上 下
57 / 58
溺愛争奪戦

しおりを挟む

「お話は終わったかよ?アイドルさん」

「声宮先輩にそう言われると、なんかムカつきますね」


「(あわわ……!)」


またケンカになる!?と思いきや、歌沢くんは「じゃあ、俺戻ります」と呆気なく皆の所へ戻っていった。「お大事に」という言葉と共に。歌沢くん、もしかして気を遣ってくれたのかな?

ありがとう歌沢くん――だけど、なにやら不機嫌らしい凌久くんと二人きり、というのは……。な、なんだか空気が重いぞ?なんで……!?

何を話そうかな?と思っていると、凌久くんがボソリと呟く。


「この浮気者」

「へ!?」


二人きりになった途端、凌久くんからの、この発言。浮気者って、なに?私!?


「楽先輩と良い雰囲気になりやがって。不動先輩と良い雰囲気になりやがって。あの歌沢とまで良い雰囲気になりやがって」

「な、なってないから!呪文みたいに言わないで!」


良い雰囲気になってない――と言いながら、さっきの事を思い出す。楽先輩から「さらう」と言われたり、ルイ先輩からほっぺにキスされたり、歌沢くんと間接キスをしたり。

ん?なんか、色々あったね?


「(そんな事があったとは、絶対に言えないけど!!)」

「芽以。黙ってるって事は、やっぱり、」

「ち、違うから!誤解だから!」


ジト目で私を見る凌久くん。どうしよう。私の事を、すごく疑ってる!全く信用されてない!

信用がゼロだった事に悲しくなるけど「ひょっとして凌久くんって独占欲が強いのかな?」って思ったら、ニヤけてしまった。だって、ヤキモチを妬いてくれるのは、かなり嬉しいもん!


「ふふ」

「おい、なに笑ってんだよ」

「別にー。なんでもないよ」


そう言いながら、いつまでもクスクス笑う私に、愛想をつかした凌久くん。


「やっぱ、まどろっこしいのは合わねーわ」


と言って、寝ている私に覆いかぶさり、


チュッ


再び私に、キスをした。


「!?」


り、凌久くん、なに考えてるの!もし誰かに見られたらどうするの!

焦ってキョロキョロすると、皆ホワイトボードに向かって話をしていた。良かった、私たちがキスした事に誰も気づいてないみたい。


「凌久くん、やり過ぎだよ……!」

「ふん。隙あらば芽衣を奪うとするヤツらがいんだぞ。これくらい見せつけてちょうどいいんだよ」

「いや、よくはないよね……?」


そんな事されると恥ずかしいし、私がもたないから、外では絶対にしないでね――と言った私。真剣な私とは反対に、どうやら話半分で聞いてる凌久くん。


「ねぇ、聞いてる?」


凌久くんの手を握って、ゆさゆさ揺らす。すると凌久くんは、おもむろに携帯を取りだして、


「明日と明後日は休みか」


と、こんな事を確認した。


「土日だね。明日は歌沢くんの動画を完成させるんでしょ?忙しくなりそうだね」

「ってことは、日曜は暇だな」

「え?まぁ、そうだね」

「……」

「?」


凌久くんが、私を見ている。どうやら「なにが言いたいか分かる?」という事らしいけど……残念ながら、分からない。

いつまでも答えが分からない私に、凌久くんは、お決まりのため息をついた。


「はぁ。これだから芽衣は。やっぱ鈍感だな」

「こ、これだからってなに!いきなり休日の事を言われても分からないよ。結局、何が言いたかったの?」


いつまでも寝転がっておくのもアレなので、ヨイショと体を起こす。そして、凌久くんが何を喋るのか待った。

すると――


「日曜デートしよって。そう言ってんの」

「へ?」

「付き合ってんだから、デートくらい行くだろ。ってか……俺が行きたい。芽衣は?違うのかよ?」

「っ!」


不機嫌な顔をしながら、たまに顔を赤らめて恥ずかしがる凌久くん。ツンとデレのコンボを炸裂する彼の技は、本当にズルい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】アシュリンと魔法の絵本

秋月一花
児童書・童話
 田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。  地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。  ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。 「ほ、本がかってにうごいてるー!」 『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』  と、アシュリンを旅に誘う。  どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。  魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。  アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる! ※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。 ※この小説は7万字完結予定の中編です。 ※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。

大嫌いなキミに愛をささやく日

またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。 その人から、まさか告白されるなんて…! 「大嫌い・来ないで・触らないで」 どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに… 気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。 そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。 \初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~

友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。 全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

処理中です...