大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春

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私の本音

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次の日。
運動会、当日。


「おーす、凛。泡音ちゃん」
「おはよー鳳条くん」


昨日の高熱がウソだったみたいに、普通に登校してきた煌人。

そんな煌人を見て、私が驚いたのは言う間でもなく……


「え!煌人!?」
「な、なんだよ……朝から元気だな」
「いや、だって!」


昨日、高熱でぶっ倒れたんだよ!?
なんでそんなにピンピンしてんのよ!


「元気そうで良かったよ、鳳条くん~。これで旗手が出来るねぇ」
「おー、もう全快。怖いくらいにな……」
「(執事さん、煌人に何をしたんだろう……)」


――明日には元気にします


今の煌人のひきつった顔が、執事さんの言葉の威力を物語っている……。

昨夜なにがあって、煌人は風邪が治ったのか――

すごく気になるけど、聞くの怖いからやめとこ。


「そう言えば煌人、今日はご両し、」
「あ。集まりがあるんだった。じゃあ俺、行って来るわ」
「い、いってらっしゃい……」


バイバイと、手を振る時間もなかった。

すごいスピードで、煌人は教室からいなくなる。


「我らが旗手様は、お忙しいねぇ」
「無理して、また倒れなければいいんだけど……」


煌人の心配をする私を見て、泡音ちゃんが「お」と言う。


「凛、最近ちょっと変わったね」
「私が?」
「うん。鳳条くんを見る目が優しくなった。あと全体的な雰囲気も、かな。今の凛、すごく優しく見えていい感じ!」
「(優しく……?)」


なってるのかな、私……。

でも、そうだとしたら、それは――


「煌人のおかげ、かも」
「そっか。鳳条くんのおかげか」
「……うん」


いつか、何か。
どんな形でもいいから、煌人に恩返ししたいな。

あ、例えばちょっとしたプレゼントを買うのはどう?


「煌人って何が好きなんだろ?」
「凛……この紐を自分に巻いて?」
「え、なんでハチマキを?」
「かわいくリボンにしてね。で、鳳条くんの所へ行く。そして”私を貰って”って言えば、鳳条くんは気を失うくらい喜ぶから」
「……」


それだけは絶対にしてはいけない、と。

私の本能が教えてくれる。


「(でも、そうだなぁ……)」


煌人の言葉に、そろそろ返事をしないといけない。


――俺がお前を好きって言ったら、どうする?


あの答えを見つける。

いろんな場所から角度から、少しずつ。
答えの欠片を、拾い集めるんだ。

それが煌人への、一番の恩返しになりそうな気がする。


「じゃあ時間だし、運動場に行きますか!」
「はーい。頑張ろうね、泡音ちゃん」
「おうよ!」


そうして、私たちは賑やかな運動場を目指す。

トラックの周りには、既に観覧する保護者たちも集まってきている。

今日はお父さんも、煌人のご両親も来ているのかと思うと……妙に緊張してきた。


だけど、小心者の私とは裏腹に。

大役を担っている煌人は、立派に旗手の役目を果たし、そして色んな種目で脚光を浴びていた。



そして種目は進み――
現在、地区対抗リレー。

組とは全く関係ないところでも、煌人のファンは根強く彼を応援しているらしく。

現在、私が休憩している赤組のテントでも、煌人ファンがウチワをメガホン代わりに声援を送っている。


「キャー!鳳条くん頑張れー!!」
「見て―!先輩を抜かしたよ!」
「何してもカッコいい王子様ー!!」


頬を染めて黄色い声を上げる女子。

対するは、欠点なしの煌人を、僻(ひが)んで悪口を言う男子。


「やっぱ生まれ持った物が違い過ぎるよなぁ」
「そーそ。本来、俺らに与えられる能力も全部さあ、」
「鳳条が横取りしたんじゃね?」


「(……何を言ってるんだか)」


正直、聞いていて気分が悪い。
この人たちは、煌人が色んな事に一生懸命(過ぎるくらい)頑張っているのを、知らないのかな。


「大体、鳳条は恵まれ過ぎなんだよ」
「家も金持ちだしなー」
「ずりいよな」

「……」


聞き流せばいい事なんだろうけど。

私以外が煌人の悪口を言うのは気に食わないっていうか。

だから、かな。
気づけば、私は男子たちに近寄り「ねぇ」と声を掛けていた。


「陰でコソコソ悪口言うの、みっともないからやめてくれない?」

「は、はぁ?」
「彼氏を庇いに来た彼女の登場だな」


面倒くさそうに話す男子に、私の額に青筋が入る。

誰が彼氏で、誰が彼女だって?


「(こけたフリして全員の頭に、ポコッとゲンコツ入れられないかな)」


グッと拳を作っていきなり戦闘態勢に入った私に、男子たちは肩をビクリと震わせた。


「彼女だからって、そうカリカリすんなって」
「はぁ~冷めた冷めた」
「おい、もうあっち行こうぜ」


「言い逃げするの?カッコ悪い」


私の言葉を聞いて、男子の一人が顔を歪めて「あぁ?」とすごむ。

私も負けじと睨み返した。
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