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第2章 パラレルワールド
1話 同期の彼
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「私って男運がないの。この前、そろそろプロポーズされるかなと思ってたら、奥さんがいたのよ。1年半も黙っていたなんて、ひどいじゃない。どうすれば、素敵な人と結婚できるの?」
「占ってみるね。う~ん。もう一人のお前さんに、男運を奪われているね。交代してみる?」
「そりゃ、そうしたいけど、どういうこと?」
眩しい朝日。夏が終わり、窓を少し開けておいたので、気持ちいい涼しい風が入ってきた。あれ、さっき、老婆の占い師と話していたんだけど、夢だったのかな? そんなことより、もうこんな時間。早く起きて、会社に行かないと。
朝食をとる余裕はなく、満員電車に揺られ、私が所属している経理部の部屋に、なんとか始業時間前には入れた。
「琴音、おはよう。あれ、無視して行っちゃった。今日は機嫌が悪いのかな?」
何となくオフィスの雰囲気がいつもと違うような気もしたけど、そんな日もあるわよね。そんなことより、早く仕事しないと、今日は請求書をたくさん作らないといけないんだから。
机の上に山積みになっている書類を見るだけでうんざりだったけど、これが私の仕事。仕方がないわね。それから、目が乾燥してかすんできたけど、目薬とかを打ったりして、なんとか仕事をこなしていたの。
そんな中、スマホにDMが届いた。何だろうとみると、同期の高宮くんが今日、二人でランチしないかって。え、あのイケメンで爽やかな高宮くんから誘われた?
入社した時から、あんな人と付き合えればいいなって思ってたけど、人気も高くて、私なんかとは無理だと諦めていた。入社後も、高宮くんは成果を着実に出していて、当社でも将来の社長候補とか言われて、さらに手が届かない、女性社員からはアイドルのような存在になっていたんだから。
でも、何の話しだろう。誰かが好きでどうしようかという相談とか? そうよね。私なんかに興味持ってくれるはずがないもの。でも、もしかということもあるかも。まずは、運気が上がっている気もするから、OKって返事しておこうっと。
早く、お昼にならないかしら。あの高宮くんと二人で話せるなんてドキドキだわ。やっとお昼になり、仕事を早々に切り上げて高宮くんが指定したレストランに行くと、もう高宮くんは来ていたわ。
「楓、今日は大丈夫だった? 月末月初は忙しいって聞いてたけど。」
「大丈夫、大丈夫。」
「よかった。何食べる? ここはカルボナーラがお勧めだけど。」
「じゃあ、カルボナーラにしよっと。美味しそう。」
あれ、なんで私のこと、山本さんじゃなくて楓って呼ぶんだろう。なんとか話しを合わせてみたけど、なんか付き合っているみたい。どういうこと?
「あのさ、11月に一緒に京都に旅行して紅葉を見に行くって話しなんだけど、その日、どうしても外せない仕事が入っちゃって、別の日に変更したくてさ。」
え、高宮くんと一緒に旅行? 完全に付き合っているじない。どういうこと? でも、高宮くんの顔は嘘でもなさそうだし、話しを合わせないと。
「仕事じゃ、仕方がないわね。」
「よかった。嫌われちゃうんじゃないかって心配していたんだ。ホッとした。」
「嫌うはずがないじゃない。」
「ありがとう。じゃあ、いつに変更する。12月5日とかどう?」
「大丈夫だと思う。」
「じゃあ、その日から2泊3日で泊まれるホテル探してみてるね。あ、パスタが来た。食べよう。」
嬉しくて心が躍った。どういうことなの? 昨晩は夢かわからないけど、占い師の老婆が言っていたことと関係があるのかしら? これから、私は高宮くんから幸せにしてもらえる日々になるって思うと、ウキウキした気持ちでいっぱいになった。
でも、これまで男性と付き合ったことがないから、どう付き合えばいいのかって不安にもなっちゃった。思ったことを言った方がいいのか、黙って、そうよねとだけ言っていたらいいのか。
まあ、悩んでもわからないし、高宮くんの対応を見ると、こんな私が好きのようだから、自然に振る舞えっていうことね。だったら、嫌だったら嫌というし、そうでなければ、いっぱい甘えちゃおう。
今度の週末に、ショッピングに付き合ってとか、一緒に海に行きたいとか。そんなこと言えたら、すごい、すごい。だって、私、これまで彼というのがいなかったのよ。それが、急に、こんな。カフェで、あ~んとかフルーツを食べさせてもらうとか。なんか、体が熱っちゃう。
高宮くんって、甘えると、どう接してくれるのかしら。分かった、なんでも好きなようにしていいよとか言ってくれるのかな。いやだ、考えるだけで恥ずかしくなっちゃう。
また、職場恋愛って、どんな感じなのかしら。みんなにバレないように、共通の秘密を抱えて過ごすなんてドキドキしちゃう。そして、結婚とかなったら、職場全員で祝福してくれるとか。そんなことになったら、恥ずかしくて、みんなの顔見れない。きゃー。
全く関係ない人より、同じ会社に入るということで生きてきた環境も似てるし、既婚者じゃないとか、温厚な人だとか、ある程度、素性も分かっているし、安心できるしね。
高宮くんと付き合えたら最高じゃない。絶対に、私を失望させたりしない人だもの。そんなこと考えていたら、帰りに、高宮くんと腕組んじゃった。職場の近くで大胆だなって言われちゃったけど。
でも、1回のランチで40分ぐらいの僅かな時間でも、本当に楽しかったし、幸せを感じることができたわ。本当に、運が向いてきたわね。これって、夢じゃないわよね。
その後、職場に戻り、午後の仕事に入ったけど、どうも、仲のいい琴音が相変わらず私を無視してる。
「琴音、何かあったの? 朝から機嫌が悪いじゃん。」
「どういうつもり?」
「何が?」
「そういう態度なのね。わかったわ。」
あれ、男性運は良くなったけど、女性とは関係が悪化している? それはそれで嫌だし。どうなってるんだろう。
そういえば、さっきも職場の雰囲気がいつもと違う気がしたけど、どうも、女性社員たちが私をみる目がいつもと違うことに気づいたわ。そう、みんな、私のこと無視してる。そして、トイレで、私が入っていることに気づいていないのか、私について女性達の話し声が聞こえた。
「聞いた? 楓って、琴音が付き合っている高宮くんを奪っちゃったんだって? 琴音がふさわしいのかって別の問題もあるけど。」
「私も、聞いた。あれだけ仲良くしていた友達の彼を取っちゃうなんて、人としてどうなのって感じよね。」
「少し、可愛いからって図に乗っているのよ。あんな人と話したりすると、私の彼も取られちゃう。関わりを持たないことに限るわね。」
「そうそう、みんなの憧れの高宮くんの彼女になって、マウント取りたいのよ。嫌な女。」
そういうことだったのね。高宮くんのことといい、私の周りは基本的なことは変わっていないけど、ちょっとづつ変わっている。
そりゃ、そうよね。高宮くんと付き合っているなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないんだから。琴音と仲が悪くなることだって、不思議じゃない。他に、何が変わっているのかしら。いくら考えても、不安は大きくなる一方だった。
でも、高宮くんのことはどうしよう。琴音に戻すのがいいかしら。でも、もう琴音とは関係が復旧できそうもないし、高宮くんを物みたいに返して、二人の仲が戻るような気もしない。
また、高宮くんとは別れたくない。だって、あんな素敵な人だもの。それなら、高宮くんと付き合い続けるしかないじゃない。
職場で女性たちから嫌がらせを受けても、時間とともに次の話題に変わっていって忘れてくれるでしょ。私、そんなに注目されていないし。それより、高宮くんが優しくしてくれれば、楽しい日々を過ごせるし、それでいいじゃない。今のままでということしかないわね。
その時は、私は、あまりに安易に考えていたのかもしれない。想像を超える人生が待っていたのに。
「占ってみるね。う~ん。もう一人のお前さんに、男運を奪われているね。交代してみる?」
「そりゃ、そうしたいけど、どういうこと?」
眩しい朝日。夏が終わり、窓を少し開けておいたので、気持ちいい涼しい風が入ってきた。あれ、さっき、老婆の占い師と話していたんだけど、夢だったのかな? そんなことより、もうこんな時間。早く起きて、会社に行かないと。
朝食をとる余裕はなく、満員電車に揺られ、私が所属している経理部の部屋に、なんとか始業時間前には入れた。
「琴音、おはよう。あれ、無視して行っちゃった。今日は機嫌が悪いのかな?」
何となくオフィスの雰囲気がいつもと違うような気もしたけど、そんな日もあるわよね。そんなことより、早く仕事しないと、今日は請求書をたくさん作らないといけないんだから。
机の上に山積みになっている書類を見るだけでうんざりだったけど、これが私の仕事。仕方がないわね。それから、目が乾燥してかすんできたけど、目薬とかを打ったりして、なんとか仕事をこなしていたの。
そんな中、スマホにDMが届いた。何だろうとみると、同期の高宮くんが今日、二人でランチしないかって。え、あのイケメンで爽やかな高宮くんから誘われた?
入社した時から、あんな人と付き合えればいいなって思ってたけど、人気も高くて、私なんかとは無理だと諦めていた。入社後も、高宮くんは成果を着実に出していて、当社でも将来の社長候補とか言われて、さらに手が届かない、女性社員からはアイドルのような存在になっていたんだから。
でも、何の話しだろう。誰かが好きでどうしようかという相談とか? そうよね。私なんかに興味持ってくれるはずがないもの。でも、もしかということもあるかも。まずは、運気が上がっている気もするから、OKって返事しておこうっと。
早く、お昼にならないかしら。あの高宮くんと二人で話せるなんてドキドキだわ。やっとお昼になり、仕事を早々に切り上げて高宮くんが指定したレストランに行くと、もう高宮くんは来ていたわ。
「楓、今日は大丈夫だった? 月末月初は忙しいって聞いてたけど。」
「大丈夫、大丈夫。」
「よかった。何食べる? ここはカルボナーラがお勧めだけど。」
「じゃあ、カルボナーラにしよっと。美味しそう。」
あれ、なんで私のこと、山本さんじゃなくて楓って呼ぶんだろう。なんとか話しを合わせてみたけど、なんか付き合っているみたい。どういうこと?
「あのさ、11月に一緒に京都に旅行して紅葉を見に行くって話しなんだけど、その日、どうしても外せない仕事が入っちゃって、別の日に変更したくてさ。」
え、高宮くんと一緒に旅行? 完全に付き合っているじない。どういうこと? でも、高宮くんの顔は嘘でもなさそうだし、話しを合わせないと。
「仕事じゃ、仕方がないわね。」
「よかった。嫌われちゃうんじゃないかって心配していたんだ。ホッとした。」
「嫌うはずがないじゃない。」
「ありがとう。じゃあ、いつに変更する。12月5日とかどう?」
「大丈夫だと思う。」
「じゃあ、その日から2泊3日で泊まれるホテル探してみてるね。あ、パスタが来た。食べよう。」
嬉しくて心が躍った。どういうことなの? 昨晩は夢かわからないけど、占い師の老婆が言っていたことと関係があるのかしら? これから、私は高宮くんから幸せにしてもらえる日々になるって思うと、ウキウキした気持ちでいっぱいになった。
でも、これまで男性と付き合ったことがないから、どう付き合えばいいのかって不安にもなっちゃった。思ったことを言った方がいいのか、黙って、そうよねとだけ言っていたらいいのか。
まあ、悩んでもわからないし、高宮くんの対応を見ると、こんな私が好きのようだから、自然に振る舞えっていうことね。だったら、嫌だったら嫌というし、そうでなければ、いっぱい甘えちゃおう。
今度の週末に、ショッピングに付き合ってとか、一緒に海に行きたいとか。そんなこと言えたら、すごい、すごい。だって、私、これまで彼というのがいなかったのよ。それが、急に、こんな。カフェで、あ~んとかフルーツを食べさせてもらうとか。なんか、体が熱っちゃう。
高宮くんって、甘えると、どう接してくれるのかしら。分かった、なんでも好きなようにしていいよとか言ってくれるのかな。いやだ、考えるだけで恥ずかしくなっちゃう。
また、職場恋愛って、どんな感じなのかしら。みんなにバレないように、共通の秘密を抱えて過ごすなんてドキドキしちゃう。そして、結婚とかなったら、職場全員で祝福してくれるとか。そんなことになったら、恥ずかしくて、みんなの顔見れない。きゃー。
全く関係ない人より、同じ会社に入るということで生きてきた環境も似てるし、既婚者じゃないとか、温厚な人だとか、ある程度、素性も分かっているし、安心できるしね。
高宮くんと付き合えたら最高じゃない。絶対に、私を失望させたりしない人だもの。そんなこと考えていたら、帰りに、高宮くんと腕組んじゃった。職場の近くで大胆だなって言われちゃったけど。
でも、1回のランチで40分ぐらいの僅かな時間でも、本当に楽しかったし、幸せを感じることができたわ。本当に、運が向いてきたわね。これって、夢じゃないわよね。
その後、職場に戻り、午後の仕事に入ったけど、どうも、仲のいい琴音が相変わらず私を無視してる。
「琴音、何かあったの? 朝から機嫌が悪いじゃん。」
「どういうつもり?」
「何が?」
「そういう態度なのね。わかったわ。」
あれ、男性運は良くなったけど、女性とは関係が悪化している? それはそれで嫌だし。どうなってるんだろう。
そういえば、さっきも職場の雰囲気がいつもと違う気がしたけど、どうも、女性社員たちが私をみる目がいつもと違うことに気づいたわ。そう、みんな、私のこと無視してる。そして、トイレで、私が入っていることに気づいていないのか、私について女性達の話し声が聞こえた。
「聞いた? 楓って、琴音が付き合っている高宮くんを奪っちゃったんだって? 琴音がふさわしいのかって別の問題もあるけど。」
「私も、聞いた。あれだけ仲良くしていた友達の彼を取っちゃうなんて、人としてどうなのって感じよね。」
「少し、可愛いからって図に乗っているのよ。あんな人と話したりすると、私の彼も取られちゃう。関わりを持たないことに限るわね。」
「そうそう、みんなの憧れの高宮くんの彼女になって、マウント取りたいのよ。嫌な女。」
そういうことだったのね。高宮くんのことといい、私の周りは基本的なことは変わっていないけど、ちょっとづつ変わっている。
そりゃ、そうよね。高宮くんと付き合っているなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないんだから。琴音と仲が悪くなることだって、不思議じゃない。他に、何が変わっているのかしら。いくら考えても、不安は大きくなる一方だった。
でも、高宮くんのことはどうしよう。琴音に戻すのがいいかしら。でも、もう琴音とは関係が復旧できそうもないし、高宮くんを物みたいに返して、二人の仲が戻るような気もしない。
また、高宮くんとは別れたくない。だって、あんな素敵な人だもの。それなら、高宮くんと付き合い続けるしかないじゃない。
職場で女性たちから嫌がらせを受けても、時間とともに次の話題に変わっていって忘れてくれるでしょ。私、そんなに注目されていないし。それより、高宮くんが優しくしてくれれば、楽しい日々を過ごせるし、それでいいじゃない。今のままでということしかないわね。
その時は、私は、あまりに安易に考えていたのかもしれない。想像を超える人生が待っていたのに。
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