結城 隆一郎 の事件簿 Seazon 4

一宮 沙耶

文字の大きさ
上 下
7 / 7
第2章 パラレルワールド

5話 TAKE 2

しおりを挟む
 半年ぐらい前に、私は、老婆の占い師に出会った。

「警察に捕まりそうなんだけど、どうにか逃げられる方法はない?」
「あるよ。もう一人のあなたになればいいよ。」
「逃げられるんだったら、なんでもいいわ。でも、どういうこと?」

 眩しい朝日。私は、ベットで目覚めた。あれ、さっき、老婆の占い師と話していたんだけど、夢だったのかな? そんなことよりも、警察に捕まる。どうしよう。

 そう、私は、少し前に付き合っていた健一に言い寄ってくる雌猫がいることに気づき、その女が夜道を歩くときに、後ろから肩を掴み、彼から離れろと言ったの。

 そしたら、ハンドバックで私の頬を殴り、かすり傷だけど、頬から血が出ていた。そして、無視し続けて健一にベタベタと付き纏い続けた。話しがわからない女ね。そっちがそういう態度に出るんなら、覚悟しなさい。

 こんな女に口で話しても通じないわ。口で分からないんだったら、力で教えてあげないと。そこで、その女の跡をつけ、四ツ谷のマンションを見つけた。そこで、ある日、その女のマンションを訪問し、宅配便ですと入り込み、彼女を台所の包丁で殺した。

 床が血でいっぱいになって、体が痙攣していた姿は、蚊を手でパチンと殺したような感じだった。そう、害虫は駆除しないと。それから、シャワールームで血を洗い流し、持ってきたシャツに着替えた。意外と、高級なリンスを使っているじゃない。こんな女にはもったいない。

 ドライヤーをかけた後、死んだ女を上から見下ろして、冷蔵庫にあったアイスを食べてから、その女の部屋の部屋をでた。後で、アイスを食べたスプーンは洗っておいたけど、指紋を拭き取るのを忘れたかもしれない。でも、今更、その部屋にいくと疑われそうなので、放っておくことにした。

 その女は、偶然なんだけど、夏休みで海外旅行に行くって会社に言っていたらしく、1週間ぐらい暑い夏の部屋で放置されていたの。その後、出社しないからって探されたけど、1週間ぐらい経っていたので、見ることもできない状態で腐乱して発見されたってテレビで言っていた。元々、心が醜いんだから、外も醜くなってちょうどいいって感じ。

 でも、健一もひどい。こんなくだらない女に引っかかって、私を裏切るなんて。こんな男は許せないと怒りが沸々と湧いてきた。

 そこで、彼とドライブに出かけて、公園で眠り薬を入れたお茶を飲ませた。そして寝た頃を見計らって、山の中の林道で、私は、車を降り、彼を運転席に乗せ替えて、上からタイヤのストッパーを外した。

 彼を移動するときは、本当に重かったけど、指紋とかは拭き取っておいたし、身分とか分かるものも全て取っておいたわ。そして、この計画で重要なことは、車を盗難車にすること。私の昔の付き合いで、悪もいるから、盗難車はすぐに手に入った。

 そうしたら、車はスピードをあげ坂を下っていき、曲がり角でガードレールを突き破り、谷に落ちていった。そして、河原に落ちて車から炎が出ていたわ。私を大切にしないから、こうなるのよ。大切にすべきだったわね。

 でも、殺害から数ヶ月経っても、警察が私のところに来る気配はなかった。それよりも、おかしいことがいくつもあった。1つ目は、彼を取って仲違いをした琴音とは仲良く話すことができた。そして、当時、付き合っていた同期の彼とは付き合っていないことになっていた。

 同期の高宮に、今夜会わない?ってDMを出しても返事がなかった。そこで、廊下で会った時に、最近、冷たいじゃんって話しかけたら、不審者でも見る目で逃げて行った。どうも、私達は付き合っていないみたい。

 警察の件もそうだし、どうも、別の世界の私に変わったみたいだと気づいた。あの老婆の占い師のおかげだろう。でも、どこまでが変わって、どこまでが同じなのか分からないまま、日々を過ごすことになったの。

 職場の女性たちとも仲良く話せて、ランチとかも一緒に行けるような人も何人もいた。おそらく、あの占い師がこの世の中を変えてくれたんだと思う。私は、2人を殺していないことになったのだと思う。これで、人生をやり直せるわ。

 でも、付き合っている男がいないのは退屈ね。出会い系アプリで眼科医と出会い、付き合うようになった。彼は、とっても紳士で、私を大切にしてくれた。

 でも、ある日、防犯業者が訪問してきて、部屋から監視カメラ、盗聴器とか10個以上出てきた。

 また、それとほぼ同じ頃、大学の時の友人から連絡があり、私の上半身裸の写真や、私が寝ていて、下着も全く付けていない裸の写真とか、下半身をアップした写真とかがネットで出回っていることがわかった。

 そして、私は、写真のせいで会社をクビになってしまい、キャバクラで働くことになったわ。でも、キャバクラって、女社会で、気に入らない女が多く、あんまり楽しくない日々だった。

 私のこと、いつも文句言ってくる女がいて、ひどく突っかかってくるから、まだ誰も来ていない時間に、その女を非常階段に呼び出し、突き落としてやった。そして、私は、一旦、自宅に戻って、何もなかったかのように、定時にお店に出勤したら、警察が来ていて、階段からあの女が落ちて、頭の打ちどころが悪く死んだと聞かされた。

 そして、あんな写真をネットにあげた眼科医も許せなかった。キャバクラには暴力団の人もい他ので、一晩寝てあげるから、殺してと言ったら、即答でOKだって。どう殺したのと聞いたら、ホームで突き落とし、電車にはねられたって。当然の報いね。

 それから数ヶ月して、警察が私のところに来た。キャバクラで、死んだ女といつも揉めていたということで、殺害の容疑者だということだった。でも、私は、家にいて、事故の後にお店に来たと言ったんだけど、周辺の監視カメラで私が事故直後に近くを歩いていたという証拠を見せられた。

 言い訳できない状況だったけど、刑事たちは、眼科医の殺害も疑っていて、私がお願いした暴力団の団員が、私の指示で殺害したと自白した。

 私は、いずれも知らないと言ったけど、嘘は通せないものね。2人を殺害し、反省の色が見えないということで無期懲役の殺人罪が言い渡された。そして、私は、今、刑務所にいる。

 占い師の老婆は、刑務所の前で空を見上げていた。

「途中で違った道を歩いても、結局、同じところに行き着くもんなんだよ。でも、どっちが幸せだったのかね。意外と、誰も殺していない彼女の方が、男性と幸せな時間を過ごせてよかったかもしれないね。これからも、時々、入れ替わるけど、刑務所だと入れ替わったって気づかないかもね。」

 そう言って、老婆は、笑いながら街中に消えていった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...