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溺愛争奪戦
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しおりを挟む「お話は終わったかよ?アイドルさん」
「声宮先輩にそう言われると、なんかムカつきますね」
「(あわわ……!)」
またケンカになる!?と思いきや、歌沢くんは「じゃあ、俺戻ります」と呆気なく皆の所へ戻っていった。「お大事に」という言葉と共に。歌沢くん、もしかして気を遣ってくれたのかな?
ありがとう歌沢くん――だけど、なにやら不機嫌らしい凌久くんと二人きり、というのは……。な、なんだか空気が重いぞ?なんで……!?
何を話そうかな?と思っていると、凌久くんがボソリと呟く。
「この浮気者」
「へ!?」
二人きりになった途端、凌久くんからの、この発言。浮気者って、なに?私!?
「楽先輩と良い雰囲気になりやがって。不動先輩と良い雰囲気になりやがって。あの歌沢とまで良い雰囲気になりやがって」
「な、なってないから!呪文みたいに言わないで!」
良い雰囲気になってない――と言いながら、さっきの事を思い出す。楽先輩から「さらう」と言われたり、ルイ先輩からほっぺにキスされたり、歌沢くんと間接キスをしたり。
ん?なんか、色々あったね?
「(そんな事があったとは、絶対に言えないけど!!)」
「芽以。黙ってるって事は、やっぱり、」
「ち、違うから!誤解だから!」
ジト目で私を見る凌久くん。どうしよう。私の事を、すごく疑ってる!全く信用されてない!
信用がゼロだった事に悲しくなるけど「ひょっとして凌久くんって独占欲が強いのかな?」って思ったら、ニヤけてしまった。だって、ヤキモチを妬いてくれるのは、かなり嬉しいもん!
「ふふ」
「おい、なに笑ってんだよ」
「別にー。なんでもないよ」
そう言いながら、いつまでもクスクス笑う私に、愛想をつかした凌久くん。
「やっぱ、まどろっこしいのは合わねーわ」
と言って、寝ている私に覆いかぶさり、
チュッ
再び私に、キスをした。
「!?」
り、凌久くん、なに考えてるの!もし誰かに見られたらどうするの!
焦ってキョロキョロすると、皆ホワイトボードに向かって話をしていた。良かった、私たちがキスした事に誰も気づいてないみたい。
「凌久くん、やり過ぎだよ……!」
「ふん。隙あらば芽衣を奪うとするヤツらがいんだぞ。これくらい見せつけてちょうどいいんだよ」
「いや、よくはないよね……?」
そんな事されると恥ずかしいし、私がもたないから、外では絶対にしないでね――と言った私。真剣な私とは反対に、どうやら話半分で聞いてる凌久くん。
「ねぇ、聞いてる?」
凌久くんの手を握って、ゆさゆさ揺らす。すると凌久くんは、おもむろに携帯を取りだして、
「明日と明後日は休みか」
と、こんな事を確認した。
「土日だね。明日は歌沢くんの動画を完成させるんでしょ?忙しくなりそうだね」
「ってことは、日曜は暇だな」
「え?まぁ、そうだね」
「……」
「?」
凌久くんが、私を見ている。どうやら「なにが言いたいか分かる?」という事らしいけど……残念ながら、分からない。
いつまでも答えが分からない私に、凌久くんは、お決まりのため息をついた。
「はぁ。これだから芽衣は。やっぱ鈍感だな」
「こ、これだからってなに!いきなり休日の事を言われても分からないよ。結局、何が言いたかったの?」
いつまでも寝転がっておくのもアレなので、ヨイショと体を起こす。そして、凌久くんが何を喋るのか待った。
すると――
「日曜デートしよって。そう言ってんの」
「へ?」
「付き合ってんだから、デートくらい行くだろ。ってか……俺が行きたい。芽衣は?違うのかよ?」
「っ!」
不機嫌な顔をしながら、たまに顔を赤らめて恥ずかしがる凌久くん。ツンとデレのコンボを炸裂する彼の技は、本当にズルい。
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