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ライバルの嫉妬*煌人*3

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「凛!」
「煌人、どうしたの?」
「ど、どうしたも、こうしたも!」


 ハァハァと肩で息をする俺に、凛は迷いなく近づいた。
 そして「すごい汗」と言って、テイッシュを一枚さし出してくれる。


「テイッシュ……」
「仕方ないじゃん。ハンカチは今日ずっと私が使ってたんだし」


 汚い物を煌人に渡すわけにはいかないもん――と凛。


「お前、俺の事を気遣って……」


 なんだよ凛、なんだかんだ言って俺の事を考えてくれてんのかよ。
 そう思うと、少し感動してしまう。
 次の言葉を聞くまでは――


「だって使用後のハンカチを渡したら”変なにおいがする”とか”ここ湿ってるぞ”とか。何かイチャモンつけられそうだもん」
「そんな事は言わない!」


 断じて!
 ってか、なんでそうなるんだよ。
 どこまでいっても俺は、そういう「残念な男」のポジションなのかよ。


「はー疲れた……」


 全力ダッシュしてきたのが、アホらしくなってきた。
 力が抜けて、思わずその場にしゃがみ込む。
 その時、


「君は、もしかして鳳条煌人くん?」
「……そう、ですけど?」


 凛と一緒に帰る予定の「先輩」が俺の前にやって来た。
 そして、しゃがむ俺に視線を合わせる。


「初めまして。凛ちゃんと仲良しなんだね。けど、すごい汗だ。良かったら、どこかお店に入らない?休憩がてら、二人の事をもっと知りたいし」
「……」


 ニコニコ笑顔だ。すげー笑顔だ。
「何か裏がありそう」な嘘っぽい笑顔。


「ね、どうかな?」
「……」


 いや、考えすぎか。
 俺が「そういう目」で見る癖がついてるだけで、この人は、きっと何の打算もなしに声をかけてくれたに違いない。言わば、善意だ。良心だ。


「(人畜無害、かな?)」
「あれ、凛ちゃん。髪の毛に葉っぱついてるよ。取ってあげる」

「え、すみません」
「!?」


 やっぱ訂正。
「この先輩は油断ならない」と、俺の本能が言ってる。
「どうかな?」と俺への勧誘を諦めない、鋼のメンタルも見逃せないし。


「ちょ、先輩……。煌人はもう帰って? ね?」
「(なんで先輩が残って、俺が帰るんだよ)」


 凛のこういう無神経な所に、俺のメンタルに追い討ちがかかる。
 俺は凛に告白してるってのに……。凛の中では、全く意識されてない。
 だからこそ出てくる「お前は帰れ発言」。


「(もっと俺に気を遣えって話だけど……しかし。そうだな)」


 凛がいる手前、先輩にたてつく子供っぽい姿は見せられない。
 相手が年上なら、なおさらだ。


「(これ以上、舐められてたまるかっての)」


 ニコッ


「では、お邪魔してもよろしいですか?お二人の邪魔になるかもと思って遠慮していたので」
「え、煌人?」

「とんでもない。人数は多ければ多い程っていうし。時間が許す限り、一緒に話したいな」
「せ、先輩!?」

「そうですか。なら――」


 遠慮なく行かせてもらうからな。
 覚悟しとけよ、先輩?


「俺も同席します。楽しみだなぁ」
「はは、俺もだよ」
「え、えぇ……?」


 凛が一人頭を抱える、その横で。
 俺と先輩とやらは、互いに火花を散らしていた。


*煌人*end


*おまけ*


「泡音ちゃんからメールだ」
「あ、泡音ちゃんに謝っといて。帰り際にバタバタして、一人教室に残しちゃったから」

「“鳳条煌人は女子キラーだから気をつけろ”って泡音ちゃんから」
「やっぱ訂正。絶対に謝らないで」
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