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ライバルの嫉妬*煌人*2
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――現在――
「なぁ凛、今日一緒に帰らねぇ?」
「ごめん、嫌」
こんな塩対応。
「おい”嫌”はねーだろ。もっとなんか言い方が、」
「じゃあ無理」
「……」
好きな女に「嫌」とか「無理」を連呼される俺って、どうなんだ。
しかも凛はお構いなしに、俺から離れて教室を出て行くし。
「はぁ……」
ひょっとしたら、俺の魅力は皆無なのか?
今まで俺と仲良くしてくれた人たちも、単に俺が「鳳条」だったから?
「……なんか、どんどんマイナス思考になってる気がする」
最近はネガティブになっている。
そう、全ては凜の容赦ない発言のせいで。
俺のメンタルは、現在進行形でだんだんと削れている。
「はぁ……」
「二回目のため息だけど大丈夫~?」
「え、」
見ると、教室から出て行った凛にかわり「泡音ちゃん」という凜の友達が、その席に座っていた。
「泡音ちゃん、じゃん」
「すごい慣れ慣れしいね。さすが女子キラー」
「なんだよ女子キラーって」
泡音ちゃんと話すのは、何気に初めてかもしれない。
きっと凛は、泡音ちゃんに色々相談してるんだろうな。
ん? 相談?
凛って、俺の事をどんな風に相談してんだ?
「ねぇ泡音ちゃん、最近の凛の調子はどう?」
「見ての通り絶好調よ」
「違う、そうじゃなくて」
凛が俺の事でワタワタしたり、悩んだりしてないかって事だよ――と聞くと、泡音ちゃんは「ん~」と目を瞑って記憶を思い出していた。
そして「あ」と言って、わざとらしく手を叩く。
「最初の頃は悩んでたよ」
「え、どんな風に?」
「”今までライバル視してたから好意どころか敵意しかない”って」
「(まさかの敵意のみ!?)」
何かにつけ、常に勝負をけしかけた俺も悪いけどさ……もっとこう、あるだろ。
すると、泡音ちゃんが続ける。
「あとは”存在を抹殺しようと企んでた相手にまさか好かれてるなんて思わなかった”とも言ってたよ」
「アイツ俺を抹殺しようとしてたのかよ!」
なんだよそれ、怖すぎ。
ってか、アイツ本当に、俺を恋の対象として見てねーじゃん。
全く心を揺さぶられてねーじゃん。
「(むしろ俺の方が揺さぶられてる……)」
心のブランコが、風をきって、すごい角度でビュンビュンと揺れている。
乗ってる俺を、落とさんとする勢いだ。
「はぁ……」
「あ~……えっと、」
俺の落ち込み具合を見た泡音ちゃんが、手をヒラヒラさせて顔を覗き込む。
「ごめん、つい本当の事を話したけど、メンタル大丈夫?」
「何とかしがみついてる……」
「え、何に」
「はぁ」と四度目のため息をついた時。
ふと、ある事に気づく。
「凛、遅くね? トイレだろ?」
「女子のトイレを勘付くもんじゃないよ鳳条くん。凛なら、さっき教室を出ていったじゃん」
「うん」
それは見た。
見た、けど……
「だから、もう帰ったって事」
「はあ!?」
ガタンと椅子をひっくり返して立ち上がる俺に、泡音ちゃんは「ほら、あそこ」と窓の外を指さす。
見ると、本当に凛が下校している真っ最中だった。
しかも……
「校門にいた男に手を上げて、しかも一緒に帰ってるぞ?」
「うん。今日は先輩と一緒に帰るって言ってたからね」
「――先輩? 誰それ??」
「ちょ、マジな目をしないで鳳条くん」
さっき決まったことらしくて、私も詳しくは知らないんだよ――と呑気に泡音ちゃんが喋る中。
俺は自分の鞄に手をかけて、急いで教室を後にした。
「泡音ちゃん、ありがとね」
その言葉を残して。
ビュンと疾風のごとくいなくなった俺を見て、泡音ちゃんが一言だけ呟く。
「最後の一言で、多少残念な鳳条くんが全て消し飛ぶからズルいよねぇ。やっぱ女子キラーだわ」
そんな褒め言葉のようなものを、泡音ちゃんが呟いていたとは知らない俺。
下駄箱で靴に履き替え、かかとが中に納まりきらないまま、凛の後ろ姿を追いかけた。
そして、そのこげ茶の長い髪にたどり着く。
「なぁ凛、今日一緒に帰らねぇ?」
「ごめん、嫌」
こんな塩対応。
「おい”嫌”はねーだろ。もっとなんか言い方が、」
「じゃあ無理」
「……」
好きな女に「嫌」とか「無理」を連呼される俺って、どうなんだ。
しかも凛はお構いなしに、俺から離れて教室を出て行くし。
「はぁ……」
ひょっとしたら、俺の魅力は皆無なのか?
今まで俺と仲良くしてくれた人たちも、単に俺が「鳳条」だったから?
「……なんか、どんどんマイナス思考になってる気がする」
最近はネガティブになっている。
そう、全ては凜の容赦ない発言のせいで。
俺のメンタルは、現在進行形でだんだんと削れている。
「はぁ……」
「二回目のため息だけど大丈夫~?」
「え、」
見ると、教室から出て行った凛にかわり「泡音ちゃん」という凜の友達が、その席に座っていた。
「泡音ちゃん、じゃん」
「すごい慣れ慣れしいね。さすが女子キラー」
「なんだよ女子キラーって」
泡音ちゃんと話すのは、何気に初めてかもしれない。
きっと凛は、泡音ちゃんに色々相談してるんだろうな。
ん? 相談?
凛って、俺の事をどんな風に相談してんだ?
「ねぇ泡音ちゃん、最近の凛の調子はどう?」
「見ての通り絶好調よ」
「違う、そうじゃなくて」
凛が俺の事でワタワタしたり、悩んだりしてないかって事だよ――と聞くと、泡音ちゃんは「ん~」と目を瞑って記憶を思い出していた。
そして「あ」と言って、わざとらしく手を叩く。
「最初の頃は悩んでたよ」
「え、どんな風に?」
「”今までライバル視してたから好意どころか敵意しかない”って」
「(まさかの敵意のみ!?)」
何かにつけ、常に勝負をけしかけた俺も悪いけどさ……もっとこう、あるだろ。
すると、泡音ちゃんが続ける。
「あとは”存在を抹殺しようと企んでた相手にまさか好かれてるなんて思わなかった”とも言ってたよ」
「アイツ俺を抹殺しようとしてたのかよ!」
なんだよそれ、怖すぎ。
ってか、アイツ本当に、俺を恋の対象として見てねーじゃん。
全く心を揺さぶられてねーじゃん。
「(むしろ俺の方が揺さぶられてる……)」
心のブランコが、風をきって、すごい角度でビュンビュンと揺れている。
乗ってる俺を、落とさんとする勢いだ。
「はぁ……」
「あ~……えっと、」
俺の落ち込み具合を見た泡音ちゃんが、手をヒラヒラさせて顔を覗き込む。
「ごめん、つい本当の事を話したけど、メンタル大丈夫?」
「何とかしがみついてる……」
「え、何に」
「はぁ」と四度目のため息をついた時。
ふと、ある事に気づく。
「凛、遅くね? トイレだろ?」
「女子のトイレを勘付くもんじゃないよ鳳条くん。凛なら、さっき教室を出ていったじゃん」
「うん」
それは見た。
見た、けど……
「だから、もう帰ったって事」
「はあ!?」
ガタンと椅子をひっくり返して立ち上がる俺に、泡音ちゃんは「ほら、あそこ」と窓の外を指さす。
見ると、本当に凛が下校している真っ最中だった。
しかも……
「校門にいた男に手を上げて、しかも一緒に帰ってるぞ?」
「うん。今日は先輩と一緒に帰るって言ってたからね」
「――先輩? 誰それ??」
「ちょ、マジな目をしないで鳳条くん」
さっき決まったことらしくて、私も詳しくは知らないんだよ――と呑気に泡音ちゃんが喋る中。
俺は自分の鞄に手をかけて、急いで教室を後にした。
「泡音ちゃん、ありがとね」
その言葉を残して。
ビュンと疾風のごとくいなくなった俺を見て、泡音ちゃんが一言だけ呟く。
「最後の一言で、多少残念な鳳条くんが全て消し飛ぶからズルいよねぇ。やっぱ女子キラーだわ」
そんな褒め言葉のようなものを、泡音ちゃんが呟いていたとは知らない俺。
下駄箱で靴に履き替え、かかとが中に納まりきらないまま、凛の後ろ姿を追いかけた。
そして、そのこげ茶の長い髪にたどり着く。
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