腕組みをして、ベタベタとしている。

 外から見てると、彼はそれほど楽しそうじゃないようだけど、その女は、可愛くもないのに、彼にずっと話しかけていて、どう見ても2人は付き合っているようにしか見えない。

 何、あの田舎くさい女は。まさか将生の彼女じゃないわよね。将生のお金は私のものよ。あんな女には渡さない。

 金に汚い女って、いっぱいいるものね。油断すると、すぐに取られちゃう。あの女も、エッチが上手いとか、何か技を使って、将生の心を縛ってるのかもしれない。

 別に、将生が他に女を作っても気にはしない。将生の全てのお金を私にくれるなら。でも、そんなことはないわよね。一緒にいれば情も移る。そのうち、半分のお金はあげたいとか言い出すものよ。だから、一切の妥協はできないの。

 少しでも油断すれば、メス豚たちが将生に群がってきて、お金をとっていく。

 私は、レストランを2人が出た後、女の後ろをついて行った。そして、恵比寿駅を降りて、その女が住んでいるアパートに入っていくところを見届けた。その日は、その近辺のホテルに泊まり、次の朝、その女のアパートを見張っていたら、朝7時に出てきて鍵を閉めた。1人暮らしのようね。

 その女を数日、尾行してみたけど、本当につまらない生活。家から会社に往復するだけの生活。そして、ダサい服、特徴のない顔、どうして将生は、こんなくだらない女と一緒にいるのかしら。お金持ちという感じでもないし。

 将生は私のもの。将生には似合わないし、あんな女は近づかせないようにしないと。将生も騙されちゃダメよ。
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