4 / 40
過保護なライバル3
しおりを挟む
「これ。俺の宿題のプリント」
「……真っ白じゃん」
「驚きの白さだろ」
堂々と言うものだから、なんか面白くて。
プリントを見て、思わず噴き出した。
「ふふ、なにそれ。煌人、変なの」
「うっせ。昨日は、俺も何も手につかなかったんだよ」
「煌人なのに?」
「お前は、どれだけ俺を過大評価してんだよ」
いつもは罵ってくるくせに――と眉を下げて笑う煌人に、視線を向けた。
「煌人は何でもできるじゃん。勉強もその他も全般的に。言えば、怖い物ナシでしょ? だから、私に告白したくらいじゃ動じないかと思って」
「……」
「煌人?」
次の瞬間。
おでこに、勢いの良いデコピンを食らう。
パチンッ
「いた!」
「ムカつく、お前本当にムカつく」
「いたた~、ほっぺをつねるな~!」
みょーんと伸ばされたほっぺが、自分の視界の端に移って。
「どこまで伸びるんだろう」って思ったら、何だか面白くなって、大きな口を開けて笑った。
「あはは! なに、もう~。そんなに伸ばされると痛いって!」
「……」
「ん? 煌人?」
煌人は今まで笑みを浮かべていたかと思うと、今度は真顔になった。
しかも「はぁ」と浅くため息をついて、
「やっぱり俺は、凛が好き」
そんな事を言った。
「……今の聞き間違、」
「聞き間違いじゃない。俺はやっぱり素直な凜が好きだなって、そう思った」
「だから……私は素直なんかじゃないって」
さっきの宿題プリントがそう。
素直な子だったら「やってくるの忘れました」ってすぐに謝ってる。
「だけど、私は……」
そう思って塞ぎこむ私に、煌人は首を振った。
「素直じゃなかったら、いま俺に自分の気持ちを話してないだろ」
「でも、相手は煌人だし」
「その言葉、俺はどう受け取ったらいいの……」
煌人は苦笑を浮かべる。
「ライバルである俺の前で、自分の弱さをさらけ出せる奴って……すごく強くて素直な奴だと思うけど?」
「今の言葉は……お世辞?」
「この状況でお世辞はねーわ」
本心で言ってるから自信を持て――と煌人は私の頭を、ポンポンと撫でる。
「そんな素直なお前だから、俺は惚れたんだっての」
「っ!」
このド直球な言葉に、私の顔も思わず赤くなって……。
今まで煌人を見ていた目を、思わず逸らしてしまった。
「そ、そういう恥ずかしい事を、言わないでほしいんだけど……」
「言ってねーと、凜は”悩むのに疲れた”とか”ライバルのままの方が楽”とか、あらぬ事を考えそうだからな。逃げずにきちんと考えて答えを出せっていう、俺からの圧だよ」
「(うっ……)」
見透かされてるのが、いかに煌人が私の事を知っているかのバロメーターに思えて。
言うなれば「愛の深さ」みたいな……?
「(いや、何を言ってるの私……! バカ恥ずかしい!)」
パンッと頬を叩くと、目の前にいる煌人が「おわ!」と声を上げた。
ビックリして私から少し離れた煌人を見て「ネコみたい」と、ふっと笑みが漏れる。
「最近のネコは過保護なんだね」
「いきなり何言ってんだよお前は……。
やっぱちょっと寝ろ。ベッド空いてんだから」
「ん、そうしようかな」
確かに、昨日はあまり寝られなかった。
勉強第一の私が宿題を忘れるなんて、前代未聞だもの。
ドサッ
「あー体の力が抜ける~」
「へーへー。今のうちに羽を伸ばしてろよ」
遠くにあったパイプ椅子を引っ張ってきて、ギッと座る煌人。
「(教室に戻らないんだ……)」
この場に私を一人にしない煌人の優しさが、少しだけ嬉しい。
思い返せば、昨日も……
『寝てる凛を一人残して帰れるかよ』
そんな事を言って、寝てる私を起こさずにずっと待っていてくれた。
あの時は、煌人がお坊ちゃまだから、そういう発言になったのかと思ったけど……。
あれは、私の事が好きで、そう言ってくれたのか。
そして、今も――
「(私の事が好きだから一緒にいるって事?)」
「なんだよ。寝れねーの?」
「ッ!」
私が煌人を見ると、すぐに気づいてくれる。
それだけ私の事を気にしてるって事?
いつも見守ってるって事?
ドキン
「(あれ?)」
今、胸のあたりが、なんかこう……。
締まるというか、握られてるっていうか……。
「(いや、握られてるって。誰によ)」
自分で思った事ながら、変な思考回路に乾いた笑いが出る。
そして煌人に目をやった。
「おい凛、何か顔が赤いけど大丈夫か?」
「え、赤い?」
「まさか本当に熱出たんじゃねーの?待ってろ、体温計持ってくる」
シャッとカーテンを閉めて、出て行く煌人。
その後ろ姿を、少しの間、不覚にも見続けてしまった。
「はっ、何をしてるの私……」
寝よう、そう。昨日寝られなかったんだし、さっさと寝よう。
そう思って目を瞑ると、ものの数秒で、すぐに眠ることが出来た。
と言っても……
『わー!煌人が私の心臓を握って悪い顔をしてるー!!』
巨人化した煌人に、なぜか私の心臓を握りつぶされそうになるという。そんな最悪の夢を見てしまう。
「やめて、煌人……私の心臓を返して!」
「こいつ夢の中でも俺と争ってんのかよ……」
はぁと、煌人がため息をついたとは知りもしない私。
その後、チャイムと同時に目を覚ました私は、なぜか不機嫌な煌人にジト目で見られるのだった。
*おまけ*
「な、なんか怒ってる?」
「夢の中くらい仲良くしねぇ?」
「え、夢の中に出てこないでほしいんだけど」
「お前ほんとムカつく」
「……真っ白じゃん」
「驚きの白さだろ」
堂々と言うものだから、なんか面白くて。
プリントを見て、思わず噴き出した。
「ふふ、なにそれ。煌人、変なの」
「うっせ。昨日は、俺も何も手につかなかったんだよ」
「煌人なのに?」
「お前は、どれだけ俺を過大評価してんだよ」
いつもは罵ってくるくせに――と眉を下げて笑う煌人に、視線を向けた。
「煌人は何でもできるじゃん。勉強もその他も全般的に。言えば、怖い物ナシでしょ? だから、私に告白したくらいじゃ動じないかと思って」
「……」
「煌人?」
次の瞬間。
おでこに、勢いの良いデコピンを食らう。
パチンッ
「いた!」
「ムカつく、お前本当にムカつく」
「いたた~、ほっぺをつねるな~!」
みょーんと伸ばされたほっぺが、自分の視界の端に移って。
「どこまで伸びるんだろう」って思ったら、何だか面白くなって、大きな口を開けて笑った。
「あはは! なに、もう~。そんなに伸ばされると痛いって!」
「……」
「ん? 煌人?」
煌人は今まで笑みを浮かべていたかと思うと、今度は真顔になった。
しかも「はぁ」と浅くため息をついて、
「やっぱり俺は、凛が好き」
そんな事を言った。
「……今の聞き間違、」
「聞き間違いじゃない。俺はやっぱり素直な凜が好きだなって、そう思った」
「だから……私は素直なんかじゃないって」
さっきの宿題プリントがそう。
素直な子だったら「やってくるの忘れました」ってすぐに謝ってる。
「だけど、私は……」
そう思って塞ぎこむ私に、煌人は首を振った。
「素直じゃなかったら、いま俺に自分の気持ちを話してないだろ」
「でも、相手は煌人だし」
「その言葉、俺はどう受け取ったらいいの……」
煌人は苦笑を浮かべる。
「ライバルである俺の前で、自分の弱さをさらけ出せる奴って……すごく強くて素直な奴だと思うけど?」
「今の言葉は……お世辞?」
「この状況でお世辞はねーわ」
本心で言ってるから自信を持て――と煌人は私の頭を、ポンポンと撫でる。
「そんな素直なお前だから、俺は惚れたんだっての」
「っ!」
このド直球な言葉に、私の顔も思わず赤くなって……。
今まで煌人を見ていた目を、思わず逸らしてしまった。
「そ、そういう恥ずかしい事を、言わないでほしいんだけど……」
「言ってねーと、凜は”悩むのに疲れた”とか”ライバルのままの方が楽”とか、あらぬ事を考えそうだからな。逃げずにきちんと考えて答えを出せっていう、俺からの圧だよ」
「(うっ……)」
見透かされてるのが、いかに煌人が私の事を知っているかのバロメーターに思えて。
言うなれば「愛の深さ」みたいな……?
「(いや、何を言ってるの私……! バカ恥ずかしい!)」
パンッと頬を叩くと、目の前にいる煌人が「おわ!」と声を上げた。
ビックリして私から少し離れた煌人を見て「ネコみたい」と、ふっと笑みが漏れる。
「最近のネコは過保護なんだね」
「いきなり何言ってんだよお前は……。
やっぱちょっと寝ろ。ベッド空いてんだから」
「ん、そうしようかな」
確かに、昨日はあまり寝られなかった。
勉強第一の私が宿題を忘れるなんて、前代未聞だもの。
ドサッ
「あー体の力が抜ける~」
「へーへー。今のうちに羽を伸ばしてろよ」
遠くにあったパイプ椅子を引っ張ってきて、ギッと座る煌人。
「(教室に戻らないんだ……)」
この場に私を一人にしない煌人の優しさが、少しだけ嬉しい。
思い返せば、昨日も……
『寝てる凛を一人残して帰れるかよ』
そんな事を言って、寝てる私を起こさずにずっと待っていてくれた。
あの時は、煌人がお坊ちゃまだから、そういう発言になったのかと思ったけど……。
あれは、私の事が好きで、そう言ってくれたのか。
そして、今も――
「(私の事が好きだから一緒にいるって事?)」
「なんだよ。寝れねーの?」
「ッ!」
私が煌人を見ると、すぐに気づいてくれる。
それだけ私の事を気にしてるって事?
いつも見守ってるって事?
ドキン
「(あれ?)」
今、胸のあたりが、なんかこう……。
締まるというか、握られてるっていうか……。
「(いや、握られてるって。誰によ)」
自分で思った事ながら、変な思考回路に乾いた笑いが出る。
そして煌人に目をやった。
「おい凛、何か顔が赤いけど大丈夫か?」
「え、赤い?」
「まさか本当に熱出たんじゃねーの?待ってろ、体温計持ってくる」
シャッとカーテンを閉めて、出て行く煌人。
その後ろ姿を、少しの間、不覚にも見続けてしまった。
「はっ、何をしてるの私……」
寝よう、そう。昨日寝られなかったんだし、さっさと寝よう。
そう思って目を瞑ると、ものの数秒で、すぐに眠ることが出来た。
と言っても……
『わー!煌人が私の心臓を握って悪い顔をしてるー!!』
巨人化した煌人に、なぜか私の心臓を握りつぶされそうになるという。そんな最悪の夢を見てしまう。
「やめて、煌人……私の心臓を返して!」
「こいつ夢の中でも俺と争ってんのかよ……」
はぁと、煌人がため息をついたとは知りもしない私。
その後、チャイムと同時に目を覚ました私は、なぜか不機嫌な煌人にジト目で見られるのだった。
*おまけ*
「な、なんか怒ってる?」
「夢の中くらい仲良くしねぇ?」
「え、夢の中に出てこないでほしいんだけど」
「お前ほんとムカつく」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
【完結】月夜のお茶会
佐倉穂波
児童書・童話
数年に一度開催される「太陽と月の式典」。太陽の国のお姫様ルルは、招待状をもらい月の国で開かれる式典に赴きました。
第2回きずな児童書大賞にエントリーしました。宜しくお願いします。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
推しにおされて、すすむ恋
またり鈴春
児童書・童話
有名な動画配信グループ
≪Neo‐Flash≫
そのメンバーの一人が、私の姉
なんだけど…
「少しの間、私と入れ替わって!」
急きょ、姉の代わりを務めることに!?
≪Neo‐Flash≫メンバー ┈┈┈┈┈┈✦
①ノア(綾瀬 玲)
「君、ステラじゃないよね?」
②ヤタカ(森 武流)
「お泊り合宿の動画を撮るぞー」
③リムチー(乙瀬 莉斗)
「楽しみだね、ステラ!」
④ステラ(表&姉➤小鈴つむぎ、裏&妹➤ゆの)
「(ひぇええ……!)」
✦┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
でも姉の代わりを頑張ろうとした矢先
なぜかノアにバレちゃった…!
「俺以外の奴らに、その顔は禁止」
「ゆのを知るのは、俺だけってことで」
密かに推していたノアの
裏の顔や私生活が見られるだけじゃなく
お泊まりなんて…
もう、キャパオーバーですっ!
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
氷鬼司のあやかし退治
桜桃-サクランボ-
児童書・童話
日々、あやかしに追いかけられてしまう女子中学生、神崎詩織(かんざきしおり)。
氷鬼家の跡取りであり、天才と周りが認めているほどの実力がある男子中学生の氷鬼司(ひょうきつかさ)は、まだ、詩織が小さかった頃、あやかしに追いかけられていた時、顔に狐の面をつけ助けた。
これからは僕が君を守るよと、その時に約束する。
二人は一年くらいで別れることになってしまったが、二人が中学生になり再開。だが、詩織は自身を助けてくれた男の子が司とは知らない。
それでも、司はあやかしに追いかけられ続けている詩織を守る。
そんな時、カラス天狗が現れ、二人は命の危険にさらされてしまった。
狐面を付けた司を見た詩織は、過去の男の子の面影と重なる。
過去の約束は、二人をつなぎ止める素敵な約束。この約束が果たされた時、二人の想いはきっとつながる。
一人ぼっちだった詩織と、他人に興味なく冷たいと言われている司が繰り広げる、和風現代ファンタジーここに開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる